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連続短編小説集[int i]

【6:告白したかったのに】

 約束の二十二時が来た。
 彼と会えることが楽しみでついにやけてしまう。
「春さん」
 声をかけたのはおおかみ君だ。
「来てくれてありがとう」
「いえいえ。わざわざ誘ってくれてありがとうございます。あまりこういう場所には誘われないので結構楽しみです」
 そして食事会が始まる。
 高級フレンチは喜ばれるかなと思い、意気揚々とその辺のおすすめの場所にしてしまったが、彼がその気ではなかったのかと少し不安になっていたのは内緒事項なのである。
 もくもくと食べる狼君の姿がウサギに見えて、少しかわいく思えた。
「そういえば春さん」
「ん?」
 狼君はいきなり何かを言うかと思うと、とんでもない発言をしてきた。
「春さんは俺のこと狙ってるんですか?」
「ブフッ」
 いきなりのことだったので、食べていたステーキ吹き出しかけた。
「あ、ごめんなさい……」
「いや、別にいいけどその情報はどこから……?」
「んー、誰かから聞いたとかではないですね。でも、今までのレインの態度からしてそうなのかな……と」
「な、なるほど……」
 さすが一匹狼。
 推理が得意な様子で。
「それで、俺のことは好きなんですか?」
「嫌いと言ったら?」
「……泣きます」
 うわ、今にも泣きそうなその表情は反則やって!
 うーん、でも隠したいけどその顔されるのは反則だしな……
「わかった、言うから!」
「本当? わーい」
 うわ、もう何もかもがかわいすぎる。
 がんばれ、私の理性……。
「とりあえず、私は狼君をすごくねらってるのは事実なのでそれは認めておく。何なら彼氏にしたいぐらい」
「……やっぱり。でも嬉しい」
 狼君は少し照れた感じで手を頬に添える。
 なんだかいつもの狼君と違って新鮮だ。
「……でも、医師だから、とか、患者だから、とか、そういった感情で拒絶されたらすごく悲しいとは感じるけど、狼君はそういう反応だもんね……」
「そうですね……」
 狼君はためらいながら返事をしていく。
 ものすごく悲しいといったところだろうか。
「でも——」
「ん?」
 狼君はものすごくためらってその言葉を口にした。
「俺は春さんと付き合えるのであれば付き合いたいです」
「そうなんだ……」
 狼君は時々ものすごい大胆になるから困る。
「でも」
 そのあとに発せられた言葉は、あまりにも残酷だった——

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