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農業における堆肥の役割

昨日、三富地域農業振興協議会が主催する「農と里山シンポジウム」に行ってきました。
「落ち葉堆肥と土づくり」や「落ち葉堆肥の魅力」というテーマで、大学教授、農家、落ち葉掃きボランティア、それぞれの立場からのお話が聞けました。

良い作物を育てるのに欠かせない土作り、そして、その土作りに欠かせないのが堆肥。
日本では昔から林で落ち葉を集め、それを堆肥として畑に利用してきた歴史があります。
今年7月には、武蔵野地域で江戸時代から行われてきた「落ち葉堆肥農法」が、世界農業遺産に認定されました。


武蔵野の「落ち葉堆肥農法」

武蔵野地域(埼玉県川越、所沢、ふじみ野各市、三芳町)。
江戸の急激な人口増加に伴う食糧不足を背景に、1694年川越藩が、武蔵野地域を開拓し始めました。
火山灰土のため栄養素が少なく、軽い表土は風に飛ばされやすい厳しい条件の土地でした。
土壌を改善するために、見渡す限りの原野に木々を植え、平地に林を作り出し、落ち葉の堆肥利用を始めます。
これが武蔵野の「落ち葉堆肥農法」の始まりです。
この歴史的価値を有する平地林(雑木林)などの土地利用は現在まで受け継がれ、落ち葉堆肥を利用した持続的な農業が続けられています。
お金を出してどこからか買うのではなく、身近にあるものを資源として利用する。
そういった資源を循環させる農業は、私が目指す農業でもあります。
そこで、農業に欠かせない堆肥について少しお話をしたいと思います。

堆肥の種類

大まかにわけて二つに分かれます。

植物性堆肥

落ち葉や樹皮などを微生物の働きで分解・発酵させた堆肥。
肥料成分はあまり含まれないが、土をフカフカにして、保水性や通気性を高めます。
炭素(微生物のエサ)をよく含むので、土壌を改良する性質が強いのが特徴です。

動物性堆肥

主に鶏、豚、牛、馬などの家畜ふんを、微生物の働きで分解・発酵させた堆肥。
土をフカフカにする働きのほかに、野菜の成長に必要な栄養分も多少含み、肥料としての働きも期待できます。

堆肥と微生物

堆肥などの有機物を畑に入れることにより、土壌微生物は活性化します。
それにより、地力窒素の増加、病害の抑制、透水性・保肥力の改善などさまざまな効果を土壌にもたらします。
要するに、堆肥などの有機物は、土壌微生物が活動するためのエサになります。
植物は、有機物をエサにして増殖した微生物の死がいが分解されてできた窒素を吸収します。
こういった目に見えない循環が、土壌の中で日々行われています。

堆肥と肥料

堆肥は土壌環境を良くするために、肥料は植物をよく育てるために、土に混ぜるものです。
私自身、農業の勉強を始めるまで、この二つの違いをしっかり理解していませんでした。

戦後日本において化学肥料の使用が増え続け、それに比例し、堆肥の使用量は年々減りつづけています。
ということは、土壌の有機物が減り続けているとも言えます。
今回のシンポジウムの中でお聞きしたところ、過去50年あまりで、水田に投入されている堆肥量は10分の1まで減っているそうです。

手軽に手に入り、即効性のある化学肥料と自然の力を借りて、時間をかけて作られる堆肥。
効率を求められる現代において、手っ取り早い化学肥料を使用する農家が増えているのでしょう。

有機農業では、病気や害虫に対して農薬を使った防除をしません。
それでは何か対策はできないのかと考えると、その一つは土作りにあると思います。
畑に有機物を投入し、土壌の生態系をしっかりと作り上げる。
時間はかかる方法ですが、持続性があり地球環境に負荷をかけない、未来のことを考えた農業の形ではないでしょうか。

化学肥料は無機物ですので、土壌微生物のエサにならず、土壌を改良する効果は期待できません。
化学肥料だけを使い続けている畑は、土が硬くなり、痩せていきます。
また、施肥し過ぎた化学肥料は、植物が吸収しきれずに、地下水に流れて環境を汚染するという問題も起きています。
堆肥もしっかりと分解、発酵させたものを使わないと、作物が生育障害を起こしたり、臭いによって害虫を引き寄せるというデメリットがあります。

何事にもメリット、デメリットは表裏として存在するので、目的に対して選んでいけばいいのではないでしょうか。










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