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2023年10月に読んでよかった本

涼しくなってきてようやく意識が戻り、本をまともによむ時間が増えた。
週報に漏れてしまったけど、やっぱりよかった本を3冊紹介しつつ、己の振り返りにしてみる。

①スマホ時代の哲学/谷川嘉浩

戸谷洋さんの本『SNS時代の哲学』を読んだときにたしか紹介されていて、読みはじめた。森優さんのイラストがポップで親しみやすい。

孤独・趣味といったキーワードの解釈を通じて、常時接続された現代でうつろうつろしている状況を脱する方向を示してくれる本。
エヴァンゲリオンや燃えよドラゴンの1シーンを引用したりして、哲学なのにポップでとっつきやすい。

結論づけず、モヤモヤした状態で留めておく能力=ネガティブ・ケイパビリティ についての論考が印象に残っている。一気にスッキリさせずに、時間をかけて消化していくほうがよいことが世の中にはいっぱい忍んでいて、わたしたちは折り合いをつけてながら生き続ける。その折り合いのなかには、わたしごと化しないことも方法としてある。

誰かの経験をその人の視点から理解したいと望むとき、安易な説明に意味づけに回収せずに、不確実性や疑念の状態に耐えなければならないのです。謎(他者)を安易に「自分のわかる範囲」に回収しない能力だということなので、ネガティブ・ケイパビリティは自己対話を成り立たせている能力だといえます。

「ネガティブ・ケイパビリティ」という単語が、今年3回目の登場を果たして、わが人生の頻出単語になりそう。
(1回目は、レベッカ・ソルニット『暗闇の中の希望』、2回目はユリイカのヤマシタトモコ特集号)


②カラフル/森絵都

uchida_momoさんの記事を見て、図書館にダッシュした。
(そしてこの読書記録のアイデアも拝借しました。この場でありがとうございます!)

小学校時代に母が読んでいたのを借りて読んだ気がする。なんとなくあらすじだけ覚えていた状態で再読した。もともと読みやすいし、なにより引き込まれたので、2日間ぐらいで読んでしまった。

子供の時には気づかなかった(意識していなかった)、言い回し、風景描写、比喩といった、文章としてのおもしろさの連続にいちいち唸ってしまった。

悪いことというのは、いきなり襲いかかるようでいて、ほんとうのところ、見えないところでじつに周到に用意されているものである。

ぼくはその場でしばらくのあいだ、まるで三球三振のバッターのように立ちつくしてから、やがてようやくきびすを返して、とぼとぼと部屋にもどっていった。

ネガティブをしっかりネガティブに受け止め、だけどユーモアに語るのが、とても心強かった。ネガティブ・ケイパビリティを養う場面が物語にはたくさんある。

読み終わってからは、森絵都さんの旅エッセイ本『屋久島ジュウソウ』を少し読み進めている。日記本の要素が強くてこちらもおもしろい。(本人も『富士日記』を真似したと言及していた)


③ここちよさの建築/光嶋裕介

みんな大好き、学びのきほんシリーズ。文庫本や新書が最近値上げしてるなか、お手頃な値段で入門できるのがうれしい。といいつつ、夏前に買っていたのだけど、読まずに時は過ぎていた。
10月になって、友人邸に行ったり、DIYをしたり、心地よい空間を考えたりとしていたときに、存在を思い出して読みだした。読み時にまだあってよかった。

変化する自分なりのここちよさを頼りに、ありのままの身体を通じて外の環境との相互作用を楽しむ。

「変化する自分」という部分に今回引っかかった。
年月、ともすれば数時間の体験によって自分の趣向は変わる。その変化していることを気づく。そうすることで、自分にとってのここちよい建築へのよりよいアップデート(整理や片付け、DIY)できるのではないかと思う。


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