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Sluggerさんへ土下座をしながらケンカを売る回(CHC)

こんにちは、イサシキです。

MLBは某Optimistらによって未だロックアウト状態。既にST開幕も3月へと延期3年連続で日程通りに進まずが決まり、相変わらずファンの方々は置いてけぼりにされている状態となっています。

そんな中でもSluggerさんをはじめ、各出版社さんはありがたいことに今年もMLBの選手名鑑を作成しているそうです。

ですが、今回は勝手にケンカを吹っ掛けます(ただの迷惑)

事の発端は先月24日に販売されたSluggerの3月号。この3月号では毎年各球団の今後5年を占う「未来予想図」という企画が掲載されます。ここでは現状の戦力やペイロール、傘下組織のプロスペクト充実度などを評価していまして、そこに加えて全30球団に今後の動向予想がチョビっと書かれます。

今オフは先述の通り、ロックアウト状態のため、それが明けたときに各球団がどのような補強に乗り出すのかという展望が書かれていました。それが本当に球団にとってフィットしている補強なのかを検証するというものです。

一生懸命調査して選手をピックアップしていただいたSluggerの編集担当の方への感謝を込めつつ疑念を持ってやっていきたいと思います。

SluggerさんのCHC寸評

通常販売されている雑誌なので、詳しい内容は個々人でご購入して読んでくださいという前提ですが、簡単に述べると

”Retool”再編、一新な補強はできたが、まだ投打共にPOへと自力で食い込む力はない。
Stromanの3年契約を鑑みれば、23年までにコンテンダー優勝を目指せるチームへと返り咲かないとマズイ。
ContrerasへのExtension等含め、Hoyer※BOがどうチームを舵切りするかまだまだ目が離せない状況。
(※BO:Baseball Operationsの略称。編成責任者。)

Slugger2022年3月号より、文章編集

という感じの内容になっていました。これはぐうの音も出ない正論だと思います。シーズン終了時の記者会見では、とにかく「賢く資金を活用する」と何度も発言していた通りに、FAから3選手、ウェイバーから1選手、トレードで1選手を獲得し、合計でおよそ$90MMほどに抑えたことによって必要以上のペイロール圧迫を回避しました。

そしてロックアウト後の展望として、こんなことが書かれていました。

・グレードダウンしたIFに、Coreaは無理でもStoryなら獲れるんじゃない?
・HoyerBOは豪腕タイプの中継ぎが欲しいと言っていた。それならKellyとかFamiliaはその条件に当てはまるのではないだろうか?

Slugger2022年3月号より、文章編集

ということで、ここで挙げられた3選手を次章で詳しく見ていきたいと思います。

また、HoyerBOの発言は下記リンクより確認できます。

CHCへのフィット具合は?

1人目:Trevor Story(トレバー・ストーリー)SS

Trevor Story (Photo)

走攻守においてハイレベルな能力を有し、Arenado(現STL)との三遊間はMLB屈指の鉄壁具合を誇るなど、観る者を魅了するプレーヤーとして活躍してきました。

CHCにとってStoryの補強はあり得る選択肢で、162試合を経験したことがないMadrigalとHoernerの若手二遊間を大きくアップグレードすることができますし、加齢に伴って3Bまたは今シーズンから導入予定のDHへとコンバートすれば長年戦力として計算できる存在になると思います。

「下山」の影響は?

Storyに関してよく懸念されるのが、COLから移籍した後の成績低下ではないでしょうか。

クアーズフィールドの地形図(Savantより)成績はStory(2021)

あまりご存じのない方にも簡単に説明しておくと、COLの本拠地であるクアーズ・フィールドは、コロラド州デンバーという標高約1600Ⅿの場所に位置しているため、他球場より気圧が低く、空気抵抗が少ないという特徴があります。こうなると打球の飛距離は伸び、フィールドの広さ左中間~右中間も相まって長打が大量に出ることになります。

つまり、この打者有利な要素が揃った球場から移籍することにより、成績を落としてしまうのではないかというのが懸念事項になっているわけです。そして、これら一連の流れを日本人のMLBファンは「下山」と呼んでいます。

StoryさんのHome&Awayにおける生涯打撃成績

現に実働6年でクアーズ以外の球場でのSLG長打率OPSOBP+SLG約160~200ポイント下がっているというデータもあり、多くのインサイダーや野球解説者、ファンの方が心配するのも無理ありません。

ただ一辺倒に移籍するのが成績低迷につながるわけでもなさそうなので、細かいデータやStory移籍後の成績に関する考察は、MLB関連の考察動画を投稿していらっしゃるメジャトピさんの動画をご覧ください。

私はここから、「もしストーリーがカブスに移籍してきたらどうなるか」という考察をします。

リグレーフィールドの環境から見る適正

球場別HRの期待値(savantより)

まずは主な打撃スタッツから見ていきましょう。

昨シーズン24本だった本塁打数は決して少なくありませんが、18~19年の30本台を考えるとやや物足りない数字に見えます。しかしSavantが出している球場別の本塁打期待値は各球場で昨シーズンの数を大幅に超える数値が出ています(ただし球場が置かれた場所の環境に関しては考慮されていないことに注意)。CHCの本拠地でもあるリグレーフィールドでは36本という数値が出ており、十分な本数といっていいでしょう。

そして球場の形状も味方する可能性があります。

リグレーフィールドの地形図(Savantより)成績はHapp(2021)
2球場のHRまでの飛距離比較

パークファクターはその年によって大きくブレ幅ができてしまうのでここでは触れませんが、Storyの打球方向の約70%を占めているレフト~センターの距離は、レフトポール際を除いてクアーズフィールドよりも短くなっています。

StoryのLaunch Angleは平均17.5度(2021)。一般的にはAngleが下がると打球初速が上がり、Angleが上がると打球初速が落ちると言われています。Storyは実働6年間での平均Launch Angleは17.8度とラインドライブバッターで打球初速の平均は90.6mphとなっており、年度別で見るとStoryもこの例に当てはまっています。ということで、打球方向や角度に大きな変化がなければ、打撃に関しては特に心配はなさそうです。もともとリグレーは打者有利の球場とも言われていますし。

そしてリグレーフィールドの外野フェンスにはツタが覆っており、その中に打球が入り込んだ瞬間にエンタイトル・ツーベースとなることを考えれば、クアーズフィールドと比較しても極端に長打が減ることもなさそうです。

ただ、やはり球場周辺の気象環境はディスアドバンテージになりそうです。

ここからは少々地理のお話もします。

高地で乾燥しているデンバーとは違い、アメリカ五大湖の1つであるミシガン湖が北東にあるイリノイ州シカゴは、気候区分でDfa、つまり亜寒帯湿潤気候となります。標高もシカゴ市内ほぼ全域で181mデンバーの標高は1609mあるので、もはやStoryは高地トレーニングをしている1300~2000mが効果的らしいのと変わりない標高差と言っていいと思います。

シカゴの湿度快適性レベル

そして「湿潤」とある通り、主に6月~9月にかけて暖かい南西からの風によって高温多湿状態となるため、非常に蒸し暑い状態が続きます。これは年間を通じて湿度が低いデンバーとは真逆の環境になるため、高地とはまた違う身体への負担が伴うことになるでしょう。

慣れない暑さは、暑熱順化を経て身体に定着させないと熱中症などの症状を引き起こす可能性があります。Storyがシカゴで活躍するためにはここも重要な部分となってくるのではないでしょうか。

さらには飛距離の減少も気になるところです。クアーズフィールドとリグレーフィールドではおよそ1500mほどの標高差があり、なおかつ先述の湿気も相まって打球は飛ばなくなるボールが重くなり、反発係数が落ちると想定されます。

ということで、CHCで活躍をするためにクリアしなければならないことはありそうですが、その打棒を活かすことは十分にできる環境かと思います。

2人目:Joe Kelly(ジョー・ケリー)RP

Joe Kelly (Photo)

最近ではCarlos Correaを煽った人物としての印象が強いですが、BOS時代にリリーフへと転向してからは頼れる投手に成長しています。

Kellyといえば100mphにも到達するフォーシームやシンカーをイメージする方も多いと思いますが、1番のウェポンは鋭く低めに落ちる高速カーブでしょう。

昨シーズンは投球の43.1%をこのカーブが占めており、カウント球やウイニングボールとして多種多様に扱うことができます。また、一昨年のシーズンでは投げなかったチェンジアップも復活させ、主に右打者のインローに沈めて空振りを奪うボールとして重宝しています。

HoyerBOの言う「豪腕リリーバー」の条件としては当てはまっており、なおかつSTL→BOS→LADと強豪チームを渡り歩いて戦力となった経歴は文句なし。実績が乏しいCHCの救援陣にはうってつけの存在とも言えますが、オプション破棄をしたLADは元からKellyと再契約をするつもりがあるらしく、Kelly本人も前向きな姿勢を見せているため、本当にKellyがシカゴに来るかは微妙なところです。

なおこの話からは脱線しますが、LADは今オフの大量流出に備えてKellyとのオプションを破棄したとみられています。そこには「バイアウトトリック」が噂されていますので、興味がある方は是非調べてみてください。多分よくある球団側の節税術だと思いますが。

http://www.mlb.jp/category/news/page/19/

3人目:Jeurys Familia(ジェウリス・ファミリア)RP

Jeurys Familia (Photo)

一度A’sには移籍したものの、キャリアの大半をNYMで過ごし、かつてはクローザーとして9回に君臨して最多セーブを記録した投手です。

ここ数年は右肩のケガ成績不振があって思うようなパフォーマンスができず、その年俸($10MM超え)に見合う活躍はなかなかできませんでしたが、昨シーズンは減少していた奪三振数が戻りファストボール系で空振りを奪う機会も増加。シーズン終盤には3年ぶりとなるセーブも記録し、NYMの台所事情を支えました。

もちろん経験豊富な投手であることを疑う余地はなく、登板数も稼げるタフさを兼ね備えているため、こちらもKelly同様CHCとフィットする可能性は高そうです。

本人はNYMに愛着を感じており、球団側も今オフで満了となった契約を再度結びなおすことに関心を持っています。現にロックアウト前に接触をしていたとの情報も出ていますので、CHCFamiliaの誕生も微妙かなあといったところです。

ということで…

3選手とも契約できる可能性はあまり高くなさそうですが、Sluggerさんはあくまでも様々な情報媒体を参考に名前を挙げていることに加え、3選手とも今のCHCにはフィットする選手だと思うので、見立てとしては全然的外れではないと考えています。

それでは、最後に。

Sluggerさん、本当にすみませんでした


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