エレーヌ・カレール=ダンコース『未完のロシア 10世紀から今日まで』

歴史学者・国際政治学者のエレーヌ・カレール=ダンコース女史の『未完のロシア 10世紀から今日まで』を読みました。



冒頭で、ソ連崩壊後に方向性を見失ったロシアの姿を書き、その後、「タタールのくびき」と呼ばれるモンゴル帝国の支配の時代から、最後の皇帝ニコライ2世の治世の終わりまで、西洋諸国並みの「自由」「民主主義」を獲得するべく歩んできたのロシアの歴史を述べています。

結論という最終章に書かれている筆者の言葉が、西洋化という観点でのロシアの歴史を一言で要約してくれています。
「これほど苦難に満ちた国の歴史をいかに読むべきか?絶えずヨーロッパへ、近代化へ向かおうと努力を傾け、その目的が達成されようとしたまさにそのとき逆戻りを強いられ、挫折の悲哀をかみしめさせられたロシアという国の歴史を?」

筆者は、近代化という点で、アレクサンドル2世を高く評価し、また、ロシアの味わった2回の破壊的打撃を、モンゴル人支配とボリシェビキ革命と述べています。

レーニンの政策で歴史に逆行する例として2点あげています。
1つは、農奴解放令以来、土地所有の回復へと向かっていた農民を、生産性向上のために共同体にしばりつけて様々な権利を否定し実質「農奴」の状態にしたこと。
もう1つは、ニコライ2世の治世に議会(ドゥーマ)が定着しましたが、普通選挙でボリシェビキの得票が少なかったために、普通選挙で選ばれた議会を無理やり廃止に追い込んだこと(専制君主ニコライ2世でもこんなことはしなかった)。

ロシアの歴史に関する本はこれが初めてでしたが、休み休みなんとか読み終えることができました。
ロシアの農民の頑なさや放浪癖が何度も出てきますが、この気質をプラスに捉えることってできないのかなーと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?