sakuramachi外観

「バス」が流通を変えるかもしれない

こんにちは。実家の熊本に帰省した際に、大きな商業施設「SAKURA MACHI  Kumamoto-サクラマチクマモト-」が出来上がっておりまして、それを見て、感じたことをレポートします。

サクラマチクマモトについては、こちらの記事をご覧ください。

こちらの施設は、大手旅行代理店HISの子会社である、バス会社九州産業交通が運営するバスターミナル一体型の商業施設となっている。同地には、過去に「交通センター」という名称でバスターミナル一体型の商業施設が存在したが、その規模はサクラマチクマモトに比べると非常に小さかった。

これまで地方都市では、大型ショッピングモールが郊外に進出し、そこにマイカーで訪れる生活が一般的となっていった。

それに伴い、中心市街地は空洞化の一途をたどっていった。
この現象は大都市圏を除く、様々な地方都市で起こっていた。

なぜこのような現象が地方都市で起こるのか?
そこに共通するのは、中心市街地への「移動のしにくさ」である。
鉄道網が発達する大都市圏では、中心市街地へのアクセスは非常に容易である。
それに対して、マイカーの発達過程で路面電車・バス等の公共交通機関の利用者が激減した地方都市では、公共交通機関の廃止・減便が相次いだ。そのため、中心市街地に行くためにはマイカーを利用しなければならないが、マイカーの増加が渋滞・駐車場不足を引き起こし、マイカーで中心市街地に行きにくくなり、中心市街地へ行く人が減るという悪循環を引き起こした。    

そして、訪れる人が少なくなった中心街地はますます活気を失っていったのである。

地方都市にしては、比較的中心市街地が発達したまま残っている熊本市ではあるが、同様の商業施設の郊外化の流れは起こっていた。

しかし、現在、熊本市ではサクラマチクマモト以外にも、中心市街地での複数の再開発事業が同時に起こっており、中心市街地の商業施設の面積が増加し、中心市街地への商業施設回帰の流れが起こって来ている。

熊本市の中心市街地の大型商業施設の売場面積
2018年:93,000㎡ ⇒ 2020年:170,000㎡
とわずか3年で1.8倍に拡大する見込みとなっている。                           ※地方経済研究所調べ

もちろんこの陰には、震災の復興措置の影響ということもあるかと思う。

しかし、それとは別の大きな流れが起こっているのではないか?と感じる。

熊本市中心部では路面電車が運行しているが、ここ数年路面電車の利用者数が右肩上がりに上昇している。

路面電車の混雑ぶりは帰省する度に感じている。週末ともなると、中心市街地へ買い物・遊びに行く・帰るお客様が、路面電車が混雑で乗り切れずに、列をなしている姿を目にする。

「人口減少が続く中で、増加する中心市街地への路面電車利用者数」

ここから見えてくるのは、お客様の”移動”への意識の変化ではないか?

「地方都市はマイカー文化だから公共交通機関は利用しない。利用しないからどんどん公共交通機関が無くなっていく」

これまではこのことが当たり前のように言われてきた。

考えてみると、マイカーというのは、購入費も維持費もかかるし、お酒も飲めないし・・・というように、実は非常に”コスパの悪い”乗り物なのである。

しかし、「公共交通機関が無い」から、しょうがなくマイカーを利用していたのではないか?

現代は、「コスパが最重要視」されている。あらゆる情報がスマホに届き、スマホで買える時代。生活者は自らのかけるコスト(お金・時間・労力etc)に見合う結果を求めている。そのような時代、マイカーの”コスパの悪さ”に気づいたのではないか?

このコスパの時代、”移動”への意識は、 「『今自分がいる場所(自宅)』から『目的地』までいかに効率的に・早く・安く到達できるのか」となっていると考えられる。

これは、まさに今話題のワード「MaaS」そのものではないか。

あらゆる交通手段を一つひとつのサービスとして捉え、そこからコスパの良い交通手段を選び取っていくのである。

サクラマチクマモトには、国内最大級のバスターミナルが存在し、熊本市中心部に入るほぼすべてのバスが発着する。

バスというのは、非常に「コスパが良い」乗り物だと感じている。

なぜなら、バスは「自宅(の近く)から目的地」へと「Door to Door」でダイレクトにつないでくれるからだ。(しかも、タクシー等よりも安い。)

九州産業交通ではサクラマチクマモトオープンに合わせて県内のすべてのバスの利用を無料化してビッグデータの収集を行った。そのデータを活用して、運行時間・運行ルート・バス停の改善等を行い、よりコスパの良い交通手段へと変貌させようとしている。

HISおよび九州産業交通が、地方都市としては異例の数百億円の巨費を投じて行うとしていることは、この先確実に訪れる「MaaS」の時代の主役となるかもしれない「バス」の可能性を追求し、「バス」時代の新しい流通のあり方を探求しようしているのではないか?


今後より柔軟な運行時間・運行ルート・バス停の設定等の運用が可能になれば、自動車よりも、電車よりも、「Door to Door」で結べる「バス」が交通手段の主役となる時代が訪れる可能性がある。

現在の流通の多くは、都心部では電車・郊外ではマイカーでの来店を軸にして、最適化されている。「バス」が交通手段の主役になる時代、流通はこのままの姿ではいられないのではないだろうか?

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