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準備編その4:「人選について」「依頼の喜び」

 GiZAIYAだ。未来の世界でお前がこのnote記事を連続して読んでいるか、あるいは一日一回このシリーズが更新されるたびにチェックしているかは謎だ。筆者である俺と読者であるお前の時間軸はまったく違う。ひとつ云えることは、お前がこのnoteを読むとき。それは今これを書いている俺からすれば未来であり、読んでいるお前からすれば過去であるということだ。それはともかく一日一回必ず読みに来い。

 俺は昨日の夜、恐怖のあまりむせび泣いていた。前回の記事④の冒頭部分で『note連中はバカだ』と書いたからではない。このように一言で済む話を長々と文字面を愉快にして書く俺と、頭のお花畑をそのまま書き出しているヤツらとではハナから勝負にならない。俺がヤツらを恐れる理由がないのはお前の目にも明らかだろう。

 俺は今、『改奇倶楽部』という小説をカクヨムで連載している。俺自身は書いていてめちゃくちゃ面白いと思っているし、人工知性と共生する未来社会に興味がある人には垂涎モノの内容だと自負しているが読者がまったくいない。数少ない五人のフォロワーの中に何故かあの饗庭淵先生がいるコトや相互フォロワーのシャル青井さんが感想を送ってくれるのがモチベーションだ。序盤だから仕方がないだろうが、時おり物書きというのは誰にも読まれない恐怖によって、どうしようもなく不安になる。

 お前は本当にこの記事を読んでいるのか? 俺はそれも少し怖い。恐怖がドン底に達すると暗黒騎士に闇堕ちてしまうので、魔戒騎士である俺はいつも自分と戦っている。

 そんな俺の心を救ってくれたのが七原冬雪先生のこのツイートだった。俺から既に一生分の精子を吸収したあの七原先生ですらアヘ顔の描写に悩み、葛藤をする。そのような真実が俺の心を奮い立たせた。エロイラストの鍛錬により己の剣を磨き続け同人界において黄金騎士〈牙狼〉の称号を得た彼ですら、己の技量に葛藤をするのだ。高みに立つ人間が時おり見せる哀しみの表情、それが吐露する言葉(twitterのツイート)に卑近さを見出した俺は、彼もまた人間であり悩むということを知り、それでもレスラージータのエロ本を完成させるのだろうと信じた。すると俺には勇気が湧いてきた。こんなことでクヨクヨせずに俺も胸を張って進むのだ。『アヘ顔の塩梅がうまくいかない』というツイートだけで人をここまで元気にする黄金絵師、七原冬雪。やはり彼は偉大だ。

 それにしても俺が迷ったときにちょうど七原先生もこのような発言をするとは……奇遇を超えたなにかを感じた俺が夜更け過ぎ、喧嘩稼業に登場する佐川睦夫ばりに「やっぱり七原先生の生霊は俺の傍にいるんじゃないかああああ」と涙したのは無理からぬ話だ。では本題に入ろう。



依頼する前に / 人選について

 クライアントであるお前がどのイラストレーターを選ぶかはお前の企画によって変わる。予算だとか作風だろうが色々あると思うが、お前がその人を選ぶのは、その人物が発表した作品に何らかの魅力を感じたからだろう。概ねそうだと思う。

 俺もそうだ。そのうえで、俺は基本的にスケジュールに余裕がありそうな相手を選ぶ。もっと突っ込んだ話をすると、そのなかでも仕事依頼の募集ツイートを頻繁にTLに流している相手を優先する。「お金がない」などと呟いていれば尚いい。今スケジュールで手いっぱいの人間よりも、技術を持て余して金に困ってる人間を選ぶ、というのが俺の信条だ。そして相手の提示額を下回らない。それだけ守れればビジネス上ではwin-winの関係が築きやすいと俺は思う。

 そんな俺にも『依頼をするかどうか』に関して相手を見極める基準が3つほどある。以下はそれを箇条書きしたものだ。

①自分が気に入った絵を描く人間か
②SNSで問題のありそうな発言をしていないか
③予算的に依頼を引き受けてくれそうか

 前述したが①はお前がその人を選ぶ上で最も重要視するべきだ。①さえ重視すれば②や③はある程度許容できるはずだし、お前は憧れのイラストレーターさんに絵を描いてもらうという夢を一つ叶えられるのだから、そのために金を貯めることもできるだろう。「気に入ったかどうか」という自問のなかには、当然お前が手掛けている企画に合うイラストを描ける見込みがあるかという信用も含んでいる。ファンタジー作品ばかり描いている人にメカ描写ぎっしりのSF小説の挿絵を任せてみるのも企画としては面白いかもしれないが、俺の場合はそうした冒険をする余裕はない。相手が公表している作品のジャンルや傾向に添った仕事を任せたい。

 ただ過去に何回か、緻密で有機的なクリーチャーを描く人にメカデザインを頼んだことがある。そのときはとてもいいものが出来た。彼の場合はメカ作品を発表することはなかったものの、自分がそういった題材に対してある程度アンサーを返せるほどの創造力や挑戦心が本人にあったのだろう。そういった部分を見出した相手に「ちょっといつもの作風とは違うお仕事になるかもしれないですが…」という前提で相談を持ちかけるのも、企画としては面白いかもしれない。そういった相手をどう説得するかはお前の交渉能力が問われる部分だ。

 次に②だ。SNSでは度々、イラストレーターが自分が置かれた境遇やクライアントへの批判することがある。これについては、お前の側で気をつけていれば本来は大丈夫だ。

 だがそれでも、何らかの誤解や想定外のことが生じて、お前が筋を通していたにも関わらずSNSで悪評を広められるといったことが起きないとも限らない。そのため企画にはお前がそういった事態にならないよう注意するほかに『そんなことをしないような相手を選ぶ』のが安全のための第一歩だ。俺の場合はSNSでの発言がある程度、思慮に基づいたものであるかどうか等を確認している。次に、もしそのようなコトが起きたとき自分が不利益を被らないようにあらかじめ対処方法を用意する。メールを残しておくことや、twitterのDMの発言をスクショ保存しておくことだ。あとは最悪のために法律について少しの勉強をすることだ。

 SNSでの発言は最重要資料だ。俺は大抵のイラストレーターは裏アカウントを持っていると思っている。それは例えば愚痴用のアカウントやゲーム用アカウント、別名義で仕事を受けるためのアカウントだ。そういったものは問題ないが本アカウント=自分の仕事を告知する公の場でヤバそうな発言をしている人間には注意しろ。人の目につくところでそういった発言をしているかどうかだ。それは注意して見ておいて損はない。最近『けものフレンズ2』のことでテレ東が謝罪していただろう。謝罪するくらいならSNS使用のマナーくらい企業側で徹底しろと云う意見もあったが、今の時代、ああいったことはむしろ企業ではコントロールし辛い部分だ。だがお前の場合は個人クライアントなのでお前が用意周到であれば何も問題はない。

 最後に③だが、イラストレーターたちの中には金額を提示している者もいる。そのような人々の場合はお前がお財布と相談して選べばいい。簡単話だ。それでも中には「この人に頼みたいけど金額の目途がつかない」といった人が出てくるだろう。そんなときは直接、本人にメールを送れ。これは基本的な話だが金の話は表でするな。クリエイター本人が自発的にする分にはいいが、間違ってもリプライで「~円で描いて貰えませんか?」などと云ってはいけない。別にするなとは云わんが、大抵はお前の常識を疑われることにはなるだろう。

余談 / 依頼の喜び

 前回は失敗の話をしたので今日は俺が依頼をするなかで嬉しかったことについて話そう。『個人がイラストレーターに仕事を頼む』というのは、喜びの連続だ。自分が出したアイデアにかたちがつく喜び、自分が魅力を感じた相手に手掛けてもらえる喜び、様々な喜びがある。それはイラストというものが単に金額だけの価値しか持たないものでないことの証明だ。俺たちは金を払って絵を描いてもらうだけでなく、その中で無数の工夫や苦労、喜びを獲得する。その喜びに値段はない。当然、仕事量にも含まれない。絵を頼むなかで副次的に得られる経験だからだ。

 ラフ画を見るときや完成原稿を見るとき、いつも俺はワクワクした気持ちになる。これは今まで仕事を頼んだ相手が全員そうだ。そしてこうして並べると、なんだかよくわからないが、自分の創作のなかにある世界が広がったと実感する。俺が仕事を頼んだ相手の数だけいい思い出が沢山あるが、せっかくなので今回はそのなかで一番新しいものを話そう。

 俺は今やどのーち先生に仕事を頼んでいる。先生の絵やニジエのURLをここに貼りたくて仕方がないが、成年向けコンテンツなので(noteがどれほどエロを許容してくれるかわからない現段階では)載せることができない。なのでお前の目で直接、やどのーち先生のtwitterアカウントにアクセスしてメディア欄なりニジエのギャラリーを見て確かめてほしい。

 依頼の始まりそのものは単純だ。「やどのーち先生のお仕事募集のツイートを見て応募しました」などというアルバイト面接に定型文を返す学生かと自分でツッコミを入れたくなるほどシンプルな理由を引っ提げて、俺はやどのーち先生に依頼のメッセージを送った。(※これは嘘。本当はビクビクしながら2時間ほどコインランドリーで文面を考えていた)

 だがそもそも俺がやどのーち先生を知ったきっかけは相互フォロワーのRTだった。俺は一目見たとき、絶対にいつかこの人に仕事を任せると決めていた。それはなぜか。お前は知っているかどうかわからないが、俺は幼少期のころに日曜洋画劇場で『バットマン・リターンズ』や『蜘蛛女』などの映画を観たことにより尋常ならざる性癖を獲得した。このほかにも『バカ殿』で志村けんが女王様にぶたれているシーンをビデオデッキが壊れるまで巻き戻し再生したりしていて、中学に上がることまでは男と女というものは必ずSMをするんだよなという認識が常にあった。

 そして(一般的な)性の知識を得るごとに俺は絶望した。SF的ボディスーツやボンデージやエナメルのテカりや半透明の競泳水着が大好きな俺の結婚相手は、もしかしたらキャットウーマンみたいな恰好もしないし、SMにも全く興味がないのかもしれない。家畜人ヤプーの文化で生きた人間が唐突に地球に落ちて来たら、恐らくこのようなカルチャーショックを受けるのだろう。そういった世界を受け入れたくはなかったが、いつしか俺は自分をマイノリティな特殊性癖の持ち主だと自覚していた。俺はマジで社会に屈したと思ったね。悪と云うのはこうして生まれるのだ。

 だが思慮深い俺は世の中を憎むより仲間を増やすことを選んだ。俺は決めたのだ。自分と同じような性癖を抱える人間に「きみは一人ではない」と叫び続けることを。これは単なる義務ではなく掲げるべき大義名分の旗である。だから俺はいつも自分の創作のなかに、その手の趣味を入れる余地がないかを探している。

そんな俺にとってどうしても作りたい作品があった。それそのものが魅力になっているエロ作品だ。俺は饗庭淵先生の伝説的名作である『X型射精管理アンドロイド』人類が聖域とすべき『HERENCIAのM向け作品』に並ぶほどのパワーを秘めた最高のエロ同人作品を作りたかったのだ。

 そのような俺にとって、やどのーち先生との邂逅は必然であり奇跡だった。お前はやどのーち先生のニジエに置いてある入学式のイラストを見たか? 俺はあれを観たときにマジで自分は孤独ではないと感じたし、こんな表現で埋め尽くされたCG集が発売されたら、それは俺にとっても、この世界にいる未だ見ぬ仲間たちにとっても最高のはずだ。それが俺たちと同じ性癖を抱えたものにとって、希望の星のひとつとなり明るく世界を照らし出すのだ。そんな揺るぎない自信があった。

 俺は成人向け作品を手がけたことはない。その点に関して云えば全くの素人だが、それでも難航した末に生みだしたこの作品のプロットには自信を持っている。そのラフが出来上がるたびに俺は「これは間違いなく全ての名作を過去にする…」と確信している。そんなわけでこの依頼は新しい挑戦や長年付き合ってきた性癖、憧れのイラストレーターとの制作の実現などで構成されているため、いつもとは別ベクトルで喜びが満ち溢れていて楽しい。お前も個人クライアントとしてイラストレーターと共に企画制作するなかで、そういった喜びにたくさん出会ってほしい。俺はそれを祈っている。(つづく)

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