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【トゥバ共和国への旅】カエルの歌が聞こえてくるよ 

 連れて行かれた別室で、おせじにも愛想がいいとは言えない担当官に、あれやこれや全く分からない言葉でまくしたてられたときの心細さは、あれから随分たつのに、今も鮮明です。よう、まあ、無事に帰ってこられたなあ。ちょっと大げさですが、振り返ればそんな感慨も湧いてきます。今回は、おそらくは日本人がほとんど足を踏み入れたことのない地への15年ほど前の旅行記です。

●●●いったい、どこよ

 トゥバ共和国と聞いて即座に場所が思い浮かぶ人は、相当の地理好きでしょう。ロシアを構成する共和国の一つです。中央アジアに位置し、人口は30万人余り。国土面積は日本の半分ほど。モンゴルのちょい上にありますから、風景もそんなもんです、といえばイメージしやすいでしょうか。大平原のね。

 人知れず、というのは世界のどこにでもあるもので、といっても人知れず感は、ワタクシにとっては空前絶後でしたが、首都クズルにはこんなオブジェがあります。「アジア中心の碑」。おお、なんと、ここであったか、とまずは驚いたわけです。比較の基準は違いますが、アジアの中心は日本だ、と信じて疑わなかったからね。その日本も得意の経済が失速し、いまや極東の一島国になり果てようとしていますが。そりゃ、よけいなこと。

●●●夢見て7年

 ともかく、なんでトゥバへ行ったのよ、ということです。以前にもお話ししましたが、2000年8月、トゥバの音楽グループが、わが寺でコンサートを開いてくれたんです。ホーメイという喉歌にひかれてねえ。恋い焦がれるようにトゥバ、トゥバと思いを募らせておったのです。

 それがかなったのが7年後。だいたいこの国、招待がないといけなかったからね。ほな、あした、といった気軽な感じは通じませんねん。

 で、と力を入れときます。そのころ「カエル本舗」と称する音楽ユニットを組んでましてね、相棒の柴田重信さんと、悠然、トゥバの地を踏んだのではありますが、ユニットのトレードマークにしていたカエルの帽子がどうやら不評で、行く先々の公的機関で取り調べを受けたわけです。ロシアに入ったらすぐですわ。冒頭は空港のシーンですね。

●●●お座りくださいませ

 日本からウラジオストク、そんでシベリアのイルクーツクからクズルまでは飛行機です。1週間に1便しかありません。需要はありそうなんですよ。だからでしょうか、機内には座席以上に乗客がいました。どないするんやろ、と思ってたら、あれまあ、そのまま離陸ですわ。「立ち乗りOK」なんです。妊婦や高齢者がいれば、どうぞ、と譲らないと、白い目で見られたりしてね。ただでさえプロペラ機で頼りないのに、明らかに人数オーバーの人々を乗せて、どないなんのやろ、と不安になりました。所変われば品変わるとはいいますが、世界にはいろんな常識があるもんです。ちなみにつり革はございません。


アジア中心の碑

 といった仰天話を中心に、これから数回は、アジアのへそ、トゥバのお話です。

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