僕自身のrootとrouteの物語 第3話 「ふるさとはふるさとでなかった」
古家 淳
第2話「移動しながら育つ」はこちら
僕らが新たに住むことになったのは横浜市内の社宅だった。メキシコに行く前、5年半前に住んでいた川崎の社宅と大した違いはない。僕は幸運にも評判の高い高校に入学することができたが、通学するためにはひとりで電車に乗っていかなくてはならない。9歳までしか日本にいなかったので、生まれて初めてのことだ。出札口で(当時は自動販売機がなく、駅員さんに口で頼んで)切符を買い、行き先の方向を間違えずに電車に乗り、さらに車内でのマナーを守らなければなら