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特別展「本阿弥光悦の大宇宙」 と 特別展「中尊寺金色堂」

友だち夫婦と私たち夫婦でのランチと展覧会。
午前11時に上野ブラッスリーレカンでランチ、それから東京国立博物館で二つの展覧会を観るという贅沢な半日、大人の時間。
(2024年2月29日に訪問、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」は3月10日で会期終了しています)

東京国立博物館 表慶館とユリノキ


午前11時 ブラッスリーレカン  


毎回オープン時間に合わせて予約、ブラッスリーレカンの一番好きな席で楽しみたいので、いつも一番乗りだ。

夫、友人夫クンは初ブラッスリーレカン
私は今回で三度目 友人は何度も訪問
「ねっ?いいでしょ?」
「素晴らしい!贅沢だ」



ポスターに合わせたフラワーアレンジメント
ここの席が落ち着けて好きなのです


「印象派  モネからアメリカへ  ウスター美術館所蔵」とのコラボレーションメニュー


毎回読み物としても面白いメニュー(お土産にいいですね、これ)
あっウォーターグラス変わりました?
カトラリーとカトラリーレスト 大理石のテーブルにぴったり似合っています
こういうところがいいんだな、歴史のあるお店は



料理の組み立てとメニュー

料理のイメージとなる絵画が紹介されています
絵画からのインスピレーションが一皿になり
コースが組み立てられる過程は
とても興味深い


「いつもはお昼は飲まないんだけど今日は飲みます!いいでしょうか?」
と夫はここでしか飲めないビールをオーダー
なんて細かな泡!注ぎ方完璧

〜アミューズ〜
ウスターソースを練り込んだカヌレ

お食事の始まり 印象派の始まり
ウスターソースの香りと楽しんでいただけるように、
フランス伝統のお菓子カヌレでスタートを

おお、しっかりウスターソース味のカヌレ。
カヌレサレというのはアミューズにいいなとこれは真似させてもらおう。
(ミニカヌレ型買おうかなぁ)
外側がもっとカリッとした食感で、そこだけウスターソース風味ならもっとよかったかも?

〜前菜〜
ジャガイモと自家製ロースハムのサラダ仕立て

ノルマンディー地方のルーアンは
印象派の画家たちを惹きつけた
前菜はカミーユ・ピサロの
『ルーアンのラクロワ島』をテーマに
ノルマンディー郷土料理を
ブラッスリースタイルで

島を表現しているという自家製ロースハム、下にはリーフサラダ、ロースハムのこの薄さがニクイくらいに調和している。
添えてあるポテトピューレがしっとり、なめらかで酸味もあって、三位一体の前菜。

〜魚〜
真鯛ポアレ スープ仕立て 口内的な広がり

パリで生まれた印象派は、
国際的に広がっていきます
そこでお料理も多国籍の食文化を用いて表現

真鯛ポアレは欧州を表し、その下にはリゾット。
スープは和出汁、日本まで広がった印象派を表現。
「よろしかったら最後はリゾットをくずしてお出汁といっしょにお茶漬けのようにお召し上がりください」

ポワレは皮パリッ身はしっとり、プロの魚料理。
お茶漬けみたいにいただく。いいですね、さらさらといただいた。

〜肉〜
ウスターソースと塩麹でマリネしたローストビーフ

ジョゼフ・H・グリーンウッドの
『リンゴ園』のイメージで
ウスターを代表する風景画家による作品なので
今回は特別なウスターソースを使い
より関連性を高めました

「わぁ、この香草おいしい。パセリ臭さもなくお肉を引き立てているわ」
と友人。
どれどれ、セミドライのパセリを纏ったローストビーフは、どこまでもやわらか、適度なウスターソース風味。
リンゴの赤ワイン煮といっしょにいただくと更に深まる味わい。

〜デザート〜
クリーム・キャニオン

多くの人がグランドキャニオンを訪れるようになったという表現から
ブラッスリーレカンにも多くの人に集まっていただきたいという思いを込めて
仕立てたデザート
(料理写真下の説明はすべてブラッスリーレカンのレシピから引用)

サーブされた途端、みんなが歓声。
子ども心に戻るのですよ。
シュー生地は大きくてそれぞれのグランドキャニオンの形というところがいいのです。たっぷりと甘さ控えめのカスタードクリーム!
大きなシュークリームって大人も無邪気にさせる力があると思いませんか?

今回もシェフの方々が時間をかけて考案、組み立てられたレシピに敬意と感謝を表して「ごちそうさま、とっても美味しかったです」とお礼を言って、東京国立博物館へ向かう。

右手に本館を見ると長蛇の列、やはり予定通り先に平成館に行き、午後3時過ぎにゆっくりと特別展 中尊寺金色堂 を観ることにしよう。

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」


このパンフレット惹きつけられます
始めようか、天才観測。
家康が 瞠目どうもくした、美の異風者。
本阿弥光悦とは・・・

今回は音声ガイドを借りる
中谷美紀さんの声と語り方がとても自然で
すっと展示物に入り込める


うちでじっくり読んだパンフレット
デザインもセレクトした展示物写真にも字体にも
躍動感があって魅せられる


並ぶこともなくすんなり入場、会場入り口冒頭の区切られた空間に、なんの心構えも出来ていないところに、いきなりすごい存在感で本阿弥光悦作「舟橋蒔絵硯箱」が鎮座。
東博の所蔵品なので
国宝展でも展示されていたけれど、展示方法によってずい分と量感までもが違って見えるから面白い。
鑑賞する人々の垣をぬって、中腰になったりつま先立ちしたりして四方からじっくりと鑑賞。
他の展示物を観て、再度鑑賞。

現代でも斬新な造形力と感じるのだから、17世紀の江戸時代において、所有者はどれほど歓喜しただろうか。
太鼓橋ではない平らな舟橋をあえて宇宙の如く膨らませたフォルムと、鉄、銀の文字という素材の質感、見たことのない意匠の至宝の硯箱を幸運にも愛でることができた人々は、ひとりの天才を賞賛し、果敢に挑戦し続けるこの大芸術家と同時代を生きていることに感謝しただろう。

信仰心が篤く、「一生涯へつらい候事至て嫌ひの人」(へつらうことが大嫌い)と評された光悦。そうした姿は、「信仰生活をもって、日常生活そのものを浄化し、『娑婆即寂光土』の理念とすることを実践している」ことを意味するともいえる

図録『本阿弥光悦の宇宙』 
松嶋雅人「本阿弥光悦の実像──法華町衆ネットワークからのアプローチ」より引用


 独特のフォルムと素材の質感、文学世界と書が織りなすイメージの連環
 刀剣を見極める本阿弥家の審美眼によって選び抜かれた名刀たちの競演書 光悦の美意識が高く昇華した書の魅力を余すところなく体験
 光悦の厚い信仰心をうかがい知ることのできる品々を紹介
 個性的なフォルムをみせる名椀の数々でたどる、光悦の創造の軌跡

展覧会パンフレットより引用

数多くの傑出した作品を鑑賞しながら、戦乱の世にあって、最高権力者のごく近くにありながら抗争に巻き込まれることもなく、嫉みや妬みと無縁、厚い信仰で結集した法華町衆ほっけまちしゅうと呼ばれる工匠たちと作り上げた唯一無二の光悦の美なる世界の輪郭が少しわかってきたように思えた。
古からの大和美に通じ、それらに囲まれての超エリートとしての生育環境、当代最高峰の芸術家との近しい交流、それらが自然に結実した光悦の美意識にかなった品々と共に生きた遥か昔の天才が、四百年後を生きる私たちに語りかけることは何だろうと暫し考えるのもいいだろう。

「少し熱気を冷ましてから中尊寺金色堂展に行きましょう。まずはクールダウン」
と平成館1階で自販で各々飲み物を買って一時間近く雑談。

千葉県民同士、やはり気になったのは本阿弥光悦筆の中山法華経寺に掲げられた扁額三点。

「いやぁ、中山法華経寺には何度か行ったけれど光悦筆とは知らなかったな」
「そうなのよね」
(後日参拝して扁額を確認、コピーされた金ぴかの扁額が掲げてありました。展覧会後も本物は資料館などで厳重に保管されているのかしら?)

中山法華経寺山門 「正中山」扁額
3月9日 まだ展覧会の会期中でした


展覧会のすぐ後でこうして感想を語り合うというのは、特に感性の似たもの同士だから、頷き、時に新しい見方になるほどと思い、あっという間の一時間が過ぎ、本館へ向かった。

予想通り、入場待ちの列はなし。
すぐに入場。

特別展 中尊寺金色堂


本館2階特別5室での展示
壁の時計が歴史を刻む

本展は上棟の天治元年(1124)を建立年ととらえ、中尊寺金色堂の建立900年を記念して開催する特別展です。堂内中央に設置された須弥壇に安置される国宝の仏像11体が一堂にそろうほか、かつて金色堂を荘厳していた国宝・金銅迦陵頻伽文華鬘をはじめとするまばゆいばかりの工芸品の数々を紹介します。また、会場では、900年のあいだ祈りをささげられてきた黄金に輝く金色堂を8KCGの技術を用い原寸大で再現します。世界遺産にも登録される平泉の文化遺産の粋をご覧ください。

展覧会HPより引用

平成館の展覧会に慣れていると、かなりコンパクトな展示室。

入るとまず8KCG原寸大で再現された金色堂に迎えられた。
まさに金色に輝く極楽浄土が少しずつ迫ってきて、スクリーンの前に立つ私たちはまるで金色堂の内部に誘われるように堂内に仮想参拝することができる。
圧倒される。
あっ、この極楽浄土の既視感はなんだろう?
ガウディとサグラダ・ファミリア展での大聖堂の映像だ。

建立当時、人々はこの寺を遠くから眺め、そして参拝し、特に夕陽を背に後光が差したまばゆいばかりの金色堂を目にしたとき、そこに極楽浄土を重ね見て、救いがあったのだろうか。

工芸品や金字宝塔曼荼羅、金塊、特に紺紙金銀字一切経などの経典に藤原氏三代の栄華と平和への深い祈りを想う。

次に国宝の仏像11体を拝ませていただく。
ぐるりと後方から見、近づいては拝観し、離れて眺める。
展覧会だからこその拝観。ありがたや。

中でも釘付けになったのが持国天立像と増長天立像で、そのフォルムの美しさ、躍動感といったら!
振り上げられた筋肉隆々の腕もさることながら、そのきゅっとくびれた、あり得ない細さのウエスト、腰の捻り!やや誇張された姿は神将形像の典型的なプロポーションなのだそうだ。
こんな持国天、増長天、拝んだことないぞ!と推しになってしまった。

そして彼らに踏みつけられている邪鬼!
邪鬼も推しでしょ!
東大寺戒壇堂四天王像に踏みつけられた邪鬼の姿が思い浮かんだ。

どこに行っても結局わかりやすいものに惹かれる性格。

仏像の奥に展示されていたのが金箔押木棺で、こういった木棺まで展示するのかと驚いた。御神体となられた御遺体が収められていた木棺だ。
(なぜかエジプト考古学博物館を思い出した)

金色堂模型 縮尺5分の1
(昭和時代)
撮影OK

中尊寺には参拝したことがあるというのに、強い印象が残っていなくて、しっかり記憶にあるのは参拝後に訪れた一関の伝説のジャズ喫茶、 BASIEベイシーとオーナーの菅原さんとの会話ばかりだ。

今年中奥州市に行き参拝しよう。
私の奥州藤原氏への興味の入口は開かれたばかりだ。

特設ショップが賑わっている。
金色堂にちなんだグッズが金色の魔力で人々を引き寄せているのか、かなりの購入者。
どれどれと見て回る。

アクリルスタンド
後方は国宝仏像11体
前にあるのは増長天立像と持国天立像


邪鬼ぬいぐるみ
国宝の持国天立像に踏みつけられている邪鬼のぬいぐるみ


実物はこんな感じです
(画像お借りしました)
邪鬼はおそらく明治期の修理時に補作したものと見られているそうです

これ、サブレなら買うんだけど。邪鬼サブレ!

閉館時間まで常設展などを観て回る。

特に楽焼などの茶碗が気になり、観る。

黒楽茶碗 銘 尼寺
長次郎/安土桃山時代・16世紀


無地刷毛目はけめ茶碗 銘 村雲
朝鮮/朝鮮時代・16世紀


志野茶碗 銘 橋姫
美濃/安土桃山~江戸・16~17世紀


午後5時10分前


少し日が長くなった上野を談笑しながら駅へと向かう。

「ほんとに充実した日でした。会えて楽しかった。それではまたね」
とそれぞれ帰路につく。

次は新美かな?




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