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「市民と政治を考える会」がスタートします

 今回はみなさまに発表することがひとつあります。本日2024年5月8日(水)の18時より、「市民と政治を考える会」主催による、五野井郁夫の政治学講義が三鷹市の元気創造プラザ5階、生涯学習センターにて始まります。
 主催団体の「市民と政治を考える会」は去年度、五野井が主任講師を務めていた三鷹市民大学「政治コース」の受講生のみなさまが、今年度も引き続き学びたいということで自発的に組織された市民団体です。これは久野収が説いた「市民主義の成立」そのものですね。
 この講義は、市民のみなさまがなんと直接わたくし五野井を雇うことで行われます。これから毎月1回、水曜日の18時以降に、受講生のみなさまと政治の知識をシェアし、新たな政治のアイディアともにを考えてゆくという形式をとります。受講生の側が教師を指名して講座を作ってしまうのですから、とてもラディカルですね。受講生は大学生から新聞記者などの一般社会人、年金生活者まで現在20名程度。講師の選定やテーマ決めなども含め運営を全員で民主的に行います。このたびこちらでもご案内さし上げる次第です(都度参加で資料代と場所代で実費1000円程度を予定)。ご参加希望の方は直接こちらのnoteにメッセージを投げて頂くか、五野井のfacebook等SNSへご連絡ください。
 
 ポストのカヴァー画は、重苦しい単調な茶色のパターンからなる支配的な秩序に抗するかのように左下の赤い矢が描かき込まれている、パウル・クレーの〈立ち向かう矢〉(1933、アーティゾン美術館蔵)にしてみました。この講義もそういうつもりで、全力でやります。


 この講座では、まずは政治学や政治理論の基礎的な理論や論点ならびに現代の政治課題についても知識を共有し、ともに政治のアイディアや政策代替案について考えてゆきます。初回の講義テーマは「現代日本の政党政治:衆院3補選結果から政権交代の可能性まで」です。
 講義では、まず代議制デモクラシーと政党政治とは何かを考えることからはじめます。われわれがいま採用している政治体制の代表制デモクラシーは巧く機能しているのでしょうか。これまでのお任せ民主主義で本当にいいのか、哲人王政治はなぜダメなのか。でも古代ギリシャみたいな政治参加や毎回直接民主主義はしんどい。ではどれくらいがちょうどいいのか。そもそもわれわれの代表とは本当は誰の代表なのでしょうか。政治家はどういう職業で、何を目的にして日々動いているのでしょうか。与党は政権を動かしているから何となく分けるけど野党は何をしているのでしょうか。この辺りをプラトン『国家 上下』(岩波文庫)、早川誠先生の『代表性という思想』(風行社)、空井護先生の『デモクラシーの整理法』(岩波新書)、吉田徹先生の『「野党」論』(ちくま新書)などの議論からも振り返ってみます。

 
 代表制デモクラシーと政党、政治家について概観したのち、講義では55年体制の成立から政権交代、その後の安倍政権と今日までの日本の政党政治を足早に振り返っていきます。とくに2009年の政権交代時の内閣支持率や当時の政党配置と現在のそれらの相違点について、丁寧な分析をしてゆきます。いまと2009年当時とでは、何が明確に違うのでしょうか。
 ここでの歴史的議論を振り返る上で便利なのは大井赤亥先生の『現代日本政治史 ――「改革の政治」とオルタナティヴ』(ちくま新書)と、山口二郎先生の『民主主義へのオデッセイ』(岩波書店)でしょう。


 戦後日本政治ととくに失われた30年を概観し、今回の講義で最後に考えるのはこの前の衆院3補選の結果と、今後の解散総選挙、そして政権交代についてです。3補選の投票行動の結果には、今後の来るべき国政選挙をうらなう上での重要な兆候がいくつも見出せます。連合の存在感が東京15区で薄かったのは、東京15区が「都会」だったからにすぎませんし、東京15区で日本保守党の得票数が都民ファ候補を上回った現象や、長崎3区での維新票や参政党の動きも注視する必要があります。ここではそれら兆候を丹念に見定めていこうと思っています。とはいえ、ここに来てじつに7ヶ月ぶりに岸田政権の内閣支持率が復活してきています。この現象はどのように説明されるのでしょうか。講義では一定の方向も見出してみるつもりです。


 さて、では自民党政治は今後も続くのか。政権交代はあるのか。おそらく今後の兆しを考える上で重要なキーとなるのは、野党連携、あるいは与野党連携からなる大連立の構想でしょう。牧原出先生の『権力移行 何が政治を安定させるのか』(NHKブックス)はいまでも来るべき政権交代を考える上での導きの糸としての輝きを失っていませんね。こうした近年の知見も交えつつ、日本政治と世界政治が今後どう動きうるのか、動かすことが出来るのかをみなさまとともに考えてゆきます。ではこの続きはまた会場で。




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