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サービスデザインの原則? 〜わかりやすくイメージしてみよう!(後半)〜

さて、後半です。

前半でも解説してまいりましたが、サービスデザインの基本的な考え方を理解するために効果的な「サービスデザイン思考の5原則」。この難しい言葉たちを、ちょっとでもイメージしやすく理解しやすくするために、改めて捉え直していきたいと思います。

 1.ユーザー中心(User-Centered)
 2.共創(Co-Creative)
 3.インタラクションの連続性(Sequencing)
 4.物的証拠(Evidencing)
 5.ホリスティック(Holistic)
_______サービスデザイン思考の5原則

「ユーザー中心」と「共創」については、サービスデザインの原則? 〜わかりやすくイメージしてみよう!(前半)〜をご覧ください。

その3:「流れる時間と相互作用を意識しよう」

3つめは、インタラクションの連続性(Sequencing)の原則です。

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これは、カスタマーの体験には時間が流れ、すべての行動・思考は連なり影響しあっている、ということを意識しましょう、という原則です。

人間が、自分の体験を捉える時、あまり、どの時点から始まりどこで終わるのか?意識することはありません。「家に帰るまでが遠足です。」と、終着点を決める場合もありますが、実は、遠足から帰ってきた家の中では、家族と思い出を共有し、ベッドの上では思い出にふけっていたりします。そんな風に、体験は小さな行動や思考が連なり合って、大きなまとまりとして存在します。とても自然で有機的な姿です。

しかし、サービスを創るという立場になった時、ついつい、その「連なり続いていく感覚」を忘れてしまいがちです。なぜなら、大きなものをつくるより、課題を分割して、逐次解決しちゃった方が手っ取り早いし、機能別/メディア別に対応しちゃった方が、めちゃくちゃ楽だから。そもそも、製作、管理している組織が縦割りだから、横串で体験を捉え、うまく連結させていくことは至難の技なのかもしれません。。。

しかし、カスタマーの体験は、行動の連結ではなく、ゆるやかに変化する文脈の中で、成長しながら思考する「人間」が主体です。当たり前ですが。人間ですもの。最初に印象が悪かったものは次には警戒しますし、数回やっているものは省略したいと思います。自分が失敗したら次はうまくやりたいし、楽しかった経験は大切な思い出となって、価値観を大きく変えていきます。

だからこそ、しっかりとカスタマーの視点で、体験の流れを捉え、それらの相互作用を意識することが必要となるのです。しかも、有機的な状態で

時間の流れを意識しよう、だけでは不十分。
相互作用を意識しよう、だけでも不十分。
両方必要だから、「インタラクション」の「連続性」を意識しましょう、という原則なのですね。

その4:「舞台裏の見せ方を工夫しよう」

物的証拠(Evidencing)の原則。理解しやすく大幅に表現を変えてみました。

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カスタマーに興味を持ってもらうために、サービスの舞台裏で行われていることをどこまで見せるべきか?どうやって見せるべきか?その情報の見せ方を工夫しよう、という原則です。

この5つの原則の中で一番難解な、この「物的証拠」。「なぜ、証拠が必要なんだ?」と思う方も多いでしょう。この記事を書いている私も、実はこれまで半信半疑にこの原則を捉えていました。せっかくの機会なので「This Is Service Design Thinking」の英文の原作を読みかえし、本質的な意味を捉えます。

“サービス”は、カスタマーの目につかない場所で、多くの人が支えています。さまざまな作業をしたり、工夫をしたり。問題が起きても、カスタマーに一切気づかれないように処理されていきます。血の滲むような苦労もあるでしょう。その、舞台裏の活動の様子を、カスタマーに見せるべきか?伏せておくべきか?この問いの答えを考えるのも、サービスデザインのが担う役割の1つです。

例えて考えてみましょう。高級レストランで料理をオーダーする時、「このじゃがいもは、こんな困難を乗り越えてつくられた奇跡のじゃがいもです。」という説明をされたら、そのストーリーがスパイスとなり、料理が美味しく感じるかもしれません。しかし、こうだったらどうでしょう?「このじゃがいもを作る時に用いられた、肥料の証明書リストです。安心してお召し上がれます。」せっかく美味しいものを食べようとしてる時に、ちょっと興ざめしちゃうと思いませんか?

一歩間違えば、押し付けがましい、迷惑な情報になりかねない舞台裏の情報。その情報は、その体験において、価値を向上させているのか?その情報の見せ方は最適か? 判断し、工夫し、「物的な証拠」=(目に見える物)をつくり、体験を演出していく必要があるのです。

その5.「壮大な世界を捉え、創造しよう!」

さて最後です。ホリスティック(Holistic)の原則。

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サービスデザインの対象は、カスタマーの体験だけでなく、サービス提供のしくみやオペレーション、それを実現するための関係者の生態系に及びます。壮大です。その壮大な世界を創造していくために、視野を広くもち、全体像を包括して捉えていこう、という原則です。

この考え方をより深く理解するために、「ホリスティック」という言葉の意味について、紐解いていきましょう。

「Holistic(ホリスティック)」という言葉は、最適な日本語訳が存在しないそうですが、その考え方は、東洋の思想に深く根ざしたものであるとも言われています。また、哲学用語である「Holism(ホーリズム)」のような物、と表現する際に使われています。

Holism(ホーリズム):
全体とは部分の総和以上のなにかであり、
全体を部分や要素に還元することはできない、とする考え。
(全体論と訳すこともある)

まさに、サービスデザインの原則その3で説明したように、課題分割をして統合しても、1つの大きな体験にはならない、というのと同じ意味ですね。それぞれの個別の要素が有機的につながり合い、作用し合っているからこそ、全体像をとらえ、それらの存在そのものを捉えていく必要がある、というサービスデザインの本質を表した考え方だと思いました。

5つの原則がもたらしたものは?

さて、サービスデザイン5つの原則を、具体的に、より柔らかく、イメージして参りました。いかがでしたでしょうか。

サービスデザインの世界を開く鍵
1.主人公はカスタマー
2.個性が違う仲間を集めて力を借りよう
3.流れる時間と相互作用を意識しよう
4.舞台裏の見せ方を工夫しよう
5.壮大な世界を捉え、創造しよう

原則というと、これさえ守っていればOK?っていう感じがしてしまいますが、とんでもない。考えてみると本当に奥が深かった〜!分かった気にならずに「なぜそれが大事なのか?」を問い、深ぼることで、多くの発見がありました。この原則は、いわば「サービスデザインの世界を開くための鍵」だったのかもしれません。

ここまで読んでいただいたみなさん。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
サービスデザインの世界を開く鍵は、あなたの手の中に!

(三澤)

注)5つの原則の解釈について、本ブログでは「This Is Service Design Thinking」の正しい解釈をしてものではありません。サービスデザインをわかりやすく、取り入れやすくするために、発展的に解釈をしています。

関連リンク:
サービスデザインの原則? 〜わかりやすくイメージしてみよう!(前半)〜
「サービスデザイン」とは何か 〜チャレンジするための再定義〜

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