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2023年夏の五野井ゼミ 「文化戦争の時代に文化と芸術の読み方を体得する」

 毎年夏休み恒例で開催される夏の五野井ゼミ、今年も本日8月21日の18時より21時まで5日間、東京の新宿にて開催します(なかなかまとまった時間がとれず、他の原稿が遅れており大変申し訳ありません)。今年のテーマは「文化戦争の時代に文化と芸術の読み方を体得する」と題して、政治理論と美学にかんする基礎的な論文と批判理論、そしてクィア理論の原典のひとつであるスーザン・ソンタグの「《キャンプ》 camp」についての概念を掘り下げることで、クィア理論と現実の政治・社会問題との対話可能性を展望します。毎年、学生から社会人まで広く参加しています。今年も現在まで15人程度が参加です。ご関心のある方は五野井のtwitterやこのnote、インスタ、facebook等までご連絡ください。

 今回のテーマ設定ですが、現代の社会ではかつて冷戦終焉直後に争点化した「文化戦争culture war」(ジェームズ・ハンター)が再び左右両陣営間で勃発していることを受けたものです。

 今日のロシア・ウクライナ戦争をめぐるイデオロギー争いも、LGBTQI+をめぐる議論も同性婚も、格差問題やネオリベラリズムも、インターネット上の論点も、文化的・美的な対立の側面を避けて通れません。

 そこで今年は文化と芸術にかんする書籍と論文を読破し、何が論点と問題なのかを把握するところから初めます。手始めにこれらの前提知識として山本浩貴さんの『現代美術史』(中公新書)で現代美術史=現代政治・社会・文化史の基本線にかんする知識を補充し、現在までの大まかな流れを掴みます。


 その上で基本的な論文であるアーサー・ダントーの「アートワールド」とジョージ・ディッキー芸術とは何か」など(西村 清和編・監訳『分析美学基本論文集』勁創書房に所収)を読み、文化と芸術についての読みのベースを整えます。


 さらにはアドルノとホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』(岩波文庫)に取りかかることで、抽象的な思考と現代史としての現代美術史を概観するとともにフランクフルト学派の批判理論の限界(≒いまの左派による批判の力)とその限界、左派が陥りがちな文化における教条主義の問題を把握し、文化と資本主義への切り込み方がどこまで有効でどこから届かないのかを検討します。

 もちろんフランクフルト学派からは、特定の文化が排除される兆候からファシズム的なモーメントの台頭と現代国際秩序の抱える課題も学びます。

 そしてなによりも、概念や審美眼を培うための⽂章を読む訓練もします。文化批評の古典であるスーザン・ソンタグ『反解釈』(ちくま学芸文庫)所収の論文「反解釈」「スタイルについて」「模範的苦悩者としての芸術家」「ハプニング」、そして「《キャンプ》についてのノート」読解を通じて、既存の社会規範とは異なるクィアで開かれた社会、よい趣味とされるものや悪趣味や露悪の社会的意味や突破力についても学んでいきます。


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