東野圭吾「容疑者Xの献身」書籍紹介
ミステリ作家として知られる著者の作の中でも、有名な一冊であろう。映画化されたものを見たという人も多いのではなかろうか。
この書を「ミステリ」の分野に入れてしまうことにはやや抵抗がある。
犯人がその身をもって愛を捧げる姿の物語である。
タイトルの「献身」という単語は、実に正鵠を射ている。
同じアパートの隣室に住む一人の数学者と、母ひとり娘ひとりの母娘。
元夫の訪問から、彼らの平凡かつ幸せな日々は崩れ落ちていく。
残虐非道、巧妙無類の犯人は、何重にもわたって警察を、そして愛する人をも欺き、「つくられた」真実へと誘導していく。
だがその根底にあるのは、あまりに潔癖で、あまりに純粋な愛なのである。
「この身を賭して」という枕詞が相応しい。
「身を賭して愛する人の幸せを」
この「献身」が報われるのか否かは、最後数ページで明らかになる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?