ふらっと立ち寄って買うものじゃない

近日のコンビニ、スーパー、おそらくケーキ屋さんも。は、色めいている。

秋、というのは色味が各種茶色を帯びていくというのに、甘味好きにはたまらない季節である。
予算があれば、各種を食べたいものだが、と呟きながら久しぶりに日中の外に出た。

暑い。秋、とは。
毎回思ってしまう私だが、きっと油断して瞬きをすればすぐ秋。ちなみに少し風邪気味なのだが、これは夏風邪でなく残暑風邪、または秋初め風邪なので馬鹿ではない。
こういうことを考えながら歩いているから、きっと脳内を見れるエスパーが近くにいたらおおよそ平和な奴だと思われるだろう、またはバカなこと考えているなと思われるかもしれない。そっとしておいてほしいところ。

コンビニで飲み物と秋めいたパンを買い、お腹が空いてよく回らないままの脳で信号を渡り、ふらりと立ち寄る。
写真屋さん。

諸々により、カメラが欲しいと思っていたところなのだ。
いや、そんな「…というところなのだ。」で済ませることなのだろうか。わからない。
ただ、かくいうものぐさランキング上位の私は、偶発性を大事にするランキング上位の常連客でもあるため、まっすぐと「写る…です。」系カメラの方へ歩を進めた。

いや、隣に普通にフィルムカメラがあった。
これだ、と思う。

(決断もびっくりの迅速さ)

店員さんに、普通のカメラですよねみたいなことを聞いていた。
誤ってハーフカメラとかなんか凄まじいカメラだった場合、カメラに申し訳なさすぎる。
一応、息をするみたいにカメラを買う前だ。多少の注意力…もとい、真摯さは持っていた。よかった。バカだけど、少しは善良な精神があり、よかった。
なんとなく、昔の某シンケンなゼミで付録についてきたフィルムカメラを思い出していた。フォルムが似ている。

実のところ、あそこから私の気まぐれな「写す」「表す」みたいな方面の趣向は始まっているから、侮れない。付録一つでも、意外と人生には影響する。
現に、それを思い出して、目が飛び出るような金額ではないけれど。私の財力ではもう一息考えてもいいんじゃない?と思うけど。な、空腹を元手に普通にカメラを買うような人間になったようです。

「これお願いします」と言うと、店員さんはパッケージのホコリを払ってくれた。
ずっと、フィルムカメラです、と細々主張しつつここにいたのかと思うとなんだか愛しくなった、傲慢な愛の類じゃなければいいのだけれど。

がこん、と店員さんのそばの何かが物音を立てた。慌てる様子はない。
カメラへの引越し祝いを座敷わらし的な何かがしているのかもしれない。ああ、自分はホラーが苦手なくせに悠長だ。否、機材の音だとしたら壊れていないことを祈る。

「ありがとうございました」
大切に、というよりは元々有していたそれのように鞄にしまい、
まだ夏の気配が多すぎる道を歩く。

目的があって君を買っている。さぁ、いつ一緒に歩こうか。
息をするみたいに買ったカメラと、一緒に呼吸をする日。
その時、秋はどれだけ姿を見せてくれるだろうか?

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