🦉ゲーテちゃん🦉

JK()です。主に経済、国際政治などの発信。ツイッター: https://mobile…

🦉ゲーテちゃん🦉

JK()です。主に経済、国際政治などの発信。ツイッター: https://mobile.twitter.com/goethe_chan

マガジン

最近の記事

石橋湛山「真の健全財政」:二種類のインフレと完全雇用

「石橋財政」で知られる石橋湛山は、「機能的財政」に通じる考え方を持っていた。またここで言われている「インフレ」についても異なる原因があり、対処法も画一的なものではないと理解していた。そして財政政策の真の目標は完全雇用であり、それこそが「真の健全財政」であると強調し、公的雇用の提供を重視した。以上のことは引用元の文章を探ってみると明らかである。 上記に引用されている石橋湛山の演説のソースを遡ると、占領期の大蔵省とその担当する財政・金融行政の歴史をまとめた『昭和財政史-終戦から

    • 大戦期に就業保証を訴えたFRB幹部:エマニュエル・ゴールデンワイザー(1944年5月4日)

       3月1日、MMTコミュニティでも有名な金融ライターのネイサン・タンカスは、FRBの委員会で就業保証が提案されるような時代があったとして、該当する議事録の抜粋を紹介しているところ、概要は以下のとおり(番号と太字はこちらで付したもの)。 以下、1994年5月4日に行われた連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)での、エマニュエル・ゴールデンワイザー調査統計部長(当時)の発言。 【仮訳】 1 ......第10のポイントも労働を扱っており、このプログラムの

      • クナップ『貨幣の国家理論』の要約(ティモワーニュのXポストより、2024年2月22日)

         MMTの経済学者のエリック・ティモワーニュ経済学准教授(オレゴン州の私立大学ルイス&クラークカレッジ)によるクナップの『貨幣の国家理論』の要約を下記のとおり紹介する(原文はティモワーニュのX(旧Twitter)での投稿から。本文中の太字は、訳者によって付したもの)。  クナップの『貨幣の国家理論』を簡単にまとめると以下のとおり(為替に関する内容は省略)。 1.使用する勘定単位と支払手段が同じ支払システム(「支払社会」)と、両者が異なる支払システムが存在する。銀行と国家が

        • 忘却されし経済思想家:ジェームズ・テイラー「貨幣とは何か」(1832年)①

           G・F・クナップの『貨幣の国家理論』(1905年)やA・ミッチェル=イネスの『貨幣とは何か』(1913年)の発表よりも70〜80年早い1832年、「租税が貨幣を駆動する」ことをはじめ、チャータリスト(表券主義)に付合する貨幣観を見事に論じた、一冊の小冊子が発表された。イギリスの銀行家ジェームズ・テイラーによる「貨幣とは何か」(What is Money)である。  この文献を知ったきっかけは、MMT学派のエリック・ティモワーニュ経済学準教授(ルイス&クラークカレッジ、米国

        石橋湛山「真の健全財政」:二種類のインフレと完全雇用

        マガジン

        • MMT
          7本
        • note
          0本
        • 金融
          3本
        • 政治
          1本

        記事

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く④(終):MMT学派の経済学者の見方(2023年11月21日)

           前記事に引き続き、ヤン・リアン教授による寄稿「"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く」(11月21日付『中国社会科学報』)のその④(最終回)をお届けする。(〔〕は訳註。)  リアン教授は、個人消費を長期的に促進するには、一時的な現金給付よりも民間の雇用創出と賃上げの奨励、公共の就業保証プログラムが必要であると提案し、ほか中央政府から地方財政への財政移転を増やすべきであると主張する。そして欧米の見方とは異なり、中国経済は堅調に推移しており、今後も経済発展の成熟へ向けて現実主義的なア

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く④(終):MMT学派の経済学者の見方(2023年11月21日)

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く③:MMT学派の経済学者の見方(2023年11月21日)

           前記事に引き続き、ヤン・リアン教授による寄稿「"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く」(11月21日付『中国社会科学報』)のその③をお届けする。(〔〕は訳註。)  ここでは、リアン教授が、不動産部門の低迷に伴う金融危機論に対して様々なエビデンスをもとに反論しつつ、問題は民間消費にあると論じている。 (前回リンク:その①、その②) 不動産の緩やかな安定化と新たな成長エンジン  欧米の評論家の中には、中国は「不動産バブル崩壊」によって「金融メルトダウンの危機」に瀕していると言

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く③:MMT学派の経済学者の見方(2023年11月21日)

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く②(ヤン・リアン ウィラメット大学教授、 2023年11月21日)

           前記事に引き続き、ヤン・リアン教授による寄稿「"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く」(11月21日付『中国社会科学報』)のその②をお届けする。(〔〕は訳註。)  ここでは、リアン教授が各経済指標のデータを示しながら、中国経済は概ね回復傾向にあり、欧米で言われているような崖っぷち状態にはなく、今の課題は国内の有効需要の拡大や輸出競争力の強化等であると論じている。 (前回:①のリンク) 最新の経済データは誤った主張を強く否定  中国経済の最新のデータを見ると、2023年第3

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く②(ヤン・リアン ウィラメット大学教授、 2023年11月21日)

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く①(ヤン・リアン ウィラメット大学教授、 2023年11月21日)

           11月21日、梁燕(ヤン・リアン)ウィラメット大学(米国オレゴン州)経済学主任教授は、中国の学術誌『中国社会科学報』に、「"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く」と題して寄稿しているところ、冒頭部分を下記のとおり紹介する。(続きは別途投稿する。全4回予定。原文リンク(中国語):揭穿“中国经济终结论”)  リアン教授は、MMT学派の経済学者で、専門は国際貿易・金融、金融マクロ経済学、(中国を中心とした地域の)開発経済学に対するポスト・ケインジアン、制度主義的アプローチ。ミズーリ大

          【MMT×中国】"中国経済崩壊論 "の誤りを暴く①(ヤン・リアン ウィラメット大学教授、 2023年11月21日)

          中国の地方政府債務問題について。

          今日は中国の地方政府債務の問題について。長年悪化していると言われている中国の地方財政だが、最近ではこんな報道が出ている。 足元のインフラがぐらついている事例はこれだけに止まらないが、他にも地方政府の公務員給与が削減され、役人のフラストレーションが高まっているとの声も聞かれる。 中国の地方政府債務の総額9兆ドル=約1200兆円(2023年4月)に上るとされ、国内総生産(GDP)の約50%を占めると言われている(ロイター)。ちょっと桁が凄すぎて何とも言えないが、ご参考までに日

          中国の地方政府債務問題について。

          中央銀行の仕事は物価の安定「ではない」ーー金融政策の正しい位置付け

          中央銀行の仕事は物価の安定「ではない」ーーのっけからこんなタイトルで書くと、偉い(?)人から「中央銀行の物価安定目標を否定するのか!教科書から学び直せ!」と怒られそうなのだが、なるほど確かに米連邦準備理事会(FRB)の辞書に「学び」という言葉はないようだ。 4月17日のロイターによる報道。 「利上げが足りない!」というやつだな。 1年間も利上げをやってきて効果が見られないのだから、まずはその総括とは言わないまでも分析くらいしてもいいはずなんだが、物語の矛盾を放置したまま

          中央銀行の仕事は物価の安定「ではない」ーー金融政策の正しい位置付け

          アメリカ財務省「ケインズ『戦費調達論』の書評」(公文書)(1940年7月1日)

           本記事では、アメリカ財務省が1940年に公文書としてまとめた「ケインズ『戦費調達論』の書評」の内容を紹介する(原文リンク)。財政政策の機能は「資金」調達の術ではなく、「資源」調達の術である。ケインズの『戦費調達論』では、物量的な駆け引きそのものである戦争というテーマを介してそのことを容易に理解することができる。  また戦争に限らずあらゆる政策の負担と受益という分配の公正化こそケインズの問題意識であり、「戦費調達論」というよりは「戦争の受益負担論」と理解する方が適切なように思

          アメリカ財務省「ケインズ『戦費調達論』の書評」(公文書)(1940年7月1日)

          ウクライナ政府にデフォルトの危険はないのか?【ウクライナ×MMT】

          ロシアによる今次ウクライナ侵攻から早7ヶ月余りが過ぎたが、戦況の長期化に伴い、ウクライナは国際機関や欧米などから財政支援を受けている。 さて、MMT(現代貨幣理論)の議論に親しい人には、自国通貨を発行する政府は、自国通貨での支出を行うために収入を得る必要も融資を受ける必要もないことは知られている。ウクライナは、自国通貨フリブナ(フリヴニャ、hryvnya)を発行している。MMTに批判的な人であれば、「自国通貨を発行するウクライナは財政制約がないはずなのに、何故財政支援を必要

          ウクライナ政府にデフォルトの危険はないのか?【ウクライナ×MMT】

          ミハウ・カレツキ「完全雇用の政治的側面」(1943年)

          ポーランドの経済学者ミハウ・カレツキ(1899〜1970)が1943年に発表した論文「完全雇用の政治的側面」を以下のとおり紹介する。概要は下記のポイントにまとめ、読みやすいよう見出しを付した。 Michał Kalecki, “Political Aspects of Full Employment“, Political Quarterly, 14/4, 1943, pp.322-31 ポイント1 政府支出による完全雇用は、経済的には達成可能である。政府支出においては、

          ミハウ・カレツキ「完全雇用の政治的側面」(1943年)

          業の負債、お布施、そして資本の拡張:グレーバー『負債論』より

          グレーバーによれば、中国の貨幣観は、歴史的に常に表券主義(チャータリズム)的であった。当時の政府の人間は、税の支払い手段を布告するだけで、大抵はどんなものでも貨幣にしてしまえることをよく理解していたという。 国を治めるのに重要なのは資金ではなく資源であり、適切に資源を活用することが、一国の繁栄と安定につながった。そして、そのためには資源の分配を歪め農民を貧困へと追い込む金融勢力(高利貸)への制約が、一貫した課題であった。 例えば王莽は、高利貸への対抗手段として国営の貸付機

          業の負債、お布施、そして資本の拡張:グレーバー『負債論』より

          何がインフレを加速させているのか:ランダル・レイ論文(2022年3月)を読む

           現在世界各地で生じているインフレは何によってもたらされているのか。パンデミックによる供給要因なのか、財政政策による需要要因なのか、はたまた別の要因があるのか。これについて、MMTの代表的な研究者であるL・ランダル・レイ(バード大学経済学教授)が、今年3月に発表したイェヴァ・ナーシシャンとの共同論文が参考になると考えるところ、今回は論文の中で興味深い点を抜粋して以下のとおり紹介する。より詳細な議論について興味があれば、ぜひ原文(英語)にチャレンジしてほしい。また本記事によるま

          何がインフレを加速させているのか:ランダル・レイ論文(2022年3月)を読む

          MMT×マクロ経済学ノート Part 3:誰かの赤字は別の誰かの黒字

          MMTのレンズで考えるマクロ経済、Part3。 (過去:Part1、Part2) ポイント 1 経済部門を国内民間部門、政府部門、海外部門に分けると、各部門の収支を合計した時に必ずゼロになる。一つの部門が黒字を計上するには、残りのどちらか一つの部門は必ず赤字を計上する。非政府部門の純金融資産を増やすには、政府部門が赤字を計上するしかない。 2 ストック・フロー一貫アプローチは、誰かの赤字は別の誰かの黒字、誰かの金融資産は別の誰かの金融負債となる会計上の一貫性を明らかにする

          MMT×マクロ経済学ノート Part 3:誰かの赤字は別の誰かの黒字