不倫裁判百選99番外編ー不倫慰謝料を否定する見解の理由について考える
不倫の慰謝料を交際相手に請求する見解は、強い批判にさらされています。
この見解の論者は、不貞行為が有責性の典型であることから,常にと言って差し支えないくらい有責行為としての不貞が持ち出される。本来離婚訴訟では,有責行為に焦点を合わせた醜い争いに勢力を費やすことにピリオドを打って,今後における両当事者の生活をいかに確保するかに積極的であるべきではないか。とも論じています。
私は、この見解の論拠をもって不倫の慰謝料請求を配偶者の不倫相手に請求すること否定することはできないと思っています。
理由は、逆にこれは,配偶者自身の責任を希釈化,薄めてしまうことを意味するのではないかと考えているからです。
上記が主な理由です。
別の、見解は、以下のように述べています。
私は、この見解も疑問です。それは、配偶者が止める意思を持つことができなかった=婚姻が破綻しているとは評価することはできないはずだからです。
また、この見解の論者は、「不貞の慰謝料を認め続けることは,一見すると婚姻や配偶者を保護するようであるが,実際には,本件のように『争いの醜い拡大に裁判所が手を貸す』ことであり,理念的には,婚姻における夫と妻との自由な意思による対等な結びつきを否定することになると思われる」とも述べています。
たしかに、たしかに、第三者に慰謝料請求をしたのちの夫婦関係の冷え切りは、想像に難くないはずです。場合によっては、不倫当事者間が密に連絡を取り合うようになってしまい、夫婦関係が形骸化、破綻が進んだなんて事態は容易に想定されるでしょう。
しかし、私は、それでも、この見解が言うところの『争いの醜い拡大に裁判所が手を貸す』というのは強く反論をしていきたいと考えている。不倫の被害者が醜い争いを作出したのではないからです。
えてして多くの場合,『醜い争い』といわれるような反論・主張は不倫加害者側からされるものです。そうすると,請求者の請求を制限して,醜い争いを裁判所でさせるべきではない,というロジックは,慰謝料請求を制限させるロジックとして不十分ではないかと思う。
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