「結婚式のメンバー」

「結婚式のメンバー」
カーソンマッカラーズ
(村上春樹訳)

“この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたいーむせかえるような緑色の夏、12歳の少女フランキーは兄の結婚式で人生が変わることを夢見た。”

魔女の宅急便で知られる角野栄子さんが卒業論文のテーマに選び、もっとも影響を受けた自分の原点と書いていて、すごく気になり手に取りました。訳者の村上春樹氏いわく、
「単なる文芸的なうまさではなく、とんでもないところからとんでもないものが飛んでくるような特別な種類の鮮やかさ。僕にはとてもこんな小説は書けない。」

何がノーマルで、何がノーマルではないのか?

狂おしいまでに多感で孤独な少女の自分自身の生存の意味をかけた、“気の触れた夏”の物語。
何かをすればするほど全てが的外れ、
ムンクの叫びのようなSOSは笑えない冗談に。
自分なしでつつがなく進行する劇のような世界。
茶化され、スカされ、分別のよい大人たちになだめられる。

素晴らしいと思うのは、これが単なる通過儀礼、若気の至りの眩しさ、みたいな過去譚としてではなく、成長してある程度大人になった今も、
カケラとして自分達の中に継続している物語として感じられるところです。
現在進行形の、
物分かりなんてよくない、真剣な物語。

読後は不思議と爽やか。
人知れず傷ついてきた自分と、
実は溢れていた世界の優しさも感じられる一冊です。

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