また「パプリカ」を観れるようになるまで

また抱えきれないものを抱えてしまった。

二度と見れないものなんて、少しでも人生を生きていればいくらでもあると思う。別に、二度と繰り返されない現在の一瞬のことだけではなくて、「あぁきっと、この映画は二度と観ることはないな」というくらいのスケールの話。


今日は19時からBS12でパプリカが放送していたらしい。部屋にテレビを持たない自分には、関わりのない話なのだけど。

ただ「放送している」という事実だけがなぜか、見なければならないような、見たくないような、そんな葛藤を生む。


もう10か月も前のことになる。土曜日の朝、小さな部屋。近くて遠い、どこまでも手の届かないものを抱いて、映画を観ていた。パプリカ。ずっと観たいと思っていて、観る機会のなかった映画。夢が次第に現実を侵食してゆくストーリー。映像美で描き出す狂騒も、簡単に形を変えた世の中も、その時自分の置かれた状況も、何もかも現実感がなかった。

それは自分にとっては、大事な時間だった。他の誰かにとっては、取るに足らないゴミだったとしても。この時間が過去になった時、きっと、この映画を観ることは二度とないのだろうなと思っていた。

平沢進の主題歌を聴くだけでも、いまだに連なって思い出す。
人の姿のないアーケードも、外出自粛を呼びかける聞き慣れないアナウンスも、夜の首都高を抜ける景色も、全て現実感がなくて、二度と忘れられない夢の景色のように、脳裏に焼き付いている。


いつかまたパプリカを観ることが出来るようになった時には、きっと自分は大丈夫。それまでは、まだ。

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