【エッセイ】雨の音
僕はイヤホンを耳にはめたまま寝る。
しかし、その夜はイヤホンをはめなかった。
雨が降っていたからだ。
僕は雨の音が好きだ。
正確に言えば、雨が屋根やひさし、アスファルトに落ちてあたる音が好きだ。
どうしてだろう。
雨の音は不揃いだ。
テンポも音階もばらばら。
人は調和のとれた音を好む。
僕は少しギターをやるが、演奏する曲にはスケールがある。
スケールから外れた音を鳴らすと気持ちが悪い。
なのになぜ、雨のばらならな音には惹かれるのだろう。
均整のとれたじゃがいもより、少しいびつなじゃがいもに惹かれるのと同じだろうか。
同じ形で大量生産された陶器より、カタチがばらばらのごつごつした陶器に惹かれるのと同じだろうか。
それとも雨の音は、その全体が雨の音として調和が取れているのだろうか。
いや、そもそも我々が調和を好むような人間になったのであって、本来は調和がとれているというものはないのではないか。
だって自然にそんなものはないから。
そういえば今世の中は無意識にそういう方向に進んでいる。
もっといびつでいいのかもしれない。
そんな事をおもいながら、布団の中で、雨の音に耳をすませている。
ありがとうございます!