秘密基地の話
秘密基地に憧れる人は多いはずだ。
わたしも小学生のころ、秘密基地を作ったことがあった。
暇を持てあました我々は、することもなく、近所をぶらぶらと歩いていた。
すると草が生い茂った空き地を見つけた。
自分たちよりも背の高い草が鬱蒼と生えており、隠れるにはちょうどよさそうだ。
わたしたちはその中にずんずん入っていき、もっとも草が多く、見つかりにくそうなところに秘密基地を作ることにした。
自分たちのスペースを確保するため、円形に草を引っこ抜いていく。草むしりなんて大嫌いな我々だったが、このときばかりは黙々と作業を進めた。
ようやく自分たちが座れるくらいのスペースができた。座ってみると、遠目からは姿が見えない。それだけでワクワクした。
完成した秘密基地に対し、顔に泥をつけた我々は歓声を上げた。
といっても、草を抜いただけだが。
このことは決して口外しないように固く約束した。勝手に誰かに使われるのは癪に障るし、親にでも話したら使用禁止になるだろう。そもそも話が広まってしまうと秘密基地ではなくなってしまう。
それ以来、たびたびそこを訪れ、お菓子を食べたり、しゃべったりして楽しい時間を過ごした。
そうして事件が起こった。
第三者の侵入である。
いつものように基地を訪れると、見慣れない毛布と何冊かの雑誌があった。仲間に確認してみるものの、誰も知らないという。何者かが侵入したのだ。
しかも、その雑誌がまた曲者だ。
やたらと裸の女の子が出てくる漫画雑誌だった。
小学生の我々は仰天した。
こういった本の存在はうっすらと知っていたが、まさかこんなタイミングで遭遇するとは思いもしなかった。
興味津々だが、そんなことがバレたら仲間から何を言われるか分からない。
「うわ、なんだこれ!」
「ちょっと見てみろって」
「やだよー」
「いいからさ~」
さすがに誰も積極的には見ようとしなかったが、思わずチラチラ見てしまっていた。そのまま不潔なものを扱うように笑いながら蹴って互いに押しつけ合った。
この事件があってから、わたしたちは秘密基地の使用をやめた。
ひどく汚された気がしたし、第三者に遭遇してしまうのが怖かった。
数年後、そこには立派な建物が建った。
そこを通りかかるたび、そのときのことを思い出すのであった。
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