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田中和将と光村龍哉 @Billboard Live Tokyo

えらいもんを観た。稀代のギターボーカル2人。お互いの歌を歌い合って、お互いの曲を弾き合って、つくづく嬉しい、って顔で笑い合う。なんて贅沢で幸せなライブだろう。ちょっとこれはしばらく、何ものにも更新されないな。素晴らしかった。

photo : Permanents(田中和将・高野勲 from GRAPEVINE)

set list @ 1st stage

01.smalltown,superhero 02.それを魔法と呼ぶのなら 03.無心の歌
04.Wake up little Susie 05.シスター 06.夢1号
 07.Broken Youth 08.バイシクル 09.Everyman,everywhere 
10.Colors  11.雨のブルース en.I found the girl

田中さん。わたし20年来、あなたのことだけを愛してきたけど、ちょっと今日は。ちょっと今日は、今日の主役は、みっくんだった。みっくんってロックンロールの妖精だ。陶器みたいな肌、華奢な鎖骨、ギタリストらしい血管の浮いた腕、どこからこんな声が、と思わせる強い、強くてのびやかな声。そんなみっくんを微笑みながら見守る田中さん。あなたは今日、ロックンロールの好々爺だった!!!!いや、「爺」は言い過ぎだよね・・ロックおじさん?う~んソウルおじさん?なんだろう、まあいいや、田中さん、半分くらいパパの目だったよ。みっくんが好きで好きで好きで仕方ないんだね。そりゃそう。みっくんはロックンロールの妖精だもの。

シスター

度肝を抜かれたのはシスター。バインファンのみなさんわかるよね。あのシスターです。あのBPMの速い、あのシスターが今日、生まれ変わってた。

パーマネンツのときって、演奏がシンプルだから、曲の骨格が露わになるんだよね。それで思った。シスターってこんなにブルージーでジャジーでソウルフルな曲だったのか!!知らなかったよ!!!こんなメロディとこんな骨格を持つ曲だなんて、今日また、この曲を発見したよ。なんてことだ。

そしてそれを、みっくんが歌うのだ。みっくんって、ほんと、ソウルシンガーだ。節回し。声量。彼の背後に彼のルーツが見える。先人たちからのGiftを背中にいっぱいぶら下げて、彼は歌う。日本人の、若干32歳の、男の子とはとても思えない。この人、こんなに歌が巧いのか。幕張でNICO観たときも、みんな上手いなと思ったけど、こんなに、シンプルなセットでやっても巧さが際立つなんて、これは、本当に、NICOは実力者集団だ。そしてみっくんは、明らかにGiftedだ。田中さんが毎回「天に二物を与えられた男」と紹介するが、I completely agree.みっくんは・・なんてすごいミュージシャンなんだ。彼の声が、彼のメロディが、Billboardの高い天井に響き渡る。震える。

わたし、GRAPEVINEの曲を田中さん以上に歌える人、人生で初めて見た。これまで若いバンドとの対バンのたびに、彼らもGRAPEVINEの曲を歌ってきた。でもわたしたちバインファンにとっては「当たり前に田中さんがone and only」だった。

今日は違った。みっくんは完全に自分のものにしていた。完全に新しい曲として、あの3人の演奏とみっくんの歌で、新たにわたしたちは『シスター』を発見した。凄かった。ちょっとほんとに絶句した。

夢1号 / Broken Youth

今度は田中さんが歌う番。おそらくみっくんのリクエスト。大好きな田中さんにこの僕らの曲を歌って欲しい、そんなみっくんの願いが伝わってくる。夢1号もBroken YouthもNICOのドラマティックな名曲だ。それを、田中さんが歌い上げる。

パーマでは邦楽のカバーはやらない、と昔、田中さんは言っていたけど、例外が2人だけいて。阿部芙蓉美と、みっくんだ。彼らの曲だけは、田中さんは、歌うのだ。

特にBroken Youth。あのエモーショナルでソリッドな曲が田中さんに似合わないわけない。ある意味、サウンドが削ぎ落されているから、剥き出しの彼のボーカル。そう、彼もみっくんに負けず劣らず、日本の、稀代のソウルシンガーなんだ。彼の喉が、開く。夜の六本木に向けて、歌が放たれる。

歌い終わった田中さんを見つめるみっくんと「感無量」って笑う田中さん。なんなんだよ。仲良しかよ。仲良しだよな。

バイシクル / Everyman,everywhere

ここで突然のみっくんソロ。「せっかくゲストで来てくれたんで、一人で一曲お願いしました」と田中さん。え、ゲストってそういうもんだったっけ(笑)と思いながらも、一人取り残されたみっくんを見守るわたしたち。

バイシクルだよ?あのバイシクル。田中さんはかつてみっくんとの対談で言いました。「俺、歌詞に自転車って使えへんねんなあ。青春っぽくて照れくさい」そのバイシクルですよ。

でも今日のバイシクルは青春ソングなんて揶揄させない、エモーショナルで力強い、歌だった。わたしは目を見開いた。このひと。このひと。二物どころか三物も四物も与えられた男だよ。なんて、なんてうまいんだ。なんてなんていい歌声なんだ。

そこから、戻ってきた田中さん・勲さんと一緒に、バインきっての名曲、エブエブを。この曲もシスター同様、わたし、田中さん以外の人がこの曲を歌うのを聴いて泣いたの、初めてだ。みっくんありがとう。この曲がこんなにも素晴らしい曲であることを、もう一度思い出させてくれた。なんて、なんて素晴らしい楽曲なんだ。

あの3人でいると、何もかもが新鮮だ。どの曲も再び生まれたかのような輝き。それでいて、何年も熟成されてきたかのように味わい深く力強い。田中さんの言葉通り「一夜限りなんてもったいない」。

Colors

からの、これまたド名曲『Colors』をみっくんの歌で。1st stage,2nd stageともにファンが小さく悲鳴を上げるほど、聴き手の思い入れの強いこのレア曲を、みっくんはまたしても、自らのものにしていた。

ちょうどこの曲を出したころの田中さんの歳に、みっくんはもう追いついているんじゃないか。曲を生みだした先人たる田中和将と、その曲を生まれ変わらせる光村龍哉。ちょうど一回り弱の歳の差の二人が、ひとつの名曲のまわりを衛星のように回って追いかけっこしているようだ。美しい。なんて美しいんだろう。

雨のブルース

これはNICO原曲知らずに聴いたけど、いい曲だ。みっくんのルーツを感じさせるブルージーで、かつピュアなメロディ。田中さんの表情豊かなボーカルが、GRAPEVINEにはないそんなピュアな若い憂鬱に、少しだけ、大人の疲れを滲ませて、より沁みる曲に仕上げる。これ、普通にライブで聴きたいくらいだ。いい曲だ。

I found the girl

アンコールはこの曲。出てくるなり「今日、何の日か知ってる?」と田中さん。冒頭でも問われたその質問に、みっくんは「ひなまつり。ガールズデーですよ」と笑って答える。「思えばガールの曲ばっかやってきましたね」と言い出すみっくんに「えースージーやろ。ほんでシスター。・・って2曲やんか」と困ったように笑う田中さん。

そんなくだりからの、ひっさびさの『I found the girl』に、歓声。いや、そんなとこで女の子扱いされてもwwwと失笑しながらも、まあ笑顔あふれるアンコールですこと。終始、2人が楽しそうで、本当にいい共演だった。


2nd Stageの最後に、「これ一夜限りはもったいないねえ」「そうですね」「ツアー行きたいねえ」「はいぜひぜひ」のやりとり。忙しいみっくんと忙しい勲さんのスケジュール調整が大変そうだけど、ファンは、忍耐強く待ちますよ。いつかまた、今日の3人が観られますように。

素晴らしい夜を本当にありがとう!!!


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