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7インチ盤専門店雑記480「Baal」

デヴィッド・ボウイの1982年リリースの「バール」ですが、これはアルバムというより12インチ・シングルと言うべきなんでしょうね。5曲収録されていますが、トータルで11分程度です。せっかくなら45回転でカットしてくれればよかったろうに、33 1/3回転です。まあ、思い切り外周寄りの領域だけ使っておりまして、内周の無音部分が大きくなっておりますから、オーディオファイル向け高音質盤のようなカッティングです。

「バール」はベルトルト・ブレヒト作の戯曲でして、デヴィッド・ボウイのブレヒト好きは有名なんだそうです。ブレヒトは戦前ドイツの劇作家で、「三文オペラ」なんかが有名ですね。戦時中はナチスの迫害から逃れて各国を転々としていたということですが、終戦後は東ドイツに戻って1956年に58歳で亡くなるまで劇作の活動は続けていたということです。…イメージ的にもっと古い人かと思っておりました。

この盤はBBCがこの戯曲をドラマ化したときのサントラという位置づけで、そのドラマではデヴィッド・ボウイが主役バールに抜擢されているとか。観たことがないので何とも申し上げられませんが、お好きというだけあって、生き生きとやってらっしゃいますな…。

自分の場合、デヴィッド・ボウイのレコードで面白いものを見つければ、必ず買っておきました。そんなわけで、実はボウイのコレクションは相当の量と質を誇ります。ただ純粋なファンでないため、人物に関してはあまり詳しくありません。ウェブ上では「ブレヒト好き」「ブレヒト通」ということが書かれておりますが、他に何か関連作品があるんですかね?この人も恐ろしく多作な人ですから、どれだけ集めてもコンプリートなどとはとても言えないわけです。…映画関連も多いですからねぇ…。でもその辺は情報が整理されているでしょうけど、テレビがね…。BBCのアーカイヴにはまだまだ眠っていそうですしね。

この盤は何人かのボウイ・ファンにお見せしたことがありますが、あの方たちに言わせると、「よくぞ、ここまで」ということなので、それなりにレアなものなのでしょう。ま、それでも皆さん「私も持ってますけどね」ということでしたが、フツーではないみたいな言い方が印象に残っております。ここまであれば、一流のファンの証とでも言うのでしょうか。ボウイ・ファンにしてみれば、中身の面白さよりも、「ボウイ本人が好きだったものだから」という部分が大きいようですね。…うん、分からなくもない感覚ですな。

そもそも、アーティストの趣味嗜好まで考慮して作品を聴くといったスタンスがファンの基本姿勢という気もしますし、アーティストが喜ぶ聴き方かとも思います。関連書籍を読むとか…、でも、なかなかそこまで至らないというのが現実ではないでしょうか。私のように浅く広くという聴き方の人間には無理でしょうし。掘り甲斐があるアーティストだと思えば掘りますけどね。いっぱいいますよね…。

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