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さらまわしネタ帳121 - 7インチ的ポップ

アルバム単位で聴く、LPで聴くというスタイルが定着してからの7インチ・シングルは、自ずと役割が変わったように思います。70年代はまだ棲み分けもできていたかと思いますが、80年代に入ってからは、実はもう音を聴かせる本来の役割が終了していたのかもと思うほどに、7インチ・シングルの居場所がない感が見えてきていけません。

とりあえず、シングル・ヒットを狙ってシングル・カットするわけですから、収録曲の中でもポップなものが選ばれるのは必然でしょうか。イメージを誘導する他の役割を持ったものもないわけではないと思いますが、7インチ盤を集中的に扱っていると、見えてくるものもあるように思います。アルバムと同じデザインを持ってくる場合は、少し制約があるかもしれませんが、単に印象操作的な売り込むための役割があるのは当然です。

日本の女子向けに企画されたようなこのバンドのデビュー曲は、とりわけ7インチ的ポップの代表例と言えるのではないでしょうか。音を聴く前からなんとなく中身が分かってしまいそうな気もしますが、その割に「超ド級ヘヴィ・メタルの新星」などという文言が虚しくも感じます。

一方のこれ、クラッシュからミック・ジョーンズが脱退した後、最初のシングルですが、まあイメージを変えようという意図が見えるのではないでしょうか?パンクのアイコン的存在の割に、聴きやすい曲が多いクラッシュですが、パンキッシュな中にもポップな要素が散見されるこのバンドのイメージを具現化し、政治的なメッセージすらスタイリッシュに見せるデザイナーの技の粋を感じてしまうのは私だけでしょうか?

パンク/ニューウェーヴの7インチは、不況にあえいでいた英国の暗さがそうさせたか、もう少しダークな印象が主流と思われます。ツートーンを持ち出すまでもなく、カラフルでポップなものとは一線を画していたはずなんですけどね。85年というタイミングとバンドのイメージを変えようとしている努力までもが、見事に昇華しているように思います。聴く側がフリーズしてしまうような、ギターを叩きつける写真のイメージとは違い、先鋭性もポップに描いてしまうこのスリーヴは時代を象徴するポップアートの一つとして、永久保存しておいて欲しいものです。

ヘッダー写真のボブ・ディランですら、80年代は少しポップに売ろうとしたかのような色味が虚しかったりするのもご愛敬なんですけどね。

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