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作曲とミックスでプロジェクトを分ける利点

DAWとバーチャルインストゥルメント(ソフト音源)で音楽を作っていると、作曲しているプロジェクト、セッションでそのままミックスをすることがよくあります。一方で、ミキシングエンジニアにデータを渡す場合は一般的に音源類は波形にレンダリングしてから渡すことになります。

ここで、自分でミックスする場合は制作セッションのままミックスすべきか一旦波形にしてからミックスすべきかという問題が生まれます。

本記事では双方の利点と問題点を列挙し、状況に応じたワークフローを選択出来るためのアイデアと判断材料を提供します。

曲作りのプロジェクトのままミックス

最大のメリットはMIDIを触れるということです。打ち込みに問題があった場合も直ぐに音色や奏法を切り替えることが出来ます。

もう一つの利点は短納期に強いということです。レコーディングやミックスのスケジュールや予算が全く確保されていない急ぎの制作においてはスピードが重要ですが、曲作りとミックスという工程を切り分けずに一度に行うことによってファイナルミックスまでスピーディに到達出来ます。

一方、最大のデメリットはクオリティが上げづらいことです。要因は色々ありますが、

・プロジェクトの視認性の低さ
・オートメーションの煩雑さ
・セッションファイルの負荷の高さ

等により作業時のストレスが高くなり最終的な品質に直結します。MIDIと音源のトラックをもし分けていればそれだけでトラック数は倍になりますし、テンプレートで作曲している場合その楽曲の中で一度も登場しないトラックが大量にあるはずで、わざわざ特定して非表示にするのも手間がかかります。

また、音源のままミックスしようとすると楽曲が正しく再生されないケースが出てきます。プレイバックの際のバッファリングが間に合わなかったり、MIDIのゲートが開いている間鳴り続けるループ系のサンプルも小節の途中から再生するとわけが分からないことになります。意図しないラウンドロビンが選択されてしまったり、キースイッチが意図通りにならないといったことも起こるでしょう。

全て波形にしてから別プロジェクトでミックス

最大の利点はミックスのクオリティが必ず上がることです。なぜなら、作業のストレスが著しく下がるからです。トラック数も減りますし、クリップゲインで直ぐに特定箇所の音量を変更出来る上に小節の途中から再生してもビートが正しく再生されます。

また、一度波形にすることで作曲テンプレートに入っていた本当は要らなかったエフェクトを全て外すことが出来るのも重要です。勿論、ドラムのような音作り系のエフェクト、ミックスのためでないエフェクトはかけてバウンスしていいと思います。

もう一つの利点がミックスに適したDAWに環境を移せることです。作曲はCubaseだけどミックスはPro Tools、作曲はLogicだけどミックスはStudio One、みたいなことが自由に出来ますし、もしミックスを自分でしない場合でも直ぐにデータを渡すことが出来ます。

あとは精神論的になりますが後戻り出来ないようにすることでミックスに集中出来るのも結構嬉しいです。

全てフリーズして曲作りのプロジェクトでミックス(おまけ)

上記のハイブリッドです。処理負荷が低くMIDIを直したい時はアンフリーズすれば直ぐに手直し出来ます。

また、同じプラグインを持っていないけど使っているDAWは同じという人にすぐ共有出来るのも利点と言えるでしょう。特にチームで同じDAWで作曲している場合は恩恵があるのではないかと思います。

僕はどうしているか

僕のポリシーは時期と気分によってまちまちなのですが

・なるべく波形にする
・とにかくスピードが重要であれば波形にしない
・その代わり制作セッションのクオリティを高めておく

という分け方で、波形にする場合は曲によってミックスをCubaseでやったりLUNAでやったりです。

レンダリングの設定について

制作中の楽曲を一旦レンダリングする際の設定についてはこちらの記事も併せて御覧下さい。

まとめ

曲によって、制作チームによって、プロジェクトによって正解は変わるので、どちらかのやり方で決め打ちせずに状況に応じたワークフローを選べるようにしておくのが大事でしょう。

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