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準備編その2:「リスク確認」「1ページ目を作る」

 GiZAIYAだ。お前SNSはやっているか? これを読んでいるお前が物書きだか企画屋だかはわからないが、だれかに頼んで描いて貰った絵をSNSに載せているとき、ふとした人からフォローをもらうことはある。だが時を置かずしてお前はリムーブされてしまった。うっかりお前をイラストレーターだと勘違いした第三者が誤ってお前をフォローしたわけだ。そして期待していた人間ではなかったのでフォローを外された。俺もそういうことは何度かある。「クレジット表記すればいいだけだ」と思ったかもしれないが、その話をすると長くなるので今回はやめておく。

 俺はwebの作業・依頼の発注/監修・小説の執筆・グッズ化の下調べ・資料漁り・グッズ化の際のデザイン編集・ラジオ原稿を一人でやっている。こう書くとまるでマルチ気取りのナルシストに見えるかもしれないが、総合的な工程数でいえば動画制作者などよりは遥かに楽だろう。正直、動画制作はやったことがあるがこれ全部やるより難しい。何より俺は並行作業で少しずつ進めているので結局のところマルチになんて成り切れない只のビッグマウス野郎なのだ。

 俺みたいなヤツは第三者からみて何をしているヤツなのか一目でわからない。この間なんてフォローした絵描きに「フォロー返すときに文章書いてるのか絵描いてるのかわからない人は転載を疑ってしまう」と呟かれてマジでショックだった。いや事実だけどマジでショックだった(二回目)
 俺は(酷いものもあったが)毎回きちんと依頼文書を作ってそれを通じてやり取りした結果にイラストを描いて貰ってるわけで、一応webサイトとかもあるわけだし……何より私の見えるところで云わなくてもいいじゃん……そういう意識はちゃんとあるからこんな記事を書いてるわけでして……いや、もういい……この話はやめましょう……。

 まあ似たようなことは誰にでもあるだろう。承認欲求を満たされないお前は「創作者扱いしてもらえない」と嘆くかもしれない。そんなお前に云っておく。同人だけでなく創作行為全般に云えることだが企画は技術(スキル)だ。

 たしかに俺たちは絵描きじゃない。素晴らしいキャラクターのイラストが上がったとき、ほぼそれはイラストレーターの仕事によるものだ。けれどその絵を使って何をするかはお前に委ねられている。それで自分なりに企画を成功させることが出来れば、そのときは自分を評価するべきだ。次々に企画を起ち上げたり、同じ企画でもより洗練されたモノに出来ればお前はしっかりと技術を身に付けていることになる。その企画においてお前は花形ではないが、黒幕と呼べる存在であるのだから胸を張るべきだ。では本題に入ろう。


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準備編その2:依頼する前に / リスク確認


 これはとても大切なことだがイラストレーターに発注する前にだれに頼むかを決めなくてはならない。どのイラストレーターなら自分の企画に応えたイラストを描いてくれるか、まずはそれをじっくり考える必要がある。失礼な云い方をすると吟味の作業だ。(この記事でいう「企画」は広義のもので、例えば自分の想像したキャラクターを実際に描いてもらう等といった依頼も「企画」として捉えている)

 しかしながらそれはもう少しあとの作業だ。その前にまず一度、俺にはここで注意すべきポイントがある。やるべきシンキング。それは『そのイラストレーターにとって自分の仕事を受けることでリスクが生じないか』だ。

 もっと別の云い方をすると「完成後の作品は何らかのトラブルを招くものではないか」それを今一度チェックしたい。

 極端な例だが、依頼者が既存の版権作品の内容を丸ごとコピーした小説やゲームを作ったとする。そのためのイラストを発注し、完成した原稿を受け取って公開したとしよう。後日、それが問題となり作者=依頼者は権利元に訴えられるシナリオになるが、当然それはネットの記事となり、SNSで拡散されて炎上の完了となる。こうなっては依頼を引き受けたイラストレーターもバッシングされるだろう。そうなれば、今後そのイラストレーターに仕事が来づらくなる可能性もある。自分の作品に責任を持つことは制作の前提だが、責任を問われるような作品にするのは避けるべきだ。イラストレーターを含む制作に関わったスタッフに迷惑をかけるのは論外だろう。そういった部分がないか、念のために今一度ここで見直しておこう。


準備編その2依頼する前に / 1ページ目を作る


 次にその人物に依頼するために準備すべきもの。それを考えたい。自分用に「予算」「スケジュール」「どういったものか」「枚数必要か」などを文書ファイルにまとめておくのだ。例えば「タダで明日までに小説の表紙フルカラー1枚とキャラクターの立ち絵フルカラー5枚とモノクロ挿絵10枚お願いします」などという無茶な案件を受ける人間は残念ながらお前が異世界転生したあとの世界でしか見つけられないだろう。しかし「3万円で2ヵ月後までに同人誌の表紙をフルカラーで一枚」という話なら現実世界でも依頼を受ける人は沢山出てくる。

 俺は最近になってようやく依頼文書の1ページ目、つまり前書きにあたる部分にわかりやすくこれを書いておくことにした。これはクリエイター業に限った話ではないが、フリーランスのイラストレーターは大抵「この納期でこの金額なら受けない」という物差しを用意している。それで飯を食っているような個人事業者はこの物差しがないと生活を維持できないからだ。俺は「受ける / 受けない」の返事も早いに越したことはないと思っているので、まず一目みて相手がその「受ける / 受けない」を即断できるよう依頼文書を作りたい。そのために冒頭で金額や納期等を提示して、その物差しでスパッと測ってもらえるようにしている。

 イラストレーター側も依頼のメールにはなるべく時間をかけたくないだろう。これは完全に自論だが「文章を読んだり考えたりする脳みそ」と「絵を描く脳みそ」は別モノだ。それに絵描きも出来ればずっと「絵を描く脳みそ」でいたいはずだ。長々とメールを読んだりすると脳みそが「読みモード」になってしまう。

 もちろんメールを読んだり返したりする作業はフリーランスのイラストレーターにとって絶対に必要な作業で、それによって脳みそが疲れたりしてもそれは避けられない負担だ。

 けれど俺は物書きなので文章の構成次第で読み手の脳みそが費やす体力を抑えることができると思っている。なので相手が瞬時に依頼を断れるだけでなく「余計な文章を読んで無駄に疲れてほしくない」という気持ちもあって1ページ目をこのような構成にしている。

 それにもし仮に俺がイラストレーターの立場でも、「キャラクターの設定やイラストの要望だけビッシリ書かれて肝心の金額や納期といった最重要部分についてノータッチの文章」は困るだろう。あらかじめ自分が持っている「受ける/受けないの物差し」で測れないのだから。(つづく)


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