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7インチ盤専門店雑記479「三頭政治」

白人がやるブルース、トラディショナル・カントリーとブルースが根っこで繋がっているということを念頭において、何かしらいい例はないかと考えておりました。白人ブルースメンなんていっぱいいますし、ラーキン・ポーみたいな元カントリーのブルース・プレイヤーもいましたね。そして白人がヘタにブルースをやろうとすると、おかしなことになってしまう例もありましたねぇ…。

ヘッダー写真は、マイク・ブルームフィールドとジョン・ハモンドとドクター・ジョンの3人名義のアルバム「三頭政治 Triumvirate」です。私はロックやポップスの聴き方がギター中心であることは間違いないのですが、この盤に関してはドクター・ジョンのキーボードを聴くために買っております。正直なところ、他の2人がやるブルースにはあまり興味がありません。ドクター・ジョンもものを選びますけどね。「Gumbo」とかはまあまあといったところなので「ヘンなのが好きですね」とは言われますけどね。聴いているところが一般的なドクター・ジョン好きの方とは違うらしいです…。

この盤に関しては、ドクター・ジョンの色が濃く出ている部分ほど面白いと感じてしまいます。如何せんジョン・ハモンドのヴォーカルは線が細く、他の個性的な二人、特にドクター・ジョンなどとぶつけても「弱いに決まっているでしょ」と言いたくなります。人選ミスとしか思えません。それにしても、こうやってブルースの有名曲を並べてもドクター・ジョンの色が濃いと感じるわけですから、さすがですね。

興味深いのは、中村とうよう氏がライナーを書いていることで、カエサル、ポンペイウス、クラッススやオクタヴィアヌス、アントニウス、レピドゥスの三頭政治を引き合いに出して、上手く行くわけないと断じております。ドクター・ジョンという怪物に牛耳られてしまったジョン・ハモンドの不満などと書いておりますが、氏にしては意外なほど醒めた客観的な評を載せております。やはりお気に召さなかったのでしょうか。

1973年という時代から考えると、その後のドクター・ジョンの怪物ぶりはまだ知られていないわけで、「やや正体不明の呪術使い」という表現は致し方無いのでしょうが、まあマイク・ブルームフィールドやジョン・ハモンドでさえ引き立て役にしかならない、猛烈な個性を味わうというのがこの盤の正しい愉しみ方でしょう。

それにしても、この盤のプロデューサーはトーマス・ジェファーソン・ケイなんですけど、異質な3人のまとめ役でしかないようです。

ニュー・オリンズあたりに、血の濃い連中が世界中から集まってきて、根っこがこんがらがってしまう音楽は、どれもこれもこの上ない魅力があったりします。ブルースに拘る意味がわからなくなってしまうほどに、ルーツ・ミュージックの探究は楽しい作業です。

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