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2024年2月20日 東京ヤクルトスワローズ西都組キャンプレポート ~投手を中心に見た vsエイジェック戦~

こんばんは。中藤練です。
2/20のヤクルトスワローズ西都組キャンプレポートです。

宮崎空港で食べた鶏の炭火焼

この記事を投稿する三日前に宮崎から帰ってきたのですが、すでに西都の地が恋しくなっています。西都は飯よし、温泉よし、名所よしの素晴らしい場所でした。もっと西都に訪問するヤクルトスワローズファンを増やすべく、別途noteに西都のおすすめスポットを紹介する記事を書こうと思いますので、そちらも公開されたら見ていただけますと幸いです。

さて、2/20に西都原運動公園野球場では、東京ヤクルトスワローズの西都組とエイジェック硬式野球部による練習試合が実施されました。
結果は、ご存じの方が多いと思いますが、8-0でエイジェック硬式野球部が完封勝ちをおさめています。

試合終了時のスコアボード

18日からの3日間、西都組のキャンプを見てきて、今回の練習試合の結果があまり芳しくなかったことは大変残念ではありますが、まだ公式戦が始まるまでに時間はありますし、この西都でのキャンプ期間も残っているので、この試合で出た課題をしっかり修正して、シーズンでは各選手が自分のもてる力をフルに発揮できるよう、願っております。

さて、今回のnoteでは、試合中に私がXに投稿していたポストと、イージースポーツの試合中継を参考にしながら、主に投手の投球を中心に、この試合を振り返っていこうと思います。

※記事内で2/20の試合で各選手が投げた球種割合が出てきますが、これは筆者がイージースポーツでの見逃し配信を見たうえで、筆者が記録してきた球速記録を参照し、「この曲がりでこの球速ならこの球種だろう」と独自で判断したものです。そのため、スポーツナビの野球速報並みの精度はありません。なんなら途中、球種判定を諦めているところがありますし、誤っている可能性があることをご承知のうえ、寛大な心をもって読み進めていただけますと幸いです。



① 金久保優斗 投手

東京ヤクルトスワローズの先発の金久保投手は、2回を投げて被安打0、3つの三振を奪う好投を見せてくれました。
この日の金久保投手の球種の割合は以下の通りとなります。

筆者の独自集計なので実際とは異なる場合があります
「だいたいこんなものだったのか」程度で見てください

各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(ストレートのみMAXも記載)

投球の割合の半分をストレートが占め、MAXも145、球速のアベレージも143.1と、この時期にしてみればかなり状態良く投げることができているようです。
また、金久保投手といえば、2021年に活躍したときは球威のあるストレートで相手打者を抑え込むイメージでしたが、(※)2022年に更なるレベルアップを求めてシンカーを習得しようとしたところ持ち味の速球が崩れたことがありました。球速が出なくなった当時は多くのスワローズファンを不安にさせたものですが、そこから昨年1年間かけて持ち味の球威を取り戻しつつ、同じ球速帯の中で複数の球種を操る、技巧的な投球スタイルを身につける取り組みをしてきました。
その取り組みは昨年のフェニックスリーグから結果に出始めていて、今回の試合と同じような球種構成でソフトバンク打線を9回途中2失点に抑えています。

(参照:2023年のフェニックスリーグでの金久保の投球についてのあもうさん(https://x.com/swapen_yasuda?s=21&t=NEwyz9slM1bXIS4WQH8CHg)のポスト)
※あもうさん、ありがとうございます!

なお、技巧的な投球スタイルを取り入れたからといって決して「打たせて取る」タイプに変わったわけではなく、この日投げた5つの球種の内、フォーク以外の球種で空振りを取れており、ストレートだけでなく複数の球種で空振りを奪えるスタイルを目指しているというのが正しい表現になるかと思います。

昨年のフェニックスリーグに続き、今年の初実戦でも今のスタイルでいい結果が出たことで、金久保投手もある程度やれる手ごたえを感じているのではないでしょうか。

さらに課題だった制球面についても、この試合では四球を1つも出さず、全投球のうちストライクを取れた割合も65%と改善の兆しが見えております。

今年のオフにSSTCで磨いた元々の強みであるストレートの球威と、この日のような緩急を使った投球が長い回できるようになれば、2021年以上の活躍も夢ではありません。

昨年にフェニックスリーグからの好調を維持している金久保投手が、これからのオープン戦で1軍~1.5軍級のプロの打者相手にどんな投球ができるのか、今から楽しみです。


② 下慎之介 投手

二番手で投げた下投手は、1回を投げて被安打2、与死球2で、1失点の投球でした。
この日の下投手の球種の割合は以下の通りとなります。

筆者の独自集計なので実際とは異なる場合があります
「だいたいこんなものだったのか」程度で見てください

また、各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(ストレートのみMAXも記載)

下投手の2024年の初実戦は、なかなか苦しいものになってしまいました。
タイムリーとなった打球は完全に打ち取ったもので、少し運にも見放されていたところもあったかと思いますが、象徴的だったのは回の先頭の左打者を迎えた場面で、初球のストレートが打者の頭の上を通過し、次の球で背中にデッドボールをあててしまったところでしょう。

下投手の強みのひとつであるスライダーはそれなりにストライクが取れており、チェンジアップも球数は少ないもののストライクが入っていたので、昨年同様にストレートの制球と立ち上がりの悪さが課題になってきそうです。

ただ、昨年の前半はストレートの球速が130キロ前半まで落ちたこともありましたが、この試合では球速のMAXは139キロ、アベレージでも137キロあり、調子の底は抜けているかと思います。

スライダーが一番の武器ではありますが、ストレートの球速とコントロールが調子の目安になる投手なだけに、今後はそこがどう改善されていくのか注目です。


③ 山下輝 投手

三番手で投げた山下投手は、1回を投げて被安打2、与四球2で、3失点の投球でした。この日の下投手の球種の割合は以下の通りとなります。

筆者の独自集計なので実際とは異なる場合があります
「だいたいこんなものだったのか」程度で見てください

また、各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(ストレートのみMAXも記載)

速球系というのは、山下投手は恐らくストレートとワンシームを投げていたと思うのですが、私では映像と球速からその2つの球種を判別することができなかったので、ひとつにまとめています。申し訳ございません…。

山下投手もまた、今年の初実戦はかなり難しい投球となってしまいました。

速球系のMAXは135キロでアベレージは130.4キロ、しかも球数を投げるにしたがって球速は徐々に下がっていき、回の5人目の打者以降で130キロ以上を計測したのは1球しかありませんでした。山下投手についてはフォーム変更の影響が言及されることが多いですが、それと同じくらいスタミナ面での課題を感じます。

また、この日は速球系の制球がイマイチで、変化球を多投するほかなく、スライダーとチェンジアップで投球の半分以上を占めています。ただ、スライダーもチェンジアップも球速帯が変わらないので、打者に取ってみればどちらが来ても対応しやすかったのでしょう。タイムリーとなったヒットはどちらも変化球を打たれているので、狙われていたのかもしれません。

昨年末のイースタンでは143キロを記録していますし、それから怪我をしたという報道もないので、今後も球速が戻らないということはないと信じています。

球速さえ戻れば復活できるはずです。
また神宮のマウンドで投げている山下投手を見たいです。


④ 柴田大地 投手

四番手で投げた柴田投手は、1回を投げて被安打0、与四死球0、1つの三振を奪う投球でした。
この日の柴田投手の球種の割合は以下の通りとなります。

筆者の独自集計なので実際とは異なる場合があります
「だいたいこんなものだったのか」程度で見てください

また、各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(ストレートのみMAXも記載)

柴田投手の投球を見ていくと、回の先頭打者にはストレートを混ぜた投球で空振り三振を奪っているのですが、二人目の打者以降にはストレートを投げず、変化球のみで打ち取っています。恐らくこの試合ではキャンプで改良に取り組んできた変化球を試すという目的があったのでしょう。

その成果があったどうかは、球数が少なくてイマイチよくわからないのですが、この回を10球で終わっていることもからも、これまでの柴田投手の課題の一つであった制球面というところは改善できているようです。

一方、柴田投手に求められている投球が、今回見せたような変化球を多投するものなのかどうかは疑問です。まだ2月の段階なので、いろいろ試しているということも、球速はこの程度ということも納得できますが、スカウトや野球系Youtuber、キャンプを見に行った人たちをうならせたストレートで、相手打者を圧倒してぐいぐい押し込んでいく姿が見てみたいなぁと個人的には思っています。


⑤ 嘉手苅浩太 投手

五番手で投げた嘉手苅投手は、1回を投げて被安打4、与死球2、4失点という投球でした。
この日の嘉手苅投手の球種の割合は以下の通りとなります。

…こんなグラフを提示してしまい本当にすいません

…すいません、速球系の球の見分けがつかず、こんなグラフを提示してしまいました。ただ、どの速球系のボールもシュート変化しているように見えたので、シュート系で統一しています。

各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(シュート系のみMAXも記載)

言い訳の続きなのですが、この試合の嘉手苅投手のシュート系と表記したボールが大体135キロ~137キロの間に収まっていて、せめて球速に違いがあれば球種を推定することもできたのですが、それもなかったので判別することができませんでした。
そしてこれは仮説もいいところなのですが、もしかしたら相手打者にとっても嘉手苅投手の投球は130キロ台のシュート系のボールと120キロ台のスライダーのツーピッチの投手のように映っていて、的をしぼりやすかった面があるのではないでしょうか。

嘉手苅投手の登板を振り返ると、先頭打者を不運な形のヒットで出してしまい、次の打者はアウトに打ち取ったものの、その次の打者に前進守備のショートの頭の上を超えるタイムリーを打たれ、そこからは相手の勢いに飲まれてしまった印象です。
先頭打者のフライはアウトにできましたし、失点したタイムリーも前進守備ではなかったらどうだったのかなというところではあるのですが…。

昨年はツーシーム、スライダーのほかにフォークも投げているはずですが、この日の登板ではフォークの投球はなかったようですし、球速もシーズン終盤には最速で140キロ台を計測していたこともありましたが、この日は139キロ止まりだったので、そもそも本調子ではなかったのかもしれません。
2/18にブルペンで見たときにはなかなか調子が良さそうだっただけに、これからの調整の中で昨年終盤の勢いを取り戻してほしいところです。


⑥ 長谷川宙輝 投手

六番手で投げた長谷川投手は、1回を投げて被安打0、与四死球0、無失点という投球でした。
この日の長谷川投手の球種の割合は以下の通りとなります。

筆者の独自集計なので実際とは異なる場合があります
「だいたいこんなものだったのか」程度で見てください

長谷川投手にも「速球系」という項目があるのは、何球かカットボールっぽい球があったのですが、断言する自信がないためまとめています。

各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(速球系のみMAXも記載)

長谷川投手は2021年に血行障害で離脱して以降、150キロを超える速球を披露する回数は減りましたが、その分制球面は格段に向上し、この日の試合でも追い込んでから打者に粘られても根負けせず、最後は内野ゴロに打ち取った場面がありました。

また、一時期ほどの球速は出なくなったファストボールも、オフにSSTCに行った効果なのかこの日は最速148キロ出ており、暖かくなれば更に速いボールを投げられるのではないかと期待できます。

ただ、この日の長谷川投手の投球で空振りを奪った球はなく、中継ぎ投手としてやるのであれば空振りが欲しいときにどうするのかが今後の課題になりそうです。

東京ヤクルトスワローズは昨オフに左の中継ぎ投手としての抜群の実績がある嘉弥真投手を獲得し、昨年1軍で42試合登板を記録した山本大貴投手も浦添キャンプで結果を残しており、同じ左の中継ぎ投手として長谷川投手の前に立ちはだかっている壁はかなり厚いように見えますが、「背番号53」に見合う活躍が見たいですね。


⑦ 丸山翔大 投手

七番手で投げた丸山投手は、2回を投げて被安打2、与四死球1、2つの三振を奪う投球で無失点でした。
この日の丸山投手の球種の割合は以下の通りとなります。

筆者の独自集計なので実際とは異なる場合があります
「だいたいこんなものだったのか」程度で見てください

各球種の球速アベレージは以下の通りです。

各球種の球速アベレージ(ストレートのみMAXも記載)

この試合の丸山投手といえば、今季初実戦ながら150キロ出したことで話題になりました。アベレージでも147キロ出ており、台湾ウィンターリーグでの好調を維持してキャンプ入りができたようです。

また、この試合の丸山投手は回ごとに投球スタイルを変えており、1イニング目は投球のほぼ半分がストレートで、カウントを稼ぐ球としてスプリットとスライダーを同じくらい使っていたのですが、2イニング目については最後の打者以外ほぼストレートとスライダーのツーピッチ状態で、何らかの縛りがあったのではないかと勘繰ってしまいます。
2アウト2塁、1塁で迎えた最後の打者だけストレートとスプリットで追い込み、最後は大きく落ちるフォークで仕留めるという、これまでと毛色の違う攻め方をしているのは、さすがにこれ以上の失点は避けたかったのかもしれません。

なお、2/18に現地で丸山投手のブルペン投球を見たときに、「カウントを取るフォーク」と「三振を取るフォーク」で球種を分けていたようなので、2イニング目の最後の打者には丸山投手の理想とするアウトの取り方ができたのではないかと思います。

投手が弱点と言われ続けているヤクルトスワローズ投手陣ではありますが、右の中継ぎについては浦添組の石山、清水、木澤、エスパーダ、大西、(小川GMは先発で期待と言っていたものの本人が中継ぎ希望の)宮川の他に、西都にも星や今野、昨年中継ぎ起用で息を吹き返した高梨と、丸山投手のライバルはなかなか強敵揃いです。
投げている球種を見ると先発でもいけそうに見えますし、実際ファームでも一時期先発要員として回っていたこともあるだけに、今季の起用がどうなるか注目です。


⑧ 野手陣について

最後に、野手陣について少しだけ触れておきたいと思います。
この試合はエイジェック先発の金城投手の出来がよく、またリリーフとして出てきた選手が変則的で初見では難しいという点もあったかもしれませんが、4安打で完封されてしまうというのはなかなか寂しいところです。

そんな中でもショートで先発して1安打を放った伊藤琉偉選手は、守備のところでみ頭上を越えそうな打球を好捕したり、ショートへのゴロを全てきっちりアウトにしたりと、出場した野手の中で目立った活躍をしていました。
試合の中で他の選手から「投げるな」の指示が出ているにも関わらずファーストに送球してしまった場面があったので、まだまだ細かいところをプロ仕様にしていく必要はありそうですが、上々のデビュー戦だったのではないでしょうか。

また、同じ新人である鈴木叶選手は、打者としてはエイジェックのサイドスローの投手の前に三振という結果でしたが、捕手としては長谷川投手、丸山投手と組んで無失点と、ある程度の役割はこなしてくれました。
試合では丸山投手の大きく落ちるフォークをきっちりブロックできていましたし、また2/19のシート打撃の中でも尾中投手の落ちる球をほぼ止めることができていたので、前評判通り守備については1年目からそこまで大きな破綻なくこなしてくれそうです。

あと、昨年との大きな違いとして、守備の場面で内野がかなり静かになりました。
2/20の試合では、ファーストに川端→西田→三ツ俣、セカンドに小森、ショートに伊藤、サードに西村という布陣で、ピンチの場面では西田が投手に声をかけて間を取ることはありましたが、奥村や元山がいたときと比べると投手を盛り上げる声がなかなか出ていなかったなという印象です。
まぁこれは奥村や元山がただ人並み以上に騒がしかっただけで、普通はあんな感じなのかもしれませんが…。

⑨ 終わりに

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
結果だけみれば東京ヤクルトスワローズの西都組はなかなか苦難のスタートのように見えますが、それぞれの項目で取り上げたように、ポジティブな面もそれなりにありました。
今後、今回の試合に出場した面々の調子が上がっていき、神宮の舞台で彼らが躍動することを願って、この記事を締めさせていただきます。

頑張れ、西都組!
浦添組に負けるな!


※参考:Web sportiva 2023年3月30日公開「ヤクルト23人の投手が語った「増やしたいもの、減らしたいもの」 体脂肪を減らしたいと語った投手は?」


ここまでお読みいただきありがとうございました!
2/18と2/19の東京ヤクルトスワローズ西都組のキャンプレポートもあるので、お時間のある方はぜひこちらもどうぞ!

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