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蘇のカマンベールが出来上がるまで(前編)

私がよく読んでいるブログに「野食ハンマープライス」というサイトがあります。そこであるとき「蘇マンベールチーズを作ってみた」という記事を見つけました。

コロナ騒ぎで人々が時間と牛乳を持て余した結果、牛乳を煮詰めて作る蘇が流行ったわけですが、それにカマンベールで使われる白カビを生やして熟成させたものが、その記事で蘇マンベールと呼ばれるものです。

見ると作り方はこんな感じです。

1. 牛乳を煮詰めて蘇を作る(少量の塩も入れる)
2. 粗熱を取る
3. カマンベールの皮(白カビ部分)を付着させる
4. 湿度を保って放置する

なるほど、これなら簡単にできそう、と思って早速作り始めました。
まずは牛乳を煮詰めて蘇を作ります。

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これにカマンベールの白い部分を貼り付けます。

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後は湿気を保つための濡らしたキッチンペーパーと一緒にラップして常温(4月半ばなので20℃前後)に放置します。
しかし、待てども一向に白カビが増えてきません。
そうこうしているうちに……

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青カビが生えてきました。
青カビも白カビも(紛らわしいことに)アオカビ(Penicillium)属なので類縁関係は近いのですが、これは明らかにカマンベール由来の白カビではありません。
ここで、「これはおかしい」と思って調べてみました。
どうやら、日本でよく流通されているカマンベールは白カビを殺菌した状態で売られているようなのです。
そのような処理を施してあるチーズには包装後加熱済と書いてあるらしいので、それで見分けられるそうです。

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はい、殺菌されてますね。
これでは当然、白カビも増殖するわけもありません。
失敗、作り直すしかない。

……と思ったのですが、これはこれでこの先どうなるのか気になりました。
物は試しです。
ということで、もう少し様子を見ることにしました。
すると、

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こうなりました。
私はカビの分類に詳しいわけではないですが、最初に生えてきたアオカビをメインにしつつ他の種類のカビも生えてフサフサになりました。
うーむ、さすが天然物。しかし食欲を誘うものでもないな……。
などと思いつつも取りあえず切ってみました。

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おや?意外にも中は綺麗です。カビによって水分を取られたのか表面に近い部分は硬くなりながらも、中はしっとりと美味そうな状態を保っています。

人の性として、「ひょっとしてこれは美味いのでは?」と食べてしまいたくなる衝動に駆られるところです。
しかし、同じPenicillium属のカビでリスクは低いだろうとはいえ正体不明のカビを食べるのはどうか……という迷いもあります。

迷った結果、慎重派の私は賢明にも大量に食べるのは避けた方が良いだろうという判断をくだし、薄く切って少しだけ食べてみることにしました。

もぐもぐ…

うーん、食味は悪くない。むしろ美味いと言ってもいい。
元記事で「ナッツのような」と表現された味もある。
ただ、気分的な問題もあるのか、表面のカビはやや不快な臭いが感じられます。
ともあれ、味の方向性はだいたい分かりました。
結構好きな味です。
きちんとしたカマンベールを使って、作り直してみたいと思うには十分な味です。

ということで、次回の記事では殺菌されていないカマンベールを探し出して、きちんとした蘇のカマンベールを作ってみます。

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