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【引越しツバキ 2】

2人は無職で転居し、求職活動を始めるが先に就職したのは椿だった。
今回の職場でも同僚と仲良くなり、やがて永く付き合える友人もできた。

始めは今いる県の隣県、そしてまた隣県…それを繰り返し、椿は地元の友人とも疎遠になっていた。
1年という丁度いろいろと慣れてきたところで、その土地で親しくしてきた同僚や友人とも別れを繰り返してきた。

椿は寂しがりの探究者だ。
自分の思考に対する視野を拡げたいが為に、様々な人の意見や思考を知りたいという欲がある。
だから、椿は友人と過ごす時間もしっかり確保したい。
ただし、桂介からは愛される存在でもありたい。
椿にとって桂介は大切な人だが、それが全てではなかった。

こんな椿を桂介はしっかり愛していた。
楽しそうに話すその姿は好感が持てるし、何より笑顔だったからだ。

同じく桂介も就職をするも、こちらは不安定であった。
椿より少し遅れて、はじめに入社した会社は今までの職種とは異なり、製造の工場での勤務。
黙々と働く説明ベタな社員が多く、初めての仕事に桂介は研修期間である程度のノウハウを習得することが出来なかった。
年下の社員に「なんで出来ないの」「もうやらなくていい」と言われる日々を過ごしていた。

やがて桂介は、落ち込みながらタメ息まじりの「ただいま」を言うになった。
桂介にも同期の同僚がいたが、みんな声を揃えて「僕は、長く続ける自信はない。」と、話していた。
桂介は同期の中でも年長だった為、強がって励ますも内心は同じ気持ちだった。

うなだれて帰宅する桂介の姿に椿は胸を痛めた。
「…大丈夫?仕事ムリして続けなくとも良いよ?」
こんな桂介の姿が見たくて、引っ越した訳ではない。
このままでは、桂介は最悪…心の病気になるかもしれない。
桂介の気持ちが軽くなるようにと、甘い言葉をこぼす椿。
「私が頑張って働くから、桂さんはムリしなくてもいいんだよ?」

そうして四苦八苦するも桂介は 1年もたたず退社し、再びふりだしに戻った桂介。
「お疲れ様。少し休んで、また探せばいいよ。」
「うん…そうする。」
椿は桂介の疲れた心身が、また元気になれば大丈夫だと気丈に振舞った。

しかし、その後…桂介は数ヶ月後に営業職につくも、今度は上司のパワハラにあうのだった。

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