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さっぱりとしたつきあいを好む友人

ことし初めての“秋”は日曜日にやってきた。数日前までの暑さと湿気が嘘のようだ。

長らく借りたままになっていた本を返すため、墨田川の河口ちかくの地下鉄駅で友人と待ち合わせる。

彼女からのメッセージには、焼き菓子を持っていきますと書かれていた。そこで僕は、あらかじめ水筒にコーヒーを入れて持っていく。

1980年代にはじまるウォーターフロント再開発もひと足先に片づいたこのエリアでは、水辺のあちらこちらに腰をおろしてのんびり過ごせる場所が整備されている。つまり、お天気次第でそこは絶好の“オープンカフェ”に早変わりするのだ。

周囲にはタワーマンションが林立しているとはいえ、住民はだれも地上には降りてこない。こんな景色、もう見飽きてしまったのだろう。ランニングで汗を流す中年の男たちや家族連れがちらほら通り過ぎるくらいだ。

これが日曜午後の銀座や渋谷、あるいは新宿といった繁華街なら、行列せずに済むカフェを探すだけで疲れ果ててしまうにちがいない。

水面を渡る風に吹かれて小一時間を過ごしたのち、しばらく散策をして友人とは別れた。

じゃあ、また。さようなら。

友人の数はけっして多いとはいえないが、こうしたさっぱりとしたつきあいを好む人たちが身近にいることを僕はとても幸運に思う。

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