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自分のルーツとタール砂漠の眠れぬ夜

【海外写真放浪記】 INDIA 12  ジャイサルメール

ツアーのジープは宿の前で僕だけを載せ走り始める。どうやらこのツアーには僕しか申し込まなかった様だ。

街の郊外はすぐに砂漠になっているが、想像している砂漠とは違い岩交じりの荒野が広がっている。


この一帯には野良ラクダが居て道路に堂々と横たわったりしているのでスピードを出しすぎるとかなり危険だ。


車を1時間程走らせ、見渡す限り何も無くなった荒野にあばら家が一軒ポツンと姿を見せたのだが、どうやらそこが僕の目的地ロマの家族が住む家だった。

外にはラクダが何頭かと子供が家畜の世話をしていたのだが、やはりカーストの中でも一番下なんだと思わせる生活様式をしていた。

家の中も少し拝見させてもらったのだが、街の暮らしと比べたらだが本当に簡素と言うべきか、最低限の物しかそこには存在しなっかったのだ。


水は井戸水を組み上げ、火は竃で起こして調理をする。


これはどこの国のノマドにも共通する事で、人間これだけあれば生きて行ける。


彼らは多分ブランド物の高級バック一つで一年は軽く暮らせるだろう。その一年の幸せと、ブランドバックの所有欲では雲泥の差があるんじゃ無いかとその時深く考えてしまった。



写真でわかると思うが、家畜の作業もあり服は汚れている。


かつてこの地から桃源郷を求め旅立っていった先祖は500年以上前に世界中に広がって行き成功を納めた者も少なく無いのだが、相当の苦労があったと思う。そして旅立つ事をせずこの地に残った者もまた苦労をし続けているのだ。


突然だが、皆さんは自分のルーツがどこに有るのか明確にご存知だろうか?


僕は20才位の時に一度調べるために、もう檀家を辞めてしまった長野の父親方のお寺へ行ったことがある。

そこには鎌倉時代以前からの家系図が残っていて、僕の先祖は苗字も無い農家だった様だ。


それがこうしてインドを自由に旅をできている不思議。


僕が今こうして旅をしていられるのも先祖の努力。


当たり前だが忘れてはいけないし、できる事があり、やれる事が有る事を大切にしないといけないとロマの家族に会い再確認できた。


いつか人類の始まりの土地が発見されたら訪れてみよう。




このロマの家族が住んでいる場所からはラクダでの移動になる。


この日は本当に僕だけが行くらしく、案内人のパタップと二人で広大な砂漠へと繰り出す事になるのだが、このラクダ、乗り心地が非常によく無い。


上下左右に必ず揺れながら歩くので酔いが凄い。


加えてこれに4時間近く乗るのだから正直最後の方はもう降りたいと思っていた。何せ写真すら撮れないのだ。揺れで。


イメージ的には雄大な砂漠をラクダで優雅に進む様なアラビアンナイト的な感じだと思うが、その半分以下の優雅さなのでこれからラクダツアーへ行かれる方は覚えておいてほしい。



野営地に到着するとようやくラクダから降ろしてもらえ、自由に撮影が可能となった。

タール砂漠はデューンと呼ばれる砂の丘が少ない。勾配が無い分ラクダが歩き易いイメージだった。良く考えれば砂漠なんて地球上に無いほうがいいのだけれど。


そんな砂漠で事件は起こる。


僕はツアーなので砂漠といえどテントくらいは有るのかと思っていたのだが、何とパタップが持ってきたのはコタツ用の座布団2枚のみ。


砂漠雑魚寝スタイルだったのだ。


そこまでは良い。


この後雨が降ってきたのだが何とパタップが持ってきた雨避けがビニールシート2枚なのだ。


機材のあった僕は絶対に濡らしたく無いので周りに落ちている木を使い何とか簡易テントを制作してみたのだが、それがこちら



一体インドとパキスタンの国境まで来て何をやっているんだろうと思いながら組み立ててみた。

まぁ何とかなったかと思いパタップの作ってくれた絶品の何か(暗闇で食べたので何かは不明)を食べ、焚き火に当たりながら就寝するのだが


この夜何と落雷を伴う豪雨となる。



砂漠ツアーへ来て雷雨を誰が想像しようか?そして周りは見渡す限り何も無い砂漠。


時計も無いので時間感覚も無いまま滝の様に降る雨と近くに落ちる雷で眠ることも出来ずに何時間も過ごした。


初めの小一時間で僕の力作テントは崩壊し、砂漠→コタツ座布団→僕→ビニールシートという斬新なスタイルで横になる。


この時知ったのだが砂漠は窪地以外では水はけが抜群なのでビニールを掛けてしまえば下が濡れる事はない。


日中の気温は40度を超えているが、夜は寒い上に豪雨の場合極寒となる。


夜通し凍えながらパタップの Im coldを100回以上聞き夜明けを迎えると、ツアー会社のオーナー自らバイクに乗って僕らを助けに来てくれた。


話を聞くとやっぱり尋常じゃなかったらしく、死んだんじゃないかと思って迎えに来そうな。


ずぶ濡れのパタップとラクダを残し、僕はラクダツアーなのにバイクの後ろに跨り砂漠を激走し街へと帰り熱々のシャワーを灼熱の中浴びた。


一生忘れられない砂漠ツアーとなった。




次回 【海外写真放浪記】 INDIA 13  インド最終章


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