「三国志 演義から正史、そして史実へ」

「三国志
 演義から正史、そして史実へ」
渡邉義浩著

泣く子も黙る三国志。
沼の深さは計り知れず、その二次創作は数えもきれない。一般によく知られた三国志演義のみならず、正史とされる三国志自体にも脚色が多く重ねられて実態をわかりにくくしています。
本書は史実が時を経る中でどのような意図を持って脚色、編集されていったかを丁寧に紐解くことで逆に史実を浮き彫りにする仕掛けになっています。
そしてそれを梃子にして後世でそのような解釈を加えていった“事情”を炙り出す離れ業をしてのけています。

なんで孔明はあんなに超人的扱いで、
曹操は悪虐非道で、呉はなんだか印象が薄くて、
蜀はスーパースター揃いなのになんで負けちゃうのか?そもそもなんで三国志は劉備の蜀びいきなのか?なんで関羽は中国で神様扱いなのか?
天下三分の計は何が凄くて何がエグいのか?
その真の立案者とは?
そんなすごい天下三分の計が何故壊れてしまうのか?曹操の時流を得るための文化戦略とは?

僕自身、三国志を読んで、???と不自然だったことが多かったのですが、当時の社会階級の対立や文化的地理的要因を示しながら、西晋で不遇だった旧蜀臣による蜀漢正統論を軸に行われる解説が実に腑に落ちることが多く、非常にスッキリしました。

暴君董卓の意外な美点、曹操が文学に託したもの、劉備と諸葛亮の葛藤ーあなたの知らない三国志がここに。

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