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我が家に魚が棲みついた
魚はいつのまにかボクよりもヌシのように
なんだかんだと口をだす
いつのまにかボクは
魚のほうがエラく
根拠とかないが上にいるように思え
そう思うと余計に魚は偉そうに見える

ある日曜日ボクはコンビニで寿司を買ってきた
物価高で高いものは買えない
安物の寿司にはマグロの赤身とか何魚だかわからない光り物の魚とか入っていた
ボクは当然だがパクパク食べた ハラも減っていたし
なんの遠慮もなく
魚はしかし魚を食するボクにぎょっとしたのだ
どうしました?と問いかけても
偉そうないつもの素振りもみせず
ひたすら下をむいていた


しまった!
考えてみればあたりまえではないか
魚にとっては 眼の前で捌かれた同志や娘や妻がいるようなものだ
眼の前で捌かれた同志や娘や妻を
ボクが無神経にパクパクと口をあけ食っちまったのだ
もしボクの同志や妻や娘が捌かれて寿司にされ
それを美味そうに食べてる男が眼の前にいたら
その瞬間 ボクはヒトでいられるか
耐え難いその瞬間を
それが宿命だと割り切れるか

魚は下を向いたままだ
ボクはどうすればいいのか
自分の子どもを無残に殺された父親の
たった一人の子どもを奪われた母親の憎しみを
顔をあげた時 その眼に宿った憎しみを
なだめることは可能なのか


答えは未だ無い

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