見出し画像

われら女性(Siamo Donne)

 有名女優4名 アンナ・マニャーニ、イングリッド・バーグマン、アリダ・ヴァリ、イザ・ミランダがすべて本人役で、本人の身に実際にあった出来事らしいことを物語るというオムニバス映画。もうすでにロッセリーニとは縁が切れていたアンナ・マニャーニはヴィスコンティとのタッグ、ロッセリーニは奥さんのイングリッド・バーグマンとタッグを組んでの作品となっている。
 話は総じて、「女優も結局は一人の女性である」というテーマが根底に流れていて、それを観客に再確認させるかのごとく、導入のエピソードはこの「Siamo Donne」という作品の共演新人女優を選ぶオーディションの様子からドラマははじまっていく。その後のそれぞれの女優にまつわるエピソードは以下。

EPISODIO 1 :

 アリダ・ヴァリは女優というお飾り的な面に辟易としていて、一人の女性として見られたい、もっと自分を内面から見る人と過ごしたいという思いから、自分のマッサージ師の婚約パーティーで彼女の夫を誘惑しようとしてしまう。
 アリダ・ヴァリはきれいなのだけれども、純白さがなく少し場末感があって、賢そうでもないし、こういう役柄はぴったりで、本当に本人のドキュメンタリーなのではないかと思わせるほど。監督と脚本家の妙である。

EPISODIO 2 :

 イングリッド・バーグマンがその家族と住むイタリアの自宅で起こった小さな小さなエピソード。大事に育てているバラの花たちが最近むしられているので観察していると、どうやらお隣さんの鶏の仕業らしい。お隣さんは感じが悪く取り合ってくれないし、鶏を懲らしめてやろうとイングリッド・バーグマンが画策する。
 こんな取るに足らない小噺でさえも映画にしてしまうロッセリーニの着眼点、腕力よ。お高いところに止まっているように見えてしまうイングリッド・バーグマンを、彼女も平民であることを知らしめ、観客をほっとさせるようなエピソードである。また外国暮らしで下手なイタリア語を駆使しながらも、地に足ついて強く生きているバーグマンの当時の様子も垣間見ることができる。何よりも、バーグマンがカメラ目線で語り掛ける数分間は、二人の幸せな時間を感じ取るのに十分だった。観客を意識しながらも、結局はもしかしたらただ2人の間で盛り上がっている内輪話なんじゃないかって思わせる、この画策する夫婦を想像するとお茶目で可愛い。

画像1


EPISODIO3 

 イザ・ミランダは大女優になるために、女としての様々なことを犠牲としている。それは妻となること、そして何よりも母となるということ。ある日戦時中の残骸の地雷を踏んでしまった子供が負傷したのを偶然目撃し、病院に付き添い送り届ける。その子供は貧困家庭に住む子供で、母親も仕事から帰ってこず、仕方なく彼女が家でずっと看病をしてあげることになる。そこで子供がいる家庭へのなつかしさと、今まで味わったことのなかった自分の母性本能を感じ、もうこのままこのボロアパートに住んでしまいたい気持ちに彼女は駆られてしまう。
 考えてみれば女優という、女性の象徴的な存在で居続けなければならない職業であるにも関わらず、女性として生きることを犠牲にしているのはなんとも皮肉である。イザ・ミランダという女優は失礼ながら私自身は存じ上げなかったのだが、4つのエピソードの中でストーリーとして一番見応えがあるもののように思う。私はもちろんこのような人生を否定するつもりはさらさらないが、「犠牲にしている」その後悔の念が強いのはほかでもない本人。女優という存在はなんなのだろうと考えさせられる。

EPISODIO4:

 そして一番の迫力はアンナ・マニャーニxヴィスコンティのこの作品。ヴィスコンティがただただ女優アンナ・マニャーニを評価し、彼女のありのままを撮っていることがよくわかる。僕の目に狂いはなかった、というヴィスコンティの声が聞こえてくるようだ。脚本はチェーザレ・ザヴァッティーニ(デ・シーカなどのネオレアリズモ作品の脚本家として有名)のようだが、エピソード自体はアンナ・マニャーニが実際に経験した話のようだ。
 子犬を乗せてタクシーにのって仕事場に向かっていたアンナ・マニャーニだが、タクシーの運転手に運賃を支払うときに「犬の分の乗車料金も払え」と言われ、しかし小犬は無料であると反論するも受け入れられず、激怒する。乗車料金自体は大した額ではないのだけれども、曲がったことが大嫌いな彼女は、運転手をつれて警察へ訴えに行く。

画像2


 女だからって舐めるなよ。まさにイタリアのDonne di popoloの要素が詰まった、彼女無くしてはできなかった作品である。

↓↓アンナ・マニャーニxロッセリーニ監督の「防衛都市」のレビューもこちらに書いています。



▼▽▼こちらのDVDコレクションにもはいっています!


イタリア映画特別上映会企画中です!あなたのサポートにより上映会でパンフレットが作れるかもしれません。もしよろしければサポートよろしくお願いいたします