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或る「小倉日記」伝 傑作短編集(一) 松本清張著

平成29年9月80刷  新潮文庫
 
 この本に納められている12の短編は、いずれも男と女の愛憎や執着、下積みから這い上がろうともがく人々の姿が描かれている。
 僕が手に取ったのは、「断碑」「笛壺」「石の骨」などの考古学を舞台とする短編を読みたいと思ったからだ。考古学ほどアマチュアと学閥が拮抗し、時にはアマチュアが以前の学説を覆してしまうような学問はないだろう。それだけに、功を焦り、嫉妬に振り回されることがあるようだ。
 他にも鴎外の事績調査に生涯をかける薄幸の息子とそれを支える母、潜む”何か”を持ちがなら売れない画家とその絵を利用する画商などをサスペンス混じりの鋭い語り口で綴っている。
 あまり好んで読むことのない作家だったが、さすが、松本清張。

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