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130)マカダミアナッツ・オイルはアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術130

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。


【ナッツの摂取は善玉菌を増やし、全死因死亡率を低下する】

ナッツ(nuts)というのは食用の木の実のことです。種子は発芽して幼根や子葉となるため、脂肪・タンパク質・各種のミネラル・ビタミンなどの栄養成分が豊富に含まれています。食物繊維やポリフェノールも豊富に含まれます。
 
種実類の多くは脂肪含量が可食部分の50~80%程度と多いのが特徴です。ナッツ類の脂肪は不飽和脂肪酸が多いのが特徴です。

ナッツには、腸内細菌叢の組成と全体的な腸の健康に良い影響を与える可能性のある食物繊維、不飽和脂肪酸、およびポリフェノールが豊富に含まれています。そのため、腸内細菌叢に対するナッツ摂取の影響を検討する臨床試験も多数報告されています。
 
これらの臨床試験の結果によると、ナッツの消費は、Clostridium、Lachnospira、Roseburia属の相対的存在量を増加させました。これらは全て酪酸生産菌として知られています。酪酸産生菌の増加は、ナッツがプレバイオティクス効果を有することを示唆しています。(Nutrients. 2020 Aug; 12(8): 2347.)


ナッツの中でもクルミとピスタチオの健康作用が多く報告されています。クルミはナッツの中で最もオメガ3不飽和脂肪酸のαリノレン酸が豊富です。動脈硬化や心臓疾患を予防する効果が臨床試験で明らかになっており、がんの予防や治療においても有用な効果を示すことが報告されています。
 
クルミと同様に、ピスタチオの定期的な摂取が健康を改善するという証拠は多数報告されています。LDL コレステロールを低下させ、冠状動脈性心疾患のリスクを低下させる効果が報告されています。ピスタチオは血管内皮細胞の機能を良くして血圧を低下する効果が報告されています。


高脂肪食を与えられたマウスの実験で、ピスタチオの消費は炎症を緩和し、腸内微生物叢の組成を改善する効果が報告されています。

高脂肪食は体内の慢性炎症と腸内細菌叢異常症を誘発します。この研究では、ピスタチオの継続的な摂取が、高脂肪食を与えられたマウスの肥満に関連する炎症と腸内細菌叢異常を防ぐことを明らかにしています。ピスタチオを加えた食事は、腸内細菌叢において乳酸菌やビフィズス菌や酪酸産生菌のような善玉菌の存在量を大幅に増加させ、炎症に関連する細菌(悪玉菌)を大幅に減少させました。ピスタチオを摂取したマウスでは大腸粘膜のバリア機能の改善が示唆されました。(Int J Mol Sci. 2020 Jan 6;21(1):365.)
 
ナッツの摂取量とがんの発生率およびがん死亡率との関係を調べた疫学研究のメタ解析の結果、ナッツの総摂取量が 1 日当たり 5 g 増加すると、全体がん、膵臓がん、結腸がんの発生リスクがそれぞれ 3%、6%、25% 低下しました。さらに、ナッツの総摂取量が 1 日当たり 5 g 増加すると、がんによる死亡リスクが 4% 低下しました。結論として、ナッツの摂取量が多いほど、がんの発症リスクとその死亡率が低下することが明らかになりました。(Adv Nutr. 2021 May; 12(3): 793–808.)

ナッツの消費量が多いと、がんだけでなく、心血管疾患死亡や全死因死亡を減らすことが多数の研究で明らかになっています。ナッツの消費と心血管疾患、全がん、全原因および原因別死亡のリスクについて、20 件の研究のメタ分析を実施した報告があります。その結果、ナッツの摂取量が多いほど、心血管疾患、がんの総死亡率、全死因死亡率、呼吸器疾患、糖尿病、感染症による死亡率の低下に関連していることが明らかになりました。(BMC Med. 2016 Dec 5;14(1):207.)



【マカダミアナッツオイルは一価不飽和脂肪酸の含有量が多い】

クルミやピスタチオの他に、最近研究が増えているナッツにマカダミアナッツがあります。マカダミアナッツは、アオイ科の常緑高木であるマカダミアの実で、オーストラリア原産であることで知られています。この種子は大きく、硬い殻に覆われています。

マカダミアナッツは、そのまま生で食べることができます。シンプルな食べ方であり、ナッツ本来の味わいを楽しむことができます。

より香ばしさと食感を楽しみたい場合は、マカデミアナッツをローストして食べることができます。オーブンで150°Cに予熱し、ナッツをクッキングシートの上に広げ、約10〜15分間焼くと、香ばしさが増しますが、焦げないように注意が必要です。



マカダミアナッツは非常に栄養価が高く、特に高レベルの健康的な一価不飽和脂肪酸を多く含んでいます。これらの脂肪は心臓病のリスクを低減するとされています。

また、マカダミアナッツには食物繊維、プロテイン、ビタミンB1、マグネシウムなども含まれています。
ナッツ類の中で、マカダミアナッツは脂質の総量が最も多く、一価不飽和脂肪酸の含量が多いのが特徴です。(下の表と図)


表:マカダミアナッツはナッツ類の中で脂肪総量と一価不飽和脂肪酸の含有量が最も多い。


図:マカダデミアナッツのオイルは植物油の中で一価不飽和脂肪酸が最も多い。
 
 
 
 
マカダミアナッツはその高い栄養価により、以下のような多くの健康効果を提供します。
 
1)心臓病予防:マカダミアナッツは一価不飽和脂肪酸が豊富で、これは心臓病予防に役立つとされています。これらの脂肪酸は、悪玉コレステロール(LDL)を減らし、善玉コレステロール(HDL)を増加させる可能性があります。その結果、動脈硬化を減らします。
 
2)抗酸化作用:マカダミアナッツはビタミンEと他の抗酸化物質を多く含みます。これらは体内の活性酸素を中和し、細胞の損傷を防ぎ、老化プロセスを遅らせる助けとなります。動物実験では、マカダミアに特に豊富に含まれる一価不飽和脂肪酸が脳の酸化損傷から保護するのに役立つ可能性があることも示唆されています。

3)食物繊維:マカダミアナッツは食物繊維が豊富で、これが消化系の健康に良い影響を与えます。食物繊維は便通を正常に保つだけでなく、血糖値を管理し、満腹感を増すことで、体重管理に役立ちます。食物繊維は有益な腸内細菌の増殖をサポートするプレバイオティクスとなり、短鎖脂肪酸の産生を増やします。短鎖脂肪酸は腸の健康を促進するだけでなく、糖尿病や肥満のリスク軽減など、健康に幅広い影響を及ぼします。
 
4)骨と歯の健康:マカダミアナッツはカルシウムとリンが豊富で、これらは骨と歯の健康に必要です。

5)エネルギー供給:マカダミアナッツはエネルギー源となる良い脂肪とプロテインを含んでいます。マカダミアナッツは脂肪とカロリーが高いにもかかわらず、実際には体重のコントロールに役立つ可能性が報告されています。



【マカダミアナッツオイルはオメガ7の一価不飽和脂肪酸のパルミトレイン酸の含有量が多い】

前述のようにマカダミアンナッツは総脂肪と一価不飽和脂肪酸の両方を最も多く含んでいます。エネルギーの 75 % は脂肪からであり、そのほとんど(82 %)は 一価不飽和脂肪酸です。多価不飽和脂肪はほとんど含まれておらず、飽和脂肪は 12 ~ 18 % 含まれています。

一価不飽和脂肪酸の組成は、17 ~ 19 % がパルミトレイン酸であり、残りのほとんどがオレイン酸であることが特徴です。オレイン酸はオリーブオイルやアボカドに多く含まれるオメガ9一価不飽和脂肪酸です。

パルミトレイン酸は肝臓と脂肪組織で内因的に生成されます。一般に肝臓でより高濃度で見られます。これは、 酵素デルタ-9 デサチュラーゼの作用によりパルミチン酸から生合成されます。
 
食品でパルミトレイン酸が多く含まれるのはマカダミアナッツ以外ではシーバックソーンオイル(Sea buckthorn oil)くらいです。シーバックソーン(Hippophae rhamnoides)という植物の果実や種から抽出されるオイルです。この植物は、ヒマラヤやヨーロッパ、中国の一部など、世界のさまざまな地域で自然に生育しています。その果肉の油にはパルミトレイン酸が 32 ~ 42% 含まれています。
 
パルミトレイン酸(Palmitoleic Acid)は、一価不飽和脂肪酸の一つで、16個の炭素原子を持つ脂肪酸で、一箇所に二重結合が存在します。パルミトレイン酸はオメガ-7脂肪酸とも呼ばれ、抗炎症作用やインスリン感受性の改善など、健康に対するいくつかの利点が研究されています。


図:不飽和脂肪酸のうち、炭素鎖のメチル末端(CH3)から数えて3番目の炭素に最初の2重結合がある脂肪酸をオメガ3(omega 3)、メチル末端から数えて6番目の炭素に最初の2重結合がある脂肪酸をオメガ6(omega 6)、7番目の炭素に最初の2重結合がある脂肪酸をオメガ7(omega 7)という。パルミトレイン酸はオメガ7の一価不飽和脂肪酸になる。
 
 

パルミトレイン酸が健康に与える可能性のある影響についての研究はまだ初期段階にありますが、以下のような効果があると報告されています。
 
1) 抗炎症作用:パルミトレイン酸が抗炎症作用を示し、体内の炎症反応を減らす可能性が示唆されています。炎症が慢性疾患の発症に対するリスクを高めるため、健康維持に重要です。

2) 心血管疾患のリスクを減らす: 不飽和脂肪酸は一般的に、心血管疾患のリスクを減らすとされています。パルミトレイン酸はこのカテゴリーに含まれ、健康なコレステロールレベルを維持し、動脈硬化のリスクを減らす可能性があります。

3) インスリン感受性の改善:パルミトレイン酸がインスリン感受性を改善し、2型糖尿病のリスクを減らす可能性が示されています。



【マカダミアナッツオイルは腸内細菌のアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす】

Akkermansia muciniphila(アッカーマンシア・ムシニフィラ)はグラム陰性の偏性嫌気性細菌です。2004 年にオランダのワーヘニンゲン(Wageningen )大学でヒトの糞便中の新しいムチン分解微生物を探していたときに発見されました。属名のAkkermansiaは、オランダの著名な微生物学者Antoon Akkermansに由来します。

腸管細胞から分泌されるムチン(糖タンパク質)を唯一の炭素・窒素源として利用するユニークな特徴を持ちます。muciniphila は「ムチンを好む(mucin-loving)」という意味です。 その名前が示すように、結腸壁の粘液を食べて、粘液の絶え間ない再生を刺激することによって大腸の粘液バリアを維持します。


ムチンの分解自体は病原体のような挙動ですが、ムチンを分解することによってムチンの合成を刺激し、腸粘膜の粘液を増やす作用があります。 さらに、この細菌は、ムチンを有益な副産物に変換することにより、宿主の腸内微生物バランスを維持している可能性が報告されています。

腸の粘膜層は、主に上皮細胞を微生物の攻撃から保護し、それを栄養素として使用する微生物に成長エネルギーを提供します。腸内のアッカーマンシア・ムシニフィラの量が少ないと、粘膜が薄くなり、腸のバリア機能が弱まり、毒素が宿主に侵入しやすくなります。つまり、宿主の免疫調節に関与するだけでなく、腸上皮細胞の完全性と粘液層の厚さを高め、それによって腸の健康を促進します。

パルミトレイン酸がアッカーマンシア・ムシニフィラを増やす効果が報告されています。以下のような報告があります。

Dietary palmitoleic acid reprograms gut microbiota and improves biological therapy against colitis(食事によるパルミトレイン酸は腸内微生物叢を再プログラムし、大腸炎に対する生物学的療法を改善する)Gut Microbes. 2023 Jan-Dec;15(1):2211501.

この報告では、食事からのパルミトレイン酸の摂取の増加は、急性および慢性炎症性腸疾患マウスモデルの両方において腸粘膜バリアを修復し、炎症性細胞浸潤と 炎症性サイトカイン(TNF-α とIL-6 )の発現を減少させました。
クローン病患者由来の炎症を起こした培養結腸組織におけるパルミトレイン酸による生体外治療は、炎症促進性シグナル伝達/サイトカインを減少させ、組織修復を促進しました。

メカニズム的には、パルミトレイン酸は腸内細菌のアッカーマンシア・ムシニフィラの細胞分裂を刺激し、腸内細菌叢におけるアッカーマンシア ムシニフィラの存在量を選択的に増加させました。

アッカーマンシア・ムシニフィラとパルミトレイン酸を同時投与すると、マウスの大腸炎に対する有意な相乗的保護を示しました。
  
つまり、パルミトレイン酸はアッカーマンシア・ムシニフィラを増やして、炎症性腸疾患を改善する効果があるという報告です。
 
パルミトレイン酸を多く含むマカダミアナッツを多く摂取すると、アッカーマンシア・ムシニフィラを増やす効果が期待できます。
 
注意:
幼児、一部の高齢者、および嚥下に問題のある人は、窒息の危険があるため、丸ごとのナッツを避けるべきです。
マカダミアナッツは犬にとって有毒であるため、ペットがマカダミアナッツを食べないよう注意する必要があります。マカダミアナッツは犬に神経系の問題を引き起こす可能性があります。
チョコレートやアボカドも犬には有毒です。犬を飼っている場合は、マカダミアナッツやチョコレートやアボカドはペットの手の届かないところに保管する必要があります。

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