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その男には名前がない 

オーバーステイ。不法残留容疑。インドネシア人。現金46万。夜行バス。
コンビニ。強制送還の手続き。名古屋出入国管理局。
「逃げた男は身長175センチくらい、黒色のTシャツを着ていて、警視庁が周辺に緊急配備を敷いて、男の行方を追っています」 

その男には名前がない

「28日正午過ぎ、東京都新宿区四谷4丁目のインドネシア大使館で、名古屋出入国在留管理局職員から「オーバーステイのインドネシア人が逃走し」

片足を突っ込みながら
もう片方の足を蹴り上げようとする
「俺は誰でもない 俺は俺だ」
「おまえはなにも悪くない」という囁き
「ずっと歩き続けた それだけは真実だ」
錆びついた世の中 声にならない声 

発表によると、28日に逃走した男性の行方を追っていたところ、30日午後3時20分頃、同局職員が名古屋市のコンビニ店で発見し、身柄を確保した。男性は「出頭するつもりだった」と説明しているという。

出入国管理庁は「社会に不安を与えたことを重く受け止める。おわびし、再発防止に努める」とコメント。逃走理由などを調べている。 

その男には名前がない
その男は強制送還から逃れるために逃亡し 
長距離バスに乗り
コンビニで買い物して
2日目で身柄を拘束された
この犯罪的出来事は
新聞の一段記事になり
再発防止のお詫びのコメントが発表され
こんな重大な事件に対して
「わが国の法規を守るつもりがない不法滞在者には厳しく対応していただきたい。治安悪化を招いた欧米の失敗を繰り返すな。」というネット世論が起き

その男には名前がない
人格もない
国際人権法もない
犯罪者と呼ばれ
手錠と腰縄が与えられ
法と国家の建前の下
名前がないまま 消されていく

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