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【雑感】仮面ライダーギーツは平成ライダーの敗北なのか?

はじめに

 論理立てられた話ではないのでご注意ください。

久しぶりに仮面ライダーを追う

 ライダー好きと言っても全作品を見ているわけではなく(昭和はBlackだけ視聴、平成は響鬼・エグゼイド未視聴)、Vシネマなんかも殆ど追えていません。私が熱中して見ていたのは主に平成初期の作品群、そう、要は平成一期の亡霊なのです。
 ゼロワンの最終回で一度仮面ライダーから卒業したのですが、未練タラタラで戻ってきて、仮面ライダーギーツを見始めました。本当にライダーって色々変化してるな~と思う次第です。

子供向け作品とは

「仮面ライダーは子供向け作品だから大人が文句を言うものじゃない」
 こういう言葉をネット上でよく見ます。ここに見え隠れしている欺瞞はさておいて、ではその前提とされている「子供向け作品」って何なんでしょう。
 これはそうあるべきだという話ではなく、私の理想なのですが、「子供向け作品」として適切な姿とは、「今の」子供たちが年齢を重ねて見返した時に喜びを覚えられるものなのではないでしょうか。
 子供の頃に熱中していた作品を見返して、ああ、あの時の大人たちは、子供だった自分を舐めたりせず、こんなに真摯に向き合ってくれていたんだと嬉しくなる、そんな経験がないでしょうか。逆に、子供の頃あんなに熱中していたのに、見返したらガッカリ、子供騙しもいいところみたいな作品もあるかと思います。
 成長してメタ的な視点を養った時に自分に向き合ってくれる大人たちがいたと気づける作品は、真に「子供」たちに希望を見出させてくれるのではないでしょうか。少なくとも私は、クウガ・龍騎・555といった平成初期の作品がどれだけ殺伐としていようと、あれらの作品が子供向けとして作られたという事実によってこそ、この世界が信じるに足るものだと思えるし、自分も「子供」たちにそう思ってもらえるような何かをしたいと思えます。

コードを活かそう!

 ネットの感想を見ている限り、ギーツはアクション演出の評判がいいですよね。確かに印象的な場面が多く、アクションの時間も長いので、「今の」子供たちに大いにウケる気がします。自分も、小さい頃はアクションばっかり見ていた記憶がありますし。
 これは、もしかしたら平成初期ライダーの敗北ということなのかもしれません。場合によってはドラマの方に偏重する傾向のあった平成初期。だからこそ特撮の文法や位置する社会を問う作風を維持できたわけで、それが「大人」の視聴者も巻き込めた理由でしょう(個人的には平成初期のアクションが大好きですし、大体にしてドラマとアクションが不可分な場合も多いのですが)。
 対するギーツ、ドラマ自体やそれを展開するキャラクターたちはあるあるな記号で最低限の味付け、代わりにアクションを魅せてくれます。
 どっちが適切だなんて言えません。「今の」子供たちが色々なフィクション(小説映画漫画アニメ全て含め)に慣れながら成長した時に、どちらの側に立つかも、正直分からない。そもそも、今の「大人」たちにとってもギーツのドラマは物足りないものではないのかもしれません。
 例えば、「エモ」という言葉が一般化している昨今、多くの人の間で「エモ」という言葉に係るコードが共有されているはずです。ですから、それと結びつく記号がポンと出てきさえすれば、人々はちゃんと「エモい!」と反応して楽しめる。そういう今の人たちが共有し、かつ好感と結びついている記号、その裏のコードを鋭敏に嗅ぎ取り作品内に記号を配置していくというのは、エンタメを作る人間にとって重要な技術に違いありません。ギーツにはそれがあるのかもしれない。
 対象年齢が仮面ライダーより上で、平成二期後半以降と似た傾向のあるアニメ『リコリス・リコイル』があれだけ流行った事実を鑑みると、やはりギーツは時代の流れに即しているのかもしれませんね。

あるのは願いだけ

 とりとめもないことを書いてきたのですが、言いたいことはただ一つ、仮面ライダーを作る方々、「子供」(それは過去・現在・未来の全てを射程に含めた意味として)達に対して真摯に向き合ってあげてねという願いだけ。それは実は作り手だけでなく、我々受け手も同じだと思うのです。ネット上で放たれた言葉が、他の様々な言葉と結びつき、言説の形を取って権力を持った時、それが「子供」達にとって害あるものになっていないか、それを私は考えていきたい。「仮面ライダー」というタイトルにはそれぐらいの責任・重みがあると思うのです。「子供向けだから文句を言うな」という言葉を発する人も、その言葉について考えてみてもいい。
 雑感とは言え、私はそれなりの覚悟を持ってこの文章を世に放ちます。言葉を発するというのは本来そういうものだということを自分自身に言い聞かせながら。

追記

 そろそろ仮面ライダーからも本格的に卒業かな~と思っていたのですが、ドンブラザーズで初めて戦隊にドはまりしてしまったので、ニチアサ卒業はまだ先のようです。ドンドン!ドンブラーザーズ!

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