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【琴爪の一筆】#14『娼婦の本棚』鈴木涼美④

最も間違っていると叱られるような世界に堕ちた先から見ると、正しいことと薄汚いことの間のグラデーションに散らばる、無数の現象こそが人の生き死にのように見えるのです。

『娼婦の本棚』鈴木涼美著
中公新書ラクレ 2022-04
p241より引用

似たようなことを感じていました。
似てないかもしれませんが。
以前この写真を撮った時に思ったことです。

「善悪。白黒。光影。陰陽。幸不幸。とかく人は二つのことに分けようとするけど、この世界はむしろ分けられないことばかりだよ。そんなことはこの空ひとつ見上げるだけでわかるじゃないか。」と。

著者がいう『堕ちた』という表現は、一般論としてのあえての表現だったのかなとも思えます。彼女とは別の視座から観れば昇ったとも言えなくもない。さらに突き詰めれば、上も下も尊大さも卑屈さもないフラットで色のないところ、つまり「無」として捉えることが理想なのかもしれませんが、むしろこんなグラデーションがあるからこそ、人生を送る甲斐があるのでしょうね。

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