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読書ノート2024(その6)

タイトル:ギフテッド
著者:山田宗樹

人にはそれぞれ他の人とは違った何かしらの能力があるのだと思います。
例えば、目の前の風景を克明に描き写すことが出来たり、一度聴いただけでその音楽を再現出来るなど役に立つ能力がある一方で、自由にオナラを出すことが出来たり、何かにつけて周りの人をイラつかせることが出来るなど箸にも棒にもかからない能力もあったりします。
いずれにしろ、その能力がその人の魅力や違いを生み出し、社会は成り立っているのでしょう。
私の能力があるとすれば、どこででも寝ることができるといったことでしょうか。
皆さんは、どのような能力をお持ちですか。

今回読んだ本は、以前に「人類滅亡小説」という小説を読んだことのある山田宗樹さんの書き下ろし小説でした。
タイトルにある「ギフテッド」とは、普通の人にはない臓器を生まれながらにして持った人たちの能力をめぐる話です。
人は、他人が自分にないものを持っていたりすると羨んだり、ひどい場合にはそのことで他人を差別したりすることがよくあります。
昨今は、多様性や包摂性といった言葉がよく言われていますが、人間の根本にはそれらを認め難い性質があるのかもしれません。というか、認め難いからこそ、多様性や包摂性といった小難しい言葉を口にして、意識しなければならないのかもしれません。
その違いが、私の能力のような「どっちゃでもええ」ような能力であればなんてことはないのですが、特定の人が持つ能力が普通の人には到底及ばないものであればあるほど、その人や能力に対する対応が賞賛や尊敬といったプラスのものと、妬みや中傷といったマイナスのものに大きく別れるのでしょう。

この小説に出てくる「ギフテッド」な人たちに対する普通の人たちの態度や行動は、自分たちの抱いている世界観を壊されたくない、新しいものを認めたくないという人間の根本的な性向を表していて、いくら科学技術が進歩して日常生活が快適になったとしても解決しない人間の性(さが)なのかもしれません。
その一方で、いつの時代にも変わらない友情という人間だけが持つ能力の素晴らしさを感じることが出来ました。

読み終わった時に、大友克洋の「AKIRA」の金田と鉄雄たちの友情をふと思い出しました。


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