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【映画】『グリッドマン ユニバース』別れの言葉を言える優しい世界

「さよならって、なに?」
「そうね…また会うための おまじない?」

シン・エヴァンゲリオン劇中セリフより


『グリッドマン ユニバース』
を観ました。『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』を繋ぐマルチバースなお祭り映画。

両作品に存在した、消化不良というか、語り切れなかったものをこの映画でやり切るというものすごい熱量。2作品を一緒の世界にまとめるとか余計にカオスになるのでは?と思ったが全然そんなことなく、ファンが望んでいるものを全部盛りした特上大盛映像作品に仕上がっていた。
それでありながら、とても真摯で真面目な作品だと感じた。それは「別れ」シーンの描き方が非常に丁寧だと感じたからだ。
一応ネタバレ注意。観てない方は早く劇場に観に行きなさいな。







蓬とガウマ/義兄弟との別れ

『SSSS.DYNAZENON』本編では、最後の戦いの際にガウマは力尽きるようにに蓬たちの前からいなくなった。別れの言葉を言うヒマも無く。
そして今回の映画でいざ目の前に現れると、蓬はこれまで積み重なった心積もりを放とうとするも上手く言葉にできないシーンが、いかにも蓬らしい…というか男ってこんな感じだよねって質感がものすごく良い。ガウマもガウマで弟分が話してくれるのをただ耳を傾けるしぐさなのが良い。

ラストもそこまで多く言葉を交わすのではなく、本編でもキーワードとして出ていた「人として守らなきゃいけない3つのこと」を確認しあうだけ。

不器用で、言葉少なで、けれど強い絆を再確認する。男同士の別れ際って感じで非常に良い。

ひめとガウマ/想い人からの遺書

本編で出なかった…けっきょく会うことは叶わなかった「ひめ」との思いがけない再会。…いや北海道物産展で出会うなんて誰が予想できただろうか。ここでもガウマはただあふれる感情に上手く声が出ずうつむく。それを明るく励ますようにカニを薦めるひめ。なんだか観ているこちらも白昼夢を見ているような不思議なシーンだった。
実は生きてた、なんてことはなく、ラストに二人が出会うことは無い。だけど、領収証の裏に「いつまでも過去を見てないで前を向け(文言ちょっとあやふや)」と書かれていることに気づくガウマ。遺書、それは悲しいモノだけど、その約束と胸に、ガウマは新世紀中学生のレックスとして戦うことを決意する。別れが新たなヒーローを誕生させる。

画像はオーイシマサヨシ - uni-verse [Official Video]より

アンチとアカネ/親と子の別れ

子が親に「生んでくれてありがとう」と感謝を述べる別れ。アンチを生み出したことに負い目を感じてたのに、「ありがとう」と言ってくれた嬉しさに言葉を出さずに、ただアンチの頭をクシャクシャと撫でまわす。親が子を褒めるように。アンチが成長した姿で『SSSS.DYNAZENON』で怪獣から人々を守るナイトとしての活躍を観ているからこそ、このシーンの破壊力は絶大だった…!

画像はオーイシマサヨシ - uni-verse [Official Video]より

アカネと六花/親友との別れ

本編では既に別れの挨拶を済ませている。そのため、お互い次に会うことを考えていない。会えば、あの時の決意は揺らぐから。だから何も言わずに手だけ触れて終える。それだけで分かり合える。親友だから。

画像はYoutube ノンクレジットED/ 内田真礼 - youthful beautiful より

裕太とグリッドマン/異種族との友情

本来出会うはずもない、半ば事故によって出会った違う種。なればこそ、繋がった記憶や時間は残るべきではない。だから共に過ごした記憶は消去された。
だが、一度繋がりをもってしまった以上、縁を反故にはできない。縁ができて、それが嫌じゃないなら、記憶を消すなんて寂しいこと言うなよ、と繋がりを持ち続けることを選び、別れる。ピンチになったら協力することを約束して。違う存在だとしても、友達になれるのだ。

グリッドマン ユニバース【GRIDMAN UNIVERSE】本予告より

お別れの言葉が言える世界は優しい世界

喧嘩別れ、集まる機会がなくいつの間にか疎遠、カネの切れ目で縁が切れる。もしくは、突然の死。
思いのほか、人生では「さよなら」を交わすことなく人と別れる。

人に限らずコンテンツとも、突然のサ終で二度と会えなくなることも。Twitterが唐突に終わってしまったら連絡を取るのも難しいフォロワーも沢山いる。

『グリッドマンユニバース』は別れ際に言葉を、あるいは想いを交わすシーンをそれぞれ用意した。それも2時間という短い映画の尺で。

それは、どんなに世界が広がって繋がっても、いつか別れる日が来るという世界のルールに厳粛だからだ。『SSSS.GRIDMAN』でも新条アカネがあの世界に留まったりいつでも往来できることを良しとせずに線引きをさせたことも、あの世界には守るべきルールのようなものが存在しているのだろう。

けれど、別れを交わせば、それがお互いを繋ぐ約束となって縁になり、いつかまた出会えるキッカケになる。その可能性がきっとまた新たな宇宙«ユニバース»を生むかもしれない。たとえ出会えなくても、あのとき交わした言葉が、顔を上げて前に進み新たな宇宙«ユニバース»へ旅立つ原動力になる。そんな別れの儀式をするための物語だったのだ。

我々が住む現実«リアル»では、別れの言葉をこんな風にキレイに言わないし、言えない。けれどグリッドマンの世界はそうではない。グリッドマンの作った宇宙は優しい世界だから。それは「都合の良い」という意味の「優しい世界」ではなく、別れも世界の一部と全力で肯定することなのだ。


……というより、『SSSS.GRIDMAN』の時点で、そういうことを新条アカネで描いてたんだと、ようやく理解できた。

画像:オーイシマサヨシ - uni-verse [Official Video]
画像はオーイシマサヨシ - uni-verse [Official Video]より

ずいぶん時間がかかってしまったけど、おかげで心がスッキリしたよ。ありがとうグリッドマン。

画像はグリッドマン ユニバース【GRIDMAN UNIVERSE】本予告より









余談という名の余計な一言。

鑑賞中の2割くらい「宝多六花 脚 太っ…」って言ってた。












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