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隣人はロバとアルパカ


アメリカ留学中の、夏休みの話。

アメリカの大学の夏休みは長く、3ヶ月以上ある。
私が留学していた大学はその3ヶ月以上の期間、寮には滞在できず出ていかなければいけなかった。

アメリカで3ヶ月半のホームレス生活。困る。

シェアハウスで過ごしたり、アメリカを一人旅してみたり。それでも3ヶ月は持たない。

そこでたどり着いたのがファームステイ。

農園などに滞在して農業を手伝う代わりに、住む場所と食べるものを提供してもらえるシステム。お互いにお金の支払いは発生しない。

過ごす場所が欲しくて、お金にも余裕がない学生にはピッタリだった。

見つかった受け入れ先はカナダのど田舎。ニューブランズウィック州。

どこやねんと思いながらも、タダで住めるならどこでもええわと思い、12時間の乗り継ぎ待ちも耐え抜き渡航。

ザ 田舎の空港 っていう小さい空港に迎えにきてくれてた、パッと見ただけで優しいのが分かる老夫婦。

着いた時間も夜中に近くて申し訳ないなと思いながら、真っ暗な中、車に乗せてもらい滞在する農園へ向かう。

話してみてもやっぱり優しくて、車の中でも今まで接したことのないであろう日本人の私に色々と気遣いながら話しかけてくれる。

1時間ほど走って農園到着。
電灯もなにもないから、とにかく見えない。なんっにも見えない。

ここで寝てね、って案内された小屋、電気ない。

でも疲れすぎてるから寝よ、この人たちは優しいし大丈夫、細かいことは明日考えよう、って思って寝ることに。

別れ際に老夫婦が、

また明日様子見に来るね!って。

...え、ここの農園の人じゃないん?あなたたち誰?

聞いてみたらその老夫婦は、この農家やってる農夫の親だった。農夫は今家族でバケーション中で不在とのこと。そろそろ帰ってくると思うけどちょっと分からない、らしい。

明日から1人?!ってびっくりしてたら、

他にも人はいるから大丈夫よ!でも明日も来るね!とのこと。

意味がわからんすぎるけど、来てしまったし、もうどうしようもないし、電気のない誰もいない小屋で一旦寝た。

起床。

外に出てみる。

最初に見えた光景。


おはよう。はじめまして。

私はここからどないしたらいいですか。



主屋に入っていいのか悩む。

でも顔も洗いたいし、シャワーも浴びたい。トイレも行きたい。電気もほしい。勝手に入る。鍵はかかってない。

手作り感満載の主屋で勝手にやりたいことを終わらせる。
それでも誰も起きてこないし、そもそもどんな人がいるかも分からない。

この主屋はWi-Fiが通ってたから、とりあえず母親に電話して現状報告してみる。

話してる時に、窓から見えた光景、これ。


ロバだけじゃない。なんかいっぱいいる。

「今、なんか知らんけどアルパカが見えてる。」

母、爆笑。


しばらくして、やっと待望の、人が現れた。

推定185cm。男。細身。長髪ブロンド髪ぼっさぼさ顔の血色ゼロ。ダルダルの服。裸足。

見るからに癖。

でも今、私はこいつしか頼れない。

ということで名乗ってみる。癖男の名前はカイ。

ここにあるもの適当に食べて飲んで良いから、と言われる。
とりあえずカイと同じものを出してもらう。

シリアルと、砂糖を入れたチョコミントティー。

(このチョコミントティーにハマりすぎて私は太った。でもカイは太らなかった。腹立つ。)


かなり慣れてる感じやったからひとまず良かったと思ってたら、この男も私と同じようにファームステイしに来てる人だということが発覚。

見知らぬ人だけ残してバケーション行ってる、まだ見ぬ雇い主めちゃくちゃやなと思う。
金品盗まれて(あるんか知らんけど)、この木の主屋燃やされて逃げられても分からんやん。


と思ってたらもう1人、男登場。
175cmくらい、短髪。愛想良さげ。

仕事の長期休みを取ってこの田舎に遊びに来てる、雇い主の従兄弟らしい。名前はジェシー。

やっと人間が現れたと思っても、全員誰やねんすぎる。

私はここからしばらくこの2人と共に、ブチ切れたりドン引きしたり大笑いしたりながら、ど田舎で共同生活を送ることになる。

長くなりそうなので今回は序章ということで、ここまで。

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