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アメリカの看護師国家試験NCLEX-RNが面白い(2)

今回も,NCLEX-RNの問題を紹介していこうと思います.
今回は,「これは,日本と同じだ!」と思った問題を紹介します.

Q. The nurse hears a client calling out for help, hurries down the hallway to the client's room, and finds the client lying on the floor. The nurse performs an assessment, assists the client back to bed, notifies the health care provider of the incident, and completes an incident report. Which statement should the nurse document on the incident report? 
(看護師は患者が助けを求める声を聞き,急いで廊下を進み,患者の部屋に行くと,患者が床に倒れているのを発見した.看護師は,患者の状態をアセスメントして,患者をベッドに戻し,担当医(HCP)にこの出来事を報告し,インシデントレポートを作成します.インシデントレポートに記載すべき内容はどれでしょうか.)

a. The client fell out of bed.
(患者はベッドから落ちた.)
b. The client climbed over the side rails.
(患者はベッド柵を乗り越えた.)
c. The client was found lying on the floor.

(患者が床に倒れているのを発見した.)
d. The client became restless and tried to get out of bed.
(患者は落ち着きがなく,ベッドから出ようとした.)

かつて病棟で勤務していた頃,どうしてもベッドから飛び出したい患者さんとの知恵比べのようなやり取りをした記憶があります.病室をナースステーションの前に変えてみたり,ベッドの片側を病室の壁にくっつけて退路を一つ減らしてみたり,反対側のベッド柵を圧迫感を押さえつつ高くしてみたり….結局は足で稼ぐ頻回ラウンドでカバーしていた記憶があります.筋力も低下していて,自力で体を動かすことも困難なことも多かったのにもかかわらず,ベッド柵は飛び越えていました.人間の底知れぬ力を感じるとともに,心の中では「うちのブブカ」と呼んでいました.(ブブカで年齢がばれそうですね….)

さて,本題に戻ります.
この問題は,インシデントレポートに何を書くか,を問うています.
インシデントレポートには
インシデントに関する事実関係(factual description of the incident)
傷害の有無やその状態(any injuries experienced by the incident)
結果(outcome of the situation)
を記載します.
また,解釈(interpretention)の記載は避けます.

したがって,
a. The client fell out of bed.
(患者はベッドから落ちた.)
→×看護師は「患者が落ちた」ところを見ていない.
b. The client climbed over the side rails.
(患者はベッド柵を乗り越えた.)
→×看護師は「患者がベッド柵を乗り越えた」ところを見ていない.
c. The client was found lying on the floor.

(患者が床に倒れているのを発見した.)
→○事実.実際に看護師が見た状況のみ記載している.
d. The client became restless and tried to get out of bed.
(患者は落ち着きがなく,ベッドから出ようとした.)
→×「患者は落ち着きがなく」は解釈で,「ベッドから出ようとした」も解釈.

よって,解答はcになります.

いかがでしたか.
このように,NCLEX-RNでは日本で学んだことがそのまま使えることも少なくありません.基礎医学関連の問題は万国共通ですし,滴下量計算の問題はやはりここでも出てきます.
何が国際的に常識で重要なのか,コンピテンシーなのか,そんなことを知る上でも興味深い内容だったので紹介させていただきました.

次回は,「なんだって?」と思ったびっくり問題を紹介したいと思います.

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