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初読み

「初読み」

年が明けて最初の土曜日のこと。何の気なしにテレビをつけたとき、この言葉に出会いました。
俳句において、新年に初めて読書することが「読み初め」という季語になっていますから、それと同じような意味で使われるようです。

もともと私の周りには本に親しむ人がたくさんいました。両親、祖父母、友達…。その影響はとても大きく、三度の飯より読書好きな子供でした。(と言っておきながら三度の飯も割と好きだった)
中学生になり部活に打ち込むようになると、その習慣が嘘のようにめっきりなくなり、高校に入学してからはだいぶ時間ができたけれど、2ヶ月に一冊読み切るかどうか。という具合。

けれども本は好きなので「いつか読みたいものがどんどん手元に溜まっていく」という未読の最終形態「積読」を繰り返してばかりいました。

初売り、初夢、初正月…
「初」がつく言葉はこの時期にとても良く似合っていて、聞くだけでも気持ちが華やぐものばかりでもちろん「初読み」も例外でなく、

じゃあ何か本を読もうか!

と思い立った次第です。


「キッチン」
年の瀬に買った、吉本ばななさんの短編集です。
いつかゆっくり読もうと思っていたこの一冊。

友達が読んでいて面白そうだったし、何年か前に映画化していたしという理由で「ムーンライトシャドウ」という題名の本を、複数の本屋にて探したけれど一向に見つからない。

あれ、、何でないんだ??

もしやと思い吉本さんのコーナーにあった本を一冊ずつめくって見てみると、短編集に収録されている短い物語だということが分かり、なーんだそういうことか!と納得したのも良い思い出です。
この本に出会いたいがために書店3軒くらい回りました。あの日の移動距離はすごかった。


とても綺麗な日本語と、まるで目の前で物語が繰り広げられているかのような繊細な描写。初版が1988年と聞くと10代の私としては、ちょっと古い本だなあという気がして距離を置きそうになるけれど、全くそんなことはありませんでした。

生きることと、死ぬこと。
たとえ失ったものがあったとしても、かけがえのない思い出は残り続ける。物語の中の人たちがその一つひとつを大切にしているように感じて、切なくも温かい気持ちになりました。もう会えない大切な人に「会えたらな」って。


友達が読んでいて面白そうだと思った自分、読むきっかけになったテレビの言葉、そういえば読書ってこんなに面白かったんだっけ。
とてもいい出会いをしたと思います。

来年度は私も進路を今以上に考えないといけなくて、本どころじゃない毎日が来るかもしれないけれども、この思い出をちゃんと残しておきたくて書きました。


年始から心が痛む出来事が続き、表現が正しいか分かりませんがもどかしさを感じています。
学生の私にできることは限られているけれど、
この一年が穏やかであったかくて、ご縁を大切にできる毎日になりますように。



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