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小説「夏物語」と「母になること」3映画

すごく力強い小説だったよ

川上未映子さんがシンディ・ローパーが大好きで、英訳された著書「夏物語」をシンディに送ったら返事が来たという話を彼女のTwitterで読んだ。

この人なんだかとても血の通った人という印象を受けてちょっと泣けちゃって(笑)、早速「夏物語」を手に取りました。

とても力強いのに繊細な描写。
うむ、シンディも自分のファンがこれを書いた人だと分かったら感動するよね。

人口受精で独身のまま母になりたい、我が子に出会いたいと切望する主人公。母になることの選択、母になる方法云々、偶然、映画「ベイビーブローカー」を見た直後だったので、思うことが多いけれど、こちらは生まれてきた子の気持ち、子の幸せ、親のエゴなどなどに深く迫る内容で、読み応え大。

親ガチャ的な考え方が今すごく言われるけど、市井で生きる人の営みは、そんな考え方とは別次元の本能的な体や心が感じる衝動や思いや愛に突き動かされている。

登場人物に対する作者の愛が感じられて、どの登場人物も生き生きと目に浮かぶような。読み終えるのが寂しいような。

「母になること」映画

そういえば、「ベイビーブローカー」を見たのをきっかけに「母になること」についての映画をいくつか思い出したので、残しておきたい。

「母になりたい」「母になることができない」「産んだからと言って母になれるわけではない」「産まなくても母性がある」いろいろあるけど、誰もがそのパターンに種別できるわけではない。

だれでもその人の中にある「母性」や「非母性」が否定されずに生きられたらいいのに。

「ロスト・ドーター」(2021年製作、Netflix)

やや重たい映画なので見るのにエネルギーがいりますが、よくぞ作ってくれたな、と思います。誰かを救う映画だな。

子を産んだからと言って誰もが簡単に母になれるわけではなく、母性を持たない人もいます。産めばみんな母親になれる、というのは間違いで、そうじゃないタイプもいるのです。そして母性があるかないかではなく、グレーな人もたくさんいます。

母性を持たずに母になった苦しみが続く前半ですが、それでも人として生きていく希望の光が見えるラストシーンが好き。

「82年生まれ、キム・ジヨン」(2019年製作)

これも好きなのですが、かつての自分の痛みと重なって簡単には見直しできない映画でもあります。
母になる、だけではなく、女性のキャリアとか生き方についてがよりクローズアップされているかな。

子育てを社会みんなで出来ない社会全体の問題なのに、あたかもその女性の人格や人となりにすり替えられて否定されがちな世の中、生きづらさが描かれています。

「朝が来る」(2020年製作)

特別養子縁組の親子と産みの母親のお話。
井浦新と永作博美、何と言っても蒔田彩珠が素晴らしく。子どもや母親を取り巻くいろいろな立場の人が出てきて、とても好きな映画でした。
後になってから河瀨直美監督の暴力問題とか出て来て、何とも残念。



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