【知らない人んち(仮)】第2話シナリオ案&アイデア案



◯和室
ジェミ「……相変わらず下手な絵ね、きいろ」

◯暗室
ドンドンと音がする。
キャン、音に気づき暗室へ向かう。

◯暗室の前
キャン、ドアをゆっくりと開ける。中は真っ暗な状態。

◯同・暗室内

キャン、暗室の照明を点ける。
張られたロープや部屋中に海外の美しい風景写真が吊るされている。
そこにアクとソックリの双子の兄が立っている。
キャン、ドアを閉めて

キャン「いつの間に帰ってたの!?」
アクの兄「2時間くらい前に帰ってたよ。今起きたら部屋締められてっから内から開かねえんだもん。監禁かと思ったわ」

キャン、ベッドがズレているのを見て

キャン「いい加減ベッドの下で寝るクセ治しなさいよ」
アクの兄「酔っぱらって記憶飛んでんだからしょうがねえだろ」
キャン「私とジェミの部屋まで勝手に入って寝るのほんと迷惑だから」
アクの兄「わざとじゃねんだから仕方ねえだろ。それにアクは、俺がベッドの下で寝てるところをYouTubeに流して儲けてんだろ?ウィンウィンじゃねえか」
キャン「大して儲かってないのよ」
アクの兄「何でだよ?」
キャン「ガタガタ動くから上手く撮れてないのよ。一番の理由は、それじゃ無いけど」
アクの兄「え?何だよ?」
キャン「お兄ちゃんに惹きが全く無いのよ」

アクの兄、ふてくされた表情で

アクの兄「気分悪いわ。もう少し寝るわ」

アクの兄、ベッドの位置を直し寝る。

キャン「絶対、下に潜らないでよ」

タイトル【知らない人んち(仮)】第2話「ダブル」

◯リビング

ジェミ「きいろさん、そろそろ夕食食べる?」
きいろ「え?良いんですか?」
ジェミ「もちろん」
きいろ「ありがとうございます!」

◯同・リビング・テーブル

きいろ、アク、キャン、ジェミがテーブルに座っている。
きいろ、動画を撮っている。
各々の皿に取り分けたミートローフとサラダとパンが置かれている。
ミルクの入った大きな瓶が置かれている。

ジェミ「じゃあ食べましょうか」
きいろ「いただきまーす!」
アク「い、いただきます」
キャン「いただきます」

全員、料理を食べ始める。
きいろ、スマホで料理を写した後、机に立てかけ、ミートローフを食べ始める。

きいろ「うわ美味しい!凄いジューシーですね」
ジェミ「良かった。いつも同じメンバーに振舞ってるだけだから、他人がどんなリアクションしてくれるか不安だったんだけどね」
きいろ「お肉の味もしっかりしてるし」
ジェミ「まあ、脂身の強い牛肉と赤身の強い牛肉の2種類を混ぜて丁寧に捏ねてるから」
きいろ「香りも良いですね」
ジェミ「この肉と1番相性の良い香料を使ってるから」
きいろ「そうなんだー。だから濃厚なのに後味がしつこくないんですね」
キャン「なんかグルメレポみたいですね」
ジェミ「(少し笑って)ほんとに。褒めるの上手いわね」
きいろ「いえいえお世辞じゃないですよ。これ絶対お店出来ますよ」
ジェミ「単価をグンと下げないとね」
キャン「まあね。きいろさん、良かったらミルクの方も」

キャン、ミルクの瓶をきいろのコップに注ぐ。

きいろ「あ、すいません。いただきまーす」

きいろ、ミルクを一口飲む。微妙な表情。

ジェミ「どうですか?」
きいろ「うん…美味しいです。このミルク…ちょっと変わった味ですね」
キャン「これヤギのミルクなのよ」
きいろ「え?ヤギなんですか?だから今まで飲んだミルクと少し違うの感じがしたんだ」
キャン「クセあるでしょ?」
きいろ「うーん、そうですね。でもこのクセは、あのー、結構好きかも」
ジェミ「急に歯切れ悪くなってない?」
キャン「あんまりお気に召しませんでした?」
きいろ「いや全然そんな事無いです!体にも良さそうだし」
ジェミ「良薬口に苦しみたいな?」
キャン「ちょっとジェミ、きいろさん追い込み過ぎ」
ジェミ「ごめんごめん」
キャン「やっぱりヤギはもう1つかー」
きいろ「いえいえ美味しいです」

きいろ、ミルクを一気に飲む。

きいろN「ヤギのミルクは一歩ゆずるとしてさ、パンより米が食べたいんだよな」


◯玄関

アク、再び外へ出掛ける。

◯リビング・ソファ

きいろ、ジェミ、キャン、ソファに座っている。
きいろ、ドアを閉めて出掛けるアクの足音を聞いて

きいろ「アクさん、どこへ行くんですか?」
ジェミ「‥‥徘徊よ」
きいろ「徘徊?え?止めなくて良いんですか?」
キャン「え?まあ、いつもの事だし周辺に迷惑かけた事ないから」
きいろ「へえ、そうなんですね」
ジェミ「あ、タバコ買って来てもらえば良かった」

キャン、テーブルに置いてあるアクのスマホを見て

キャン「スマホ忘れちゃったみたいよ」
ジェミ「(舌打ち)何やってんのよ、もう」
きいろ「え?でもアクさん記憶喪失ですよね?タバコ頼んでも忘れちゃうんじゃ?」
ジェミ「え?‥あ、そ、そうなんだけど、あのー、記憶喪失って、何かをきっかけに戻る可能性があるからさ、一応毎回パシリに行かせて回復してるかどうか探ってんのよ」
きいろ「ああ、なるほどー」
キャン「私買って来ようか?」
ジェミ「いや、それはちょっと‥‥じゃあ、お願い出来る?」
キャン「うん、良いよ」
ジェミ「ごめん。オリジナルの10㎜ね」

○玄関

キャン、外出する。

○リビング

きいろとジェミ、2人でソファに腰かけている。

きいろ「タバコ吸われるんですね」
ジェミ「食後は、ニコチン入んないとシャキッとしないのよねー」
きいろ「なんかジェミさんがタバコ吸う姿、凄い格好良さそう‥」

ジェミ、肘をついて寝ている。

きいろ「ジェミさん?」

爆睡しているジェミ。
きいろ、ソファから立ち上がり

きいろN「アクさんとキャンさんが外出して、ジェミさんは寝落ち。これ以上のチャンスは無い!」


◯更地

アクが更地の前に中腰で座っている。
枯れ果てたラッパスイセンの蕾を見て

アク「ラッパスイセン、また芽吹かなかったか」

アク、枯れたつぼみをはぎ取り、手袋で土を掘る。
土中から水瓶の上部が出てくる。
アク、水瓶の中で育ったトリュフを抜き取る。

アク「トリュフはゴロゴロ出てくんだけどなあ」

アク、更に水瓶の土を掘り、髪の毛のようなものを引っ張ると長い自然薯が出て来る。

アク「土の良さは天下一品なんだよなあ」

アク、袋の中からミートローフの残り、ヤギのミルク、魚の骨、サソリとカニの殻を出して水瓶に入れる。

アク「はあ。もうすぐ三回忌か」

アク、袋から栃乙女(イチゴ)を出して見つめる。


◯暗室の前

きいろ、スマホを撮りながら暗室のドアをゆっくり開ける。

◯暗室

きいろ、暗室のスイッチを入れる。赤い照明が灯る。
張られたロープや部屋中に海外の美しい風景写真が吊るされている。

きいろN「思ってたのと違う。本当に普通の暗室だ」

きいろ、流し台の水面に浮いている写真(インドネシアの海岸風景)をみつけ手に取ると、水中にレッドアロワナが泳いでいるのをみつける。

きいろ「(小さい悲鳴)!え?何これ?」

きいろ、写真を流し台に戻してアロワナを隠す。
ふとロープに吊るされたカメルーンの熱帯雨林の写真を見ると、写真の裏からダイオウサソリがロープを伝って上がって来る。

きいろ「(小さい悲鳴)!!」

きいろ、堪らず暗室を出ようとするが足に違和感を感じ、足下を見る。

きいろ「(小さい悲鳴)!」

きいろの足下に片足で写真(沖縄の海の写真)を挟んだカニ(ハマベンケイガニ)が横切る。
きいろ、よろけて尻もちを着く。
ベッドにもたれかかると、ベッドの下からアクの兄がきいろの腕を掴む。

きいろ「(大きな悲鳴)!!!!」

◯リビング

ジェミ、ソファで足を組みながら、暗室で騒ぐきいろの声を聞いている。

ジェミ「はあ‥‥またか」


◯クリニック・外観

◯同・診察室

キャン、医師と話している。

医師「どうですか?最近は?」
キャン「うーん、相変わらずってとこですかね」

医師、PCのクランケリストのデータを見る。きいろの名前が表示されている。

医師「そうですか。シミの付いた布団に「ニゲテ」の紙を挟んでも効果は無かったと」
キャン「少し気にしてたみたいですけど、すぐ通常に戻りました」
医師「不気味な部屋を作って興味を沸かせ、一度拍子抜けさせた後、すぐに驚かせる二重の仕掛けもダメですか?」
キャン「毎回驚いて、数分後には、また振り出しです」
医師「うーん。きいろさんにはショック療法は合わないのかなあ」
キャン「やっぱり、きいろ自身が起こしたショックと比べると……」
医師「なるほど。そういえば最初に相談に来てからもう3年が経つんですねえ」
キャン「全ては、きいろが悪いんですけどね」
医師「……まあ引き続きアクさん達と相談して、様子を見ておいてください」
キャン「はい、分かりました」

◯更地

アク、イチゴをみつめながら

アク「こんなこと続けたって運勢なんて変わらねえよな。あいつの蒔いた種なのに、何で俺たちが辛い思いして、あいつは呑気に動画撮ってんだよ。(イチゴをみながら)この代用品で済ませるか、それとも‥‥本物を捧げる‥か?」

◯リビング

星座の壁紙。
射手座のイラストがズームアップする。

C.O


タイトル「知らない人んち(仮)第2話「ダブル」

(おわり)

★(シナリオの解説)

・3人ときいろは兄妹。

・記憶喪失なのはアクではなく、きいろ。

・きいろは、3年前、末っ子の弟(きいろの書いた絵の右端のみどりの男の子)と共にYouTube動画を撮っていた際、再生回数を上げるため、末っ子に無茶な要求をしたのが原因で亡くなった事がきっかけで記憶喪失になった。

(無茶な動画の例)
・分厚い月刊少年誌を腹に巻いたら防弾として成立するかやってみた!

・岩を枕にして1週間寝てみた!

・千鳥の漫才に出て来る寿司ネタを捕まえて寿司にしてみた!→ハンマーヘッドシャークに噛まれる

・背中に聖母のタトゥーが入っているS嬢の背中を踏んでみた!

・大蛇をマフラーにして街を歩いてみた!‥‥など

・「ニゲテ」のメッセージを書いたのは、きいろの記憶喪失を治すために「不気味な仕掛けをして一時的に脳内に刺激を与えるショック療法」としてアドバイスした医師。

・アクは、記憶喪失のきいろの動きを常に監視して、事故を防ごうとしている傍ら、寝癖の悪い双子の兄の動画も配信し、何とか広告収入を稼ごうとしている。

・きいろは、ジェミ達を他人だと思い、毎日自分の家にYouTube動画の撮影をしに来るが、この日、ピアスを落とした事で、たまたま子どもの頃に描いた自分の絵がみつかった。
ジェミが言った「相変わらず」は、いつものきいろの行動の事で、「下手ね」は、久しぶりに見たきいろの絵と、幼少の頃のきいろを思い出し感慨にふけて出た言葉。

・暗室は、本業がフォトグラファーのジェミが家計を支えるために運勢を上げるスピリチュアルな写真や動物などをネット販売するために使う部屋。
写真に出てくる海や川に棲息する野生生物などを、きいろが部屋に入るたびに出てくるように仕掛けてショック療法としても使っている。


・更地は元々兄弟が住んでいた家。 末っ子(絵の右端のみどり色の子)が亡くなってから全員が自宅で毎晩悪夢にうなされたり体調が悪くなったりしたため自宅を解体。
更地は売らずに末っ子の遺灰と供え物を入れた水瓶が埋められている。亡くなった末っ子が寂しくないように近距離に借家を借りて毎日供養をしている。

・更地に埋められた遺灰の入った大きな水瓶には、星座に纏わる供え物と土を入れて「復活」を意味するラッパスイセンを咲かせることと、兄弟の家計を少しでも楽させるためにその土で根菜類などの自家栽培をしている。
葬いと自家栽培という新手の二毛作。

・アクは遺灰に物を捧げる際に、天秤に掛けたような様々な事を想像し亡き末っ子を弔っている。



★(次回からのアイデア案)

・アク達が住む場所は日本では無く外国で更地のエリアとは州が違う。

・ジェミが白い手袋を置いたのは州の境界線の更地側。

・アク達が住む州はクローン人間の再生が認可されているが、更地がある州は禁止されている。

・アク達の住む自宅側の境界線に、亡き末っ子の細胞を持って行くと、クローン禁止法の罪で逮捕されるので、ジェミは、きいろを自宅に連れて行く時、とっさに手袋を境界線の更地側に置いた。その直後、アクとキャンが手袋を拾い、更地にお供えをした。


・檻は犬小屋ではなく自宅で飼っているライオン(獅子)。

・水瓶を埋めている場所にミニチュアの射矢を刺している。見ようによっては、植物の在処を示すポップに見える。

・末っ子の命日には特別にマイケルジャクソンの白い手袋で供養する。

・アク、ジェミ、キャンは、旅行などで留守中の他人の家をネットリサーチして帰って来るまで不法占拠し、一定期間だけ勝手に住んでまた違う家に移動する「不法占拠バックパッカー」と言われる集団である。

・更地の地底には罪人が閉じ込められていて、アク達は、たまに穴から釣り糸や残飯を垂らして楽しんでいる。

・更地は土ではなく馬鹿でかいティラミス。

・キャンとアクとジェミは、長い階段で3人一緒に転げ落ちた事で、キャンがアクで、アクがジェミで、ジェミがキャンになっている。共同生活をしながら元に戻るには、どうすべきか模索している。

・暗室を開けると更地が1段階沈む。

・暗室で深夜開店のブルセラショップを経営している。

・他人が来たらバレないように檻から暗室へニホンオオカミを移し保護している。

・更地は花火の絶景ポイントなので毎日メンバー交代で場所取りをしている。

・きいろ、アク、キャン、ジェミ以外の人類は全て滅亡している。

・暗室のドアに貼られたテープが赤と黒で✕マークを表しているのは、「赤でも黒でも無い」という意味で、ルーレットでいう0を表している。
0=ルーレットのみどり。
みどりは、家族の絵の右端にいる子。赤の女の子と黒の男の子に「0」にされた。
赤の子と黒の子が幼い頃にまぐわい、産まれるはずだった子。
あるいは、産まれたが、近所や周りの噂や偏見を恐れ、暗室にずっと隔離している。

・アク、キャン、ジェミの足の裏に12星座カレンダーの断片のタトゥーが彫られていて、互いの足裏を合わせるとカレンダーのデザインが繋がっていくが、もう1断片が足りない。その星座カレンダーを完成させて太陽にかざせば、衛星に向けたQRコードとして受信され、メンバー各自が登録しているスイスの銀行から12億円が振り込まれる。

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