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あの道を選んでいたら・・・

#あの選択をしたから #エッセイ #ホラー #肝試し

 これは子供の頃の話で、最初に言おう・・・フィクションではない。
本当にそう思うくらいの出来事を10歳で経験してしまったのだ。

 小学4年生の時の宿泊体験学習の時の話。
その日の夕方から夜に山の中で肝試しすることになった。
1人、2人組、3人組、4人組で行く人とグループごとにわかれていて、私はひとりで行こうとした。
ところが、そんな私のもとに藁にでも縋るように駆け寄って来たクラスメイトの女子I子ちゃんが来た。

 私「どうした?」
I子「ごめんね!お願いがあるの!一緒に肝試し行ってくれない?!」
私「S美ちゃんとK子ちゃんと一緒じゃないのか?」
I子「誰も私をグループに入れてくれないの!」
 当時、I子ちゃんは性格にちょっと難があり、女子グループではよく揉めたりした子のひとりであった。
 ちなみに私は一匹狼だったため、まったく実害はなかった。
私「他の子もいないのか・・・そうか困ったな・・・私はひとりで行くつもりだったんだが」
I子「お願い、私目が悪くて特に夜は見えないの・・・!」
 私はそういえばI子ちゃんは授業中の時にしか眼鏡をかけていなかったと思い出した上に、何故だか一人で行かないほうがいい気がした。
案の定、ライトをもらって肝試しに参加しても恐怖の前では関係なく、山の中から絶叫が途絶えることはなかった。
その声が聞こえるたびにI子ちゃんはびくついていた。
私「わかった、いくか一緒に」
ということで2人で行くことになり、自分たちが出発するまでの時はあっという間だった。

 山に入ってから私はスタスタと歩くためI子ちゃんは「ペース落として!早い!」と言って腕にしがみついてきていた。
私は夜目がきくため暗くなったとしても何となく見えていて一度もこけたり転んだりすることもなかった。
 1カ所目は木がトンネルのようになっていて、まるで口を開いているかのように不気味さがあったのは忘れもしない。
私は「いくか」と一歩踏み出した途端A先生が「ワッ」と驚かしてきて、I子ちゃんは「キャアアァ!!!」と叫んでいた。
叫ぶ余裕が無かった私は先生に「お疲れ様です」と顔色変えることなく次へ進んだ。
横だけでなく上からも驚かしてきたB先生がいて、その度にI子ちゃんは私の隣で叫びっぱなしだった。
さすがに耳か痛くなるかと思いつつ、C先生とD先生も驚かしてきたのは覚えている。
おかしなことが起きたのはその後だ、遠目から立ち姿ですぐにE先生が見張りか誘導のために立っているんだなと思った。
私はE先生という男性の先生が物凄く嫌いで口も聞きたくないほどだった。
『はい、左の道へ行くように』
私は返事をしなかったがI子ちゃんは「はい」と返事していた。
その後、何故か立ち止まっている子たちが多く、すたすたと進むと「みんなで行けば恐くない精神」なのかついてきて行列になった。
 しばらくすると道が二つにわかれていて、右は真っ直ぐで左はまるで螺旋階段か?というような坂だった。
どちらに行くべきかと考えていたときI子ちゃんは「左だったよね?」と聞いて来た。
だが、私は何故だかわからないけど、左へ行ってはいけない気がした。
どう見てもやな予感しかせずI子ちゃんに「やはり右へ行こう」と提案した。
I子ちゃん「やだ!E先生は左へ行けって言ったじゃん!右の方が暗いし恐いよ!」と恐怖に支配されているのかだだこねていた。
私「I子ちゃん、確かに暗いかもしれないけど私は右の方が安全だと思っている、だから1度でいいから信じて?お願い、はっきりしたことは言えないけど左はやばい気がする、ここまで言ってもダメならひとりで左へ行って」
I子ちゃん「・・・わかった・・・でもなんかあったらやだからね!?」
 何とか説得してから私とI子ちゃんと他数名はちらほらついて来たが残りは左へ行ってしまった。
 真っ直ぐの道へいくと見覚えのある場所に出てヤシの木っぽい植物が見えてきてそこから「カサカサカサ!」と音がするとそれだけでも恐れおののいた声が上がったが、私はなんかあんま恐くなさそうと思いじっと見てた。
 出て来たのはウサギの耳をつけてぴょんとでてきたのはK子先生だった。
K子先生「あ・・・あれ?」
私「K子先生・・・それは恐いじゃなくて可愛いってなってますよ?」
 拍子抜けしたのか、恐いから解放されたのか他の子たちは「K子先生可愛い!」とわらわらしていて、さっきまでのは何だったのかと思っていた。
私「K子先生、ここでゴールですか?道が見えないんですけど」
K子先生「あ!大丈夫よ!そこに階段あるでしょ?降りたら真っ直ぐ行ったら宿泊施設に戻れるよ?一本道だから迷うことないよ?転ばないように気をつけてね?」
 私達は無事に帰ることができた。

 その後だ、おかしなことに気が付いて背筋がゾッとしたのは。
立ちながらI子ちゃんと話していると左の道へ行った子たちが帰ってきて目汁鼻汁泣きべそかいて戻ってきたのだ。
私「どうした?なにがあった?」
A君「E先生がおどかしてきたやつがめちゃくちゃ恐かった・・・」
B男「僕おもらししちゃった・・・」
何が恐怖だったか左へ行った子たちはいっこうに話してはくれなかったが、おかしなことに気が付いた。
私「A君、B男、今、左の道へ行ったら驚かしてきたのはE先生と言ったよね?」
A君とB男「そうだよ!」
 私はI子ちゃんに向き直り「E先生いたよね?左の道へ行くようにって言ったよね?」と確かめた。
I子ちゃん「うんそうだよ!」
私「おかしい、私達が返事してから自分が驚かす地点へ戻れるかな?私たちが歩いて来た道は一本道で木と背の高い植物だらけで最短で戻ることできたのかな?もし仮に私たちと同じ道通れば気づいたよね」
戻ってきたK子先生に「途中のこの辺の道に誘導する先生は決まってたんですか?」と聞くとK子先生は「え?そこは誰もいないし誘導の先生は決まってなかったはずだよ?」と答えてくれた。
I子ちゃん「でも、E先生がいたよ?」
私は咄嗟にI子ちゃんの口を塞いでその場から離れた。
I子ちゃん「何するの?!」
私「ねぇ、左の道へ行くように言ったのE先生だったのかな?私あの先生嫌いだから顔見なかったんだよ、I子ちゃんは見えてた?」
I子ちゃん「・・・見えてないけどE先生の気がした」
私「あれは本当に誰だったんだろうね?」
私も含めてI子ちゃんの顔は暗く真っ青になって森の方を見ていた。
背中に皮膚と筋肉の間に氷を入れられたような気分だった。

 そこからは、直感だけど自分なりに道を選んで良かったと思っている。
勘は当たる時もあれば外れることもあるから全部が全部とは言えないけど、助けを求めて来た相手を見捨てることはできたのに見捨てなくて良かったし、見捨てなかったから、人が居たから説得することもできたし何かから回避できたんだと思っている。
 東日本大震災の時も、今動くべきか動かないべきかという選択も考えた末にしたし、今となっては下手に危ない目にあわなくてよかったと思っている。
 ただ、その選択のおかげて一つ教訓になったのは、何でもちゃんと見るようにと心がけるようになった。
 人にしろ書類にしろ、情報にしろ、買い物するときの品物にしろ日常的にちゃんと見るというようにした。
おかげでできることが小さいながらも段々増えていった。
 情報収集もデマかどうかも落ち着いて判断することもできたし、騙されることもあまりなかった。
 でも時々この夏になると思い出す・・・・あの時、私ひとりで行って、あの道を選んでいたら・・・どうなっていたんだろう・・・と未だに思う。

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