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わずか2時間で1,700食完売…!イベント「島根イタリー」に集まった人と魚と情熱【地域活性化起業人 活動報告 #03】

ぐるなびは、食文化振興や観光振興などによる地域活性化に貢献すべく、2021年より総務省による「企業人材派遣制度」を活用し、当社社員を“地域活性化起業人”として全国各地に派遣。地方自治体との連携のもと、ぐるなびの持つ事業インフラやノウハウを活かした地域独自の魅力・価値の向上に取り組んでいます。
今回は、島根県浜田市にて業務に従事する西田一平より、活動報告をいたします。


はじめに

皆さん、こんにちは!2022年8月に島根県浜田市に移住をした株式会社ぐるなびの西田一平と申します。私は2010年4月新卒でぐるなびに入社し、東京で6年、愛媛で1年半、広島で3年半と勤務地を変えながらも、飲食店の皆さまを支援する営業部に11年在籍した後、部署異動で再び東京へ戻ったのですが、帰京し1年が経ようとしていた時、大きな転機が訪れたのです。

それは、2022年1月のこと。
「島根県浜田市へ地域活性化起業人(きぎょうじん)として行ってみないか?」と隣の部署の上司から声がかかったのでした。突然の打診ではありましたが、「中四国エリア」に強い思い入れがあったことから、私は迷うことなく「行きたい!行きます!」と二つ返事で承諾したのです。(これぞ「サラリーマンの鑑」?)

東京と浜田市を往復する2拠点での生活も可能でしたが、私の中では「東京にいる意味はない!本気を出して、浜田市に骨を埋める覚悟で行くんだ!」と明確な答えが出ていました。そしてすぐさま行動。東京の自宅を解約し、移住に向けて浜田市の物件探しを始めたのでした。

浜田市に移住、そして新たな挑戦!

2022年7月15日に行われた連携協定締結式の模様(写真左:浜田市市長の久保田章市氏)

広島から浜田市までは車で約1時間半。決して遠くはない距離ですが、広島営業所在籍時に浜田市を訪問したことはなく、自分にとっては「未開の地」でした。今となっては大変失礼ですが、ただ漠然と「田舎なんだろうな~」と勝手に思いこんでいました。

浜田市の人口は約5万人。日本海に面し、島根県内最大の漁獲高を誇る浜田漁港があり漁業が盛んなことから、スーパーには当たり前のように新鮮な魚が並んでいます。また、かつて城下町として栄えた歴史を感じさせる街並みを楽しめる一方、お馴染みのファストフード店や雑貨店などもあり、非常に整った生活環境を目の当たりにし、引っ越す前に抱いていた不安が一瞬で払拭したのはもちろんのこと、感動すら覚えたほどです。

そしていよいよ地域活性化起業人として活動すべく、2022年8月から浜田市役所観光交流課での業務を開始しました。新たな職場では自席も用意されており、この上ない環境のもと「地域の活性化」を目的とした業務に着手。ぐるなびに在籍しながら、これまで経験のない「市役所の一員」として働くことは、まるで転職したかのような貴重な体験であり、とても新鮮なものでした。

念願の食イベント企画が始動

浜田市での生活にも慣れてきた11月頃、広島営業所時代から親交のあった島根県の飲食店オーナーさんと再会する機会を得て、楽しく美味しく食事を共にしていたところ、このような会話に発展したのです。

オーナー:「なにか食のイベントやりたいよね。浜田市でやってみない?」
私 :「一度、市役所に打診し、実現可能か聞いてみますね!」

その時点では、お酒の席での会話のひとつだったのですが「なんだか面白そうな予感!このアイデアを逃す手はない!」と、翌日即座に行動に移したところ、なんとその翌週には2023年5月21日にイベントを開催することが決定したのです!

とは言え、決定したのは日取りだけ。実際には、参加いただく店舗や調理器具などの機材確保の手段、そして最も重要な費用をどうやって捻出するのかなど、具体的な方法や段取りは何も決まっておらず、目の前には多くの課題が山積みの状態でした。

人気イタリア料理店のシェフが集結!

「島根イタリー」参加のシェフの皆さん

今の時代「食イベント」はあちらこちらで開催されている中、"浜田らしさ”を出すために何ができるのか?検討に検討を重ねた結果、最終的に辿り着いた企画が「島根イタリー」です。

それは、島根県産食材の消費拡大と飲食業界を盛り上げることを目的に、県内で活躍するイタリア料理のシェフを浜田市に招聘し、それぞれ2種類のメニューを提供していただこうという試み。県内の人気店が集結するという話題性もあり、この地でしか味わえないという意味を込めて「島根イタリー」と名付けました。さらに、考案いただく2種のメニューのうち、必ず1つに浜田市の特産である鮮魚を使用いただくことにしました。

【ご協力いただきありがとうございました!】
島根県津和野町  ピノロッソ        赤松 健二シェフ
島根県益田市   イタリア料理 Ruru    石川 慎哉シェフ
島根県松江市   オマッジオ ダ コニシ     小西 達也シェフ
島根県出雲市   trattoria814             前道 竜二シェフ
島根県江津市   トラットリア キツツキ       大原 智恵子シェフ
島根県邑南町   里山イタリアンAJIKURA     田村 弘志シェフ

島根県内のイタリア料理を提供する6店舗が参加し、オリジナルメニューを提供

会場の選定、シェフへの打診に運営方法、提供メニュー、開催に必要な設備機器の収集など、やらなければならないことだらけの状態の中、開催日となる5月から逆算をしながら、一歩一歩着実に準備を進めていったのですが、最大の難関にぶち当たったのです。それはなんと今回のイベントの最重要ポイントである"浜田らしさ”を出すために使用する浜田特産の鮮魚の確保でした。資金が潤沢にある訳ではなく、限られた予算の中でイベントを成功させるには、鮮魚を扱う業者の方々の協賛を得ることが必須でした。

そこで浜田市内の鮮魚店さんを回り相談をさせてもらったところ、トントン拍子で快諾いただくことは難しく、「何のために開催するのか」「どんなシェフがメニュー提供するのか」などイベント開催に秘めた想いや目的などを詳細にお伝えしながら、ご協力を募る日々が続きました。鮮魚店巡りを開始した頃はイベントに対し懐疑的な業者さんが多くいましたが、地道な活動の甲斐あってなんとか協賛いただける鮮魚店さんを見つけることができたのです。

少しここで、協賛獲得までの道のりで発生した苦い失敗談をお聞きください……。
それは、イベント協賛活動をはじめる10日程前のこと。依頼予定であった鮮魚店のオーナーさんにある誤解を抱かせてしまい、協賛の相談どころか鮮魚店への出入り禁止まで言い渡される事態になってしまったのです。「まずい。このままだと協賛は得られえず、イベント自体がなくなってしまう。完全に私のせいだ……。」と深い反省と強い焦燥感に苛まれ、居ても立ってもいられない状況に陥りました。

誤解を解くためには「直接お会いし、話を聞いてもらうほかない」。導きだした答えは一つでした。毎日足を運び、5日ほどたった頃、少しずつではありましたが、誤解が解けてきたと感じた私は思い切って「今、『島根イタリー』という浜田市を盛り上げるための食イベントを企画しています。浜田の魚をもっと多くの人に知ってもらうため、協賛いただけないでしょうか!」とシンプルに想いを伝えたところ、「なんだ。次はそんな話か。浜田の魚か。いいぞ!協力してやってもいい!」と思いがけない答えが返ってきたのです。

営業マン時代に培った「頭を下げながらも言いたいことを伝える」という、自分自身の経験が生かされた瞬間でした。今思い返すと、この行動が失敗していたらどうするつもりだったのかと少し背筋が寒くなる一方、リスクを恐れて行動しないよりも前を向いて進んだことで、鮮魚店のオーナーもまた「浜田の魚の美味しさをもっと多くの人に伝えたい」という熱い想いを持たれていることに気づくことができたのです。

協賛に理解を示していただいたことに嬉しさがこみ上げ、「なんて神様みたいな鮮魚店さんなんだ!浜田の魅力をもっと多くの人に伝えるという期待に全力でこたえたい!」と、イベント準備を加速度的に進めていきました。

いよいよ迎えたイベント当日

はまだお魚市場・駐車場テントスペースを会場に開催

シェフとのメニューの打ち合わせや会場設備の業者さんとの調整など、開催日までは目が回るほど慌ただしく、何度も会場に足を運び、現場をこの目で確認しながら出店ブースやマルシェ(青空市)の設置場所など、完成イメージを膨らまし、無事この日を迎えたのです。

会場には野菜やお酒を販売するマルシェも設置

当日提供するメニュー以外にも「お酒」や「野菜」を販売してもらうマルシェ出店事業者さんとも出店交渉が成立し、買い物なども楽しめるブースを無事確保。一緒に会場準備を手伝ってくれた市役所の職員さんもコロナの影響で本格的なイベントは4年ぶりとのこと。慣れない現場で手探りではありましたが、会場を整えるために必要なテントやカラーコーンの設置など、前日の準備にも10名ほどにご協力いただきました。

当日は朝6時から作業を開始し、厨房や客席を設営。イタリアンカラーのテントやのぼりが会場に彩りを添え、「なんかイタリアの雰囲気出てきた~!」「食イベントの雰囲気出てきた~!」と参加者のボルテージが一気に上がりました。

チケット販売開始までに長い行列が

チケットの販売開始時刻は10時45分だったのですが、10時前にはなんと一番乗りのお客様の姿が。その後も続々と会場に到着するお客様を眺めながら、「こんなに楽しみにしてくれていたなんて嬉しいな~」と呑気に構えていると、10時30分の時点で行列が200名を超えたと報告が入りました。

料理を提供するシェフの前には行列が絶えず

来場数について当初は300名から500名程と考えていたところ、このペースだと想定を上回り料理が足りなくなってしまう恐れが……。さらに、ありがたいことにオープン直後から大勢の方に来場いただいたことから、料理の提供が進まずブース前の行列が増すばかり……。「シェフ頑張れ!お客様もう少し辛抱を!」とエールを送りながら、気持ちが落ち着かないまま、私にとってイベント最大の大役とも言うべきその時がきたのです。実はなんと会場に設けたステージ上での司会進行を任せていただいていたのです。

久保田市長に試食いただきながら料理を紹介

今回のイベントの趣旨紹介に加え、浜田市の久保田市長にもご登壇頂き、鮮魚をはじめとする浜田の美味しい食材をPRするトークセッションを開催しました。市長には試食にも参加いただき、料理の感想を伺ったのですが、慣れない司会ということ、また本格的なイタリア料理ということもありメニュー名を読み上げるだけでも一苦労でした。

島根産にこだわった食材で作った本格的なイタリア料理が並んだ

ステージでのイベントが終わるころには、料理提供が進み行列も解消。会場は笑顔で食事を楽しまれる方々の笑顔で溢れかえっていました。

お客様が会場を埋め尽くし、満席状態に

チケット販売開始からわずか2時間ほどで、用意していた約1,700食が完売。想定を遥かに超える約1,000名にご来場いただき、市役所の関係者や参加シェフの誰もが驚くべき結果を出すイベントとなりました。

予定よりも早く、すべてのメニューがなくなりお客様からは「食べられなかった~、残念」。また「このような本格的な食イベントが浜田にはなかった」「美味しい楽しい」と高い評価を頂き、参加したシェフからも「シェフ同士の交流ができる良い機会だった」「生産者、業者ともつながれた」「こんな大勢の前で料理する機会はなかなかない」と嬉しいコメントをたくさんいただきました。

さらに、今回のイベントに貴重な魚をご提供いただいた協賛生産者から「すごい人数が来て驚いた」「シェフと交流できて良かった」「魚のイベントでこれだけ知ってもらえたら立派」。そして「次からも絶対に協力する」
と大変心強い言葉をいただけました。
開催までの皆の努力が報われた瞬間でした。

市役所の担当者からも「食イベントに関しては過去ナンバーワン」「魚を使って、地域活性ができた」「今回の実績を踏まえ、今後につながっていく」とイベントの成功を称賛いただくことができ、なんと2回目の開催についても、11月12日(日)開催することが決まりました!今回同様、人気イベントになることが予想されますので、ぜひ、早めのご来場をご検討いただければと思います。皆さんに会場でお会いするのを楽しみにしています!


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