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Day5: Beautiful Scones

圧倒的に足りないものたち。正直、全部が足りていないと思うのだけど、今回は最も足りていない「香り」に着目した。食事において、香りがいかに重要であるかを、私は軽視しすぎていたようだ。「美味しい!」は味だけではない。「美味しそう!」は目からの情報だけではない。

スコーンにおいてそれは、力強い粉の香りに、こんがり焼けたバターと乳製品のミルクネスの調和が取れている状態だと考えている。ミルクのまろやかな甘い感じを説明するのに、ネスをつけることでうまく説明することから逃げてしまった。

ゼロからスコーンを作り始めてこれまで、スーパーで手頃に入る原材料を使用していた。良い素材を使っても活かせるスキルがないことが自明で、原材料に申し訳なかったからだ。しかしながら、いい香りにはいい素材が必要であると考え直し、使用する食材について再選定することにした。

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まず、粉を小麦粉から全粒粉に変更した。Type630というのはタンパク質の量を表記する異国の方法で、これは中力粉くらいの数値である。なぜ全粒粉にしたかというと、表皮と胚芽の香りを試してみたかったからである。また、白米と玄米の場合では白米の方がもちもち、ねばねばしていることから、「麦も同じノリでもちもちを抑えられるのではないか」という若干の好奇心もある。私はもちもちスコーンでなく、ざくざくスコーンを作りたい。


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バターも思い切って、「発酵バター」に変えてみた。クリームを乳酸菌で発酵させているので、明らかに香りが異なる。発酵とは、なんて美しい化学反応だろうか。人間は、都合が悪いと腐敗と言って、細菌を悪者にしてしまう。目に見えない生命たちに、今日も感謝を。


製法はDay4を踏襲した。唯一の変更点は、寝かせる時間を6時間から1時間に変更したこと。理由は空腹が我慢できなかったため、という我ながら残念な「私的な理由」で。

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真っ直ぐ上に膨らませることができるようになってきた。今回寝かせる時間を短縮したら、生地がうまくまとまり、型抜きがしやすかった。

肝心の香りは、明らかに良くなった。特に、焼けた直後に発酵バターの香りが部屋中に充満した時は「ここは楽園か」と思った。あまりにいい香りすぎて食べるのをやめてもいいくらいだった。
発酵バターそのものの香りは少し酸味がかった香りで、乳酸菌を連想させるが、焼けたスコーンの香りはディスニーランドの香りだった。「焼き」という魔法がかかったのだろう。

食感は周りはさくさく、中はほろほろ。もう少し、外側は音が出るほどのざくざくを生みたい。改善案としては、今まで一回も変更していないオーブン温度の変更を考えてみる予定だ。加熱の加減は最も難しいと思っていて、それは「いつもと同じように行かない」からだ。


反省点は二つ。
一つに、表面に牛乳を塗り忘れた。スコーンの上面のてかてかはより美味しそうに見えるので、次回は忘れないようにしたい。
もう一点、ふるいに粉物を全部一気に入れたら、粉がぎゅっと押されてしまい、ふるいが機能しなくなった。何事も、適量に。めんどくささは出来を悪くする。丁寧な所作を心がけたい。

それにしても、いい香りは、心を豊かにする。
マスクばかりしていて、嗅覚の退化を実感した。

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